39 / 85
第39話 修羅場⑪ 勇者は吐いた
しおりを挟む「ちょっ!待てよ!おい! リヒトお前俺を見捨てるのかよ!」
もっと急げば良かった。
宿から出る前にガイアに捕まった。
「リヒト、無視して行こうよ」
そうは言うが、後々尾を引くと困る。
それに嫌な面も多いが、俺は此奴の『友達』まで辞める気は無い。
「仕方がないな、話し合いをしようか? ただ俺はもう戻らない、それは変わらないぞ」
「解った…取り敢えずそれで良い…」
「全く、リヒトはお人よしなんだから! まぁそこがリヒトの良い所なんだから仕方ないんだけど…」
エルザが俺をジト目で見てくるが…これで最後と思い付き合う事にした。
◆◆◆
「それで?」
「どういった条件なら居残って貰えるか! その相談だ…」
「まず、俺はガイアに追放された側だ…まぁ言われたことは事実だから根には持たないが…もう俺は戻らない」
「そうか、なら仕方が無い、エルザは置いていけ! そいつは『剣聖』戦力だ、魔王討伐に参加しないならやらない!」
「ガイア、そんな性格だから二人に振られちゃうんだよ? 僕と違い、あそこ迄、ガイアを好きな二人に逃げられるなんて馬鹿だよねー-っ、僕も戻る気ないよ…だけどね、本当の所は僕はパーティに戻さない方が良いと思うよ」
「エルザ、お前何を言っているんだ? お前は貴重な戦力だ『手放す』わけないだろうが!」
「そう…これでも同じ事を言えるかな?」
そう言うとエルザは上着を脱いで、サラシに手を掛けた。
「なんだ、色仕掛けでもしようと…なっなんだ、それは! おえっ、うぷっ…ハァハァ」
胸を曝け出したエルザは胸を露わにしてポーズをとっている。
「どう? なかなかの化け乳でしょう?」
そう言いながらエルザはガイアに悪い笑顔で近づいていった。
『ぴとっ』
胸をガイアに押し付けた瞬間…
「うぷっうぐっ、おええええええー―――っ、うがげぇぇぇぇえl――っ、やめよぉ、やめょょ…気持ち悪い、うぷっうぇうぇぇぇぇぇぇー-」
盛大にガイアはゲロを吐いた。
四つん這いで蹲って吐き続けているが、まだ止まらないようだ。
俺からしたら実に羨ましく、嫉妬してしまう光景だが『ガイアには地獄』のようだ。
もしかしたら、口裂け女にキスされる位の気持ち悪さがあるのかも知れない。
エルザはサラシは巻かずに上着を羽織った。
「これで解ったかな? 僕は化け乳なのさ! 女神が嫌う『醜い化け乳女』が勇者パーティで剣聖なんて問題があるんじゃないかな? その前に気持ち悪くて一緒に居たくなんてないだろう?」
しかし、これで剣聖が『聖なる存在』と違うのが立証された様な気がするな。
貧乳聖女からはじまり、貧乳が好きな女神の加護があるなら『巨乳病』になんてかからない筈だ。
仮にも女神の使いなのだからな。
エルザから考えると女神に本当に愛されているのは三職で剣聖は外れるのかも知れないな。
「エルザ…なんだよ…その胸…気持ち悪い、まさか化け乳だとはな…ゴブリンの方がまだましだ…見ているだけでうぷっ、吐き気がする」
「そうだろう? これで僕も追放で良いよね」
「ああっ…リヒト、その化け物女を連れていけ…絶対らぁ」
噛んだな。
「ああっ、元からそのつもりだ、もう俺達が会うことは無い…最後に選別代わりに教えてやる! 普段の家事を丸投げしたいなら宿屋に泊まらず教会に泊まれよ! 勇者なんだから教会のシスターや司祭が歓迎してくれて全てやってくれるぜ…更に書類もそこで代筆を頼めば良い」
「そうなのか…?」
だが食卓は貧しく肉が出ないで、遅くまで『お祈り』に付き合わされるのは、態々、教えてやる必要は無いな。
凄く窮屈だけど…面倒は全部みてくれる。
教会は『勇者大好き』『聖女大好き』だからな。
「ああっ、あと狩りや冒険中はポーターが欲しいと教会に相談すれば多分派遣してくれるぞ」
『勇者とは』とか、かなり生活に干渉しそうな存在が派遣されそうだが…そこ迄は知らないな。
「そうか…」
驚いた顔をしているな。
「魔族領に入ったら流石について来れないだろうが、それは俺も同じだ…これで解決だな! マリアンとリラはまぁ頑張って説得してくれ、これで終わりでよいだろう?」
ガイアの口元が少し吊り上がった。
これはガイアの悪い笑顔だ。
親友の横で何度も見た『クズ』の悪い笑顔だ。
「そうか、それならもうリヒトは要らないな、その化け者つれて消えてくれ!」
これでも、俺を『親友』だと思っているし、エルザを『幼馴染』だとは思っているんだぜ…『これで少しは優しい状態』なんだ…
凄いクズだよな。
まぁ良いけど。
「それじゃ俺はエルザを連れて出て行くわ…またな親友」
「ガイア、最低、いー-だっ」
これでもう大丈夫だな。
◆◆◆
「うわぁぁぁー-ん、僕、僕、化け物だってさぁ…あはははっ、そうだね、この胸だもん…ひぐっ」
多分、さっきのは無理していたんだな。
暫く歩いていると泣き出した。
仕方ないな…本当は仕方なくないけど…
俺はエルザと肩を組むと手を上着の下にもぐり込ませ、優しく揉んだ。
「リヒト…?」
「俺は好きだよ、エルザの胸」
「ありがとう…」
これが気持ち悪いなんてとんでもないよな。
今の状態を見たら、前の世界ならきっと『リア充死ね』と何人から言われるか解らないぞ。
俺はエルザの胸を周りから解らないように揉みながら自分の宿へと向かった。
39
あなたにおすすめの小説
勇者の隣に住んでいただけの村人の話。
カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。
だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。
その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。
だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…?
才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる