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第23話 【閑話】貧乳聖女の伝説③ 完結編
しおりを挟む勇者 ラルガ 剣聖 エリッタ 賢者 カトニア そして私事、聖女のレイスを加えた4人が勇者パーティ『銀翼の翼』だわ。
勇者ラルガは黒髪に黒目、良く転移者に見られるタイプね。
でも、転移者じゃなくて『おじい様が転移者』というだけだわ。
顔は彫りが深くて凄く二枚目。
背は高くてスラっとしていて、私と同い年だと言うのに年上に見えて羨ましいわね。
剣聖のエリッタは赤髪をポニーテールにしている。背が高く、胸もお尻も大きくボーイッシュな感じの美少女だわ。
そして賢者カトニアは大人の女性で…まぁ解るわよね…凄くスタイルが良いわ。
聖女になり実家から離れられたのは不幸中の幸い。
周りが大人っぽいのは嫌だけど、これは仕方ないわね。
そう思っていたのよ?
だけどね…
「レイスはまるで小学生みたいで可愛いな」
「小学生ってなにかしら?」
「あはははっ小学生は、お爺ちゃん曰く可愛い子の事だよ」
「そう、誉め言葉なら良いわ」
「レイスは妹みたいで可愛いわ」
「そう?背が小さいからかしら?」
「ええっ!凄いわ、まるでレモンちゃんみたい…」
「レモンちゃんって何かしら?」
「スレンダーで可愛い女の子の事なのよ?レイスはスレンダーで羨ましいわ…可愛いし」
だけど、顔は笑顔で話しているけどね…
遠まわしに私の悪口を言っているのは解るわ。
当人達は気がついてないみたいだけど…散々実家でマウント取られ続けた私には人の悪意は解るのよ…馬鹿みたい!
とはいえ『勇者パーティ』というのは厄介よね。
だってこれから、魔王を討伐するまでの長い年月を一緒に過ごさなければならないのよ。
だから、これは波風立てずに過ごすしかないわね。
そう納得はしたわ。
納得はしたのよ…
一緒に旅をして魔物や魔族を退治する生活。
それは、それで楽しいわ。
『自由な時間が沢山あるもの』
そう、私は彼等3人と一緒に過ごしてないわ。
私は、聖女。
魔王を討伐の後は基本三職(聖女 剣聖 賢者)が異性の場合は勇者と婚姻を結ぶという暗黙の了解がある。
だから、本当なら4人で仲良くしなくちゃいけないのに、私は弾かれていたわ。
◆◆◆
「ねぇ、レイスと、そのしなくて良いの?」
「レイスは面は良いし可愛いんだけどな、あの貧相な胸じゃ駄目だ、抱く気になれねーよ、いちど触ったら、まるで男みたいに固いんだぜ!」
「だけど、私達は将来結婚しなくちゃならないんでしょう?」
「まぁ、結婚だけして放置で良いんじゃないか?」
「そうね、確かに可愛い顔しているけど、あの胸は…可哀そうよね」
「ああっ、凄く残念だ、あんなに顔は良いのに貧乳どころか大草原、あの胸を触った時に、此奴本当は男なんじゃないか? そう思った位だよ」
「「あはははっ、無いわよね!あの胸(わ)」」
聞いているわよ!
勇者パーティだから最後の一線は超えられないけど…二人とはそれなりにラルガが逢瀬を重ねているのは知っているわ。
だけど…私には一切ない。
将来は結婚しなければならない相手。
それなのに…私に一切そういった感情を持ってないのよ。
『胸が小さいから』『背が小さいから』
それだけでこれ…なの。
しかも、あの馬鹿勇者、他にもメイドやらなにやら手を出していて、全員が巨乳、ふざけるにも程があるわ。
此処迄は我慢したわ。
本当に腹が立つけど…我慢したのよ!
だけど…あの馬鹿三人が陰口で人の事を『貧乳』『ない乳』『大草原』『胸たいら』なんて呼ぶから。
「貧乳聖女様だ…」
「や~い貧乳――っ」
誰もが私を『貧乳』と呼ぶようになったわ。
聖女なのに、人を助けてあげてもそればかり…
『貧乳聖女のレイス』
そう言われるようになったわ。
「おばあちゃん、これで大丈夫よ!」
「貧乳聖女様、ありがとう…あっ」
「良いのよ」
腹が立つわ。
助けてあげても『貧乳』『大草原』そんな事ばかり。
それに悪意が無い人も居るから、余計に腹が立つのよ。
笑いながら
「聖女様の胸は見事な大平原ですね?でも綺麗だから大丈夫ですよ?」
「そうですよ! 女は顔です、胸だけじゃありません」
「聖女様が貧乳で結婚できなかったら僕が貰ってあげる」
慰めにもならないわ、本当に腹が立つわね。
いっそうの事、魔王側にでも寝返ってやろうかしら…
◆◆◆
長い旅の末に魔王を討伐、そして王都に戻ってきたわ。
勇者パーティは魔王を倒して凱旋した場合、それぞれ2つ『どんな願いでも叶えて貰える』そういう約束があるのよ。
大昔に年増好みの勇者が居て『王妃との婚姻』を望んでも叶えて貰えた位だから、基本、どんな願いでも大丈夫だわね。
勇者であるラルガはこの世界で1番美しいと言われる第二王女との婚姻と湖畔の綺麗な城を望み、剣聖エリッタは、ようを果たした聖剣と意外な事に勇者との婚姻の解除を願った。
そして賢者のカトリアは 勇者の正妻の座とこの世界の全ての本の閲覧許可を願った。
考えたわね、この約束は全てに優先されるわ。
これで正妻はカトリアの物、王女でも側室にしかなれない。
ラルガの苦虫を潰した様な顔…案外あの三人も何かあったのかもね。
「それでは最後は聖女のレイス様ですが、願いを」
「はい、私は勇者ラルガとの婚約解除と『貧乳至上主義』の徹底化を望むます!」
「「「「はい?」」」」
教皇様から各国の王迄が驚いた顔になった。
暫く時間が経ち…
「ひひひ『貧乳至上主義』とは何でしょうか?」
多分意味は解っているけど、現実的じゃないと思っているわね。
だけど、これが私の希望なのよ!
「貧乳至上主義とはですね…」
貧乳至上主義とは、女性の価値は『胸が小さい女性程美しい』と世の中の常識を変える事。特に巨乳は醜い女性の代表として扱う世界の実現、そして世の中の人間の全てが胸が小さくなるように努力する社会をつくる事だ。
ずうっと考えていたわ。
他の人なら『大した事ない』そう言うかも知れない。
『くだらない』そう言う人が多いのも解るのよ…でも、私には切実だわ。
人生の殆どを『貧乳』と馬鹿にされ生きてきた。
その為に家族からも仲間からも、そして頑張っても悲しい事ばかりだった。
だからこその願いだわ。
「レイス様、幾らなんでもその願いは」
『駄目よ! 彼女はもう役目を果たしたの…その報酬が『貧乳至上主義』なら必ず叶えなさい』
女神像から声が聞こえてきたわ。
これが『神託』であるのは聖女である私には解ります。
「女神イシュタス様、ですがこんな常識を変えるなんて、どうして良いか解りません」
『それを考えるのは貴方達です…私も小さい方ですから『女神の容姿に近い姿』それを利用するのも良いでしょう! 私の方からは『貧乳魔法』という胸が大きくならない魔法と『貧乳薬』のレシピを与えましょう…良いですか?それではコホンっこの世界から巨乳をいつか根絶させるように…では』
もしかしてイシュタス様も同じような経験があったのかしら。
「女神イシュタス様から神託がおりました。『貧乳至上主義』その実現に教会も各国も尽力をする事」
多分、これは無理かも知れない。
そう思っていましたが…叶ってしまったわ。
私の生きている時には無理でしょうが、これでいつか『巨乳』が居ない世界が待っているわ。
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