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第14話 水商売ゴッコ

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「たったこれだけの間に『ご学友』が二人…流石はAランクな事ありますね…ですが本当に気を付けてくださいね」

「何か不味いですか?」

「社会という意味なら素晴らしいですよ…沢山の女性と恋愛して子作り…それは男性の鏡です…ですが、そんな男性は世の中に居ないんです!」

「恋人や結婚ならまだしも、只の『ご学友』友達になっただけ…大げさだよ」

「本当に価値が解ってないんですね…公立の普通の小学校だと1クラス40人の中に男子は1人しかいません…それで5クラスあったとして200人に5人、しかもその5人は引き篭もりの可能性が高い」

「まさか…誰も登校すらしないんですか?」

「公立は籍だけ置いてくれれば良い…そう思っているからその通りです…私立はお小遣いとして登校してくれば1日50万円払ったりしています…それでも毎日は登校しない…これがどういう事か解りますか?」

なんだ、それ…

「つまり、頭が良くて頑張っている女の子で、男性に会えたらその日はラッキー…ブサイクな男にでも話せたら超幸せ…それがこの世界の常識ですよ…」

「それ琴美さんも該当しているの?」

「私は…研究員でしたから、少しは余裕が…あっ」

僕は琴美の髪に手を触れてみた。

「琴美の髪って凄く綺麗だ…いつも輝いていて宝石みたいだよ」

「なっなっなぁぁぁぁぁー-」

「瞳はまるで綺麗な湖みたいで見ているだけで吸い込まれそうだ」

「あのあのあの…正平さん…私どうすればいいんですか? 何か」

「これでどうかな? 琴美さんは今日1日幸せでいられるの?」

「あはははっ冗談ですよね…私は耐性があるから大丈夫ですが…そのセリフ言われたら、大抵の事はしてくれますよ」

「そういう冗談は止めよう…本気にするから」

「冗談じゃないんです…本当に気をつけて下さいね」

◆◆◆

確かに男女比が偏った世界だから男性が優位なのは解る。

だけど、見かけたり、話すだけで、そこ迄幸せを感じるのは少し可笑しい気がする。

本当なのか今一実感が沸かない。

警護してくれている二人だって僕が容姿で選んでいるから『凄い美少女』だ。

こんな綺麗な少女がモテない…本当か?

考え事をしていると千鶴と目が合った。

恥ずかしそうに目を逸らした。

千鶴は、僕が住んでいた世界なら剣道少女に見える。

多分だが、あの世界に居たら『美しすぎる剣道少女』とか言われそうだ。

「千鶴さん…少し良い…」

「はい何でしょう? 私になんて気を使わないで良いんです…態々聞かなくても『おい』とか『すぐ来い』で充分です」

僕の知っている『オラオラ系のホスト』じゃないんだから。

前世も含んで僕には言えないな。

「この施設にはお酒も飲めるラウンジがあるらしいから行ってみない? 最も僕も千鶴さんもまだお酒は飲めないから、ジュースを飲むだけだけど? どうかな?」

あれ、駄目なのか…ほらやっぱり…

「うれしい…」

「えっ…」

「うれしい…私、男性から誘われた事なんて生まれてから一度も無い…一緒に飲み物を飲んでくれるなんて夢みたい…良いんですよね?本当に私で良いんですよね?」

「勿論」

あれ…なんで柱からエルミナがこっちを見ているんだ。

しかも泣きそうな目で…

「エルミナさん…どうかしたの?」

「羨ましい…ですわ…正平様はそんなにも千鶴が好きなのですね…」

うわ…歯を食いしばりながら唇を噛んでいるから、血が出ているよ。

琴美さんの言っている事は本当なんだな…今度からしっかり話を聞こう。

「それじゃエルミナさんも行こうか? お互いお酒は飲めないけど、雰囲気だけでも味わおう」

「嬉しいですわ…私殿方と一緒に飲食をともにするなんて初めてですわ…こんな日が、こんな日がくるんて…幸せですわー――っ」

たかが一緒にジュースを飲むだけでこれ?

小学生の僕でも…すぐにホストに成れそうだ。


「それじゃ…はい…」

「これは…?」

「これは何を意味しますの?」

「折角だから、腕組んでいこう…その方が楽しそうでしょう」

「あぁぁぁぁっ良いの? 本当に良いの?」

「宜しんですの? あの私お金払いましょうか?」

「別に良いよ…この位」

僕は前の世界でホストになったのは女性にモテたいからだ。

その頂点がホストそう思ったから…
可愛い子に何もしないでモテるなら…お金も要らないな。

こんな事言ったら水木オーナーに説教されそうだが…

まだ躊躇している。

「それじゃ行こうか」

「ああっあそんな、これ」

「こんなの私小説でしかしりませんわ」

二人の手を強引にとり、廊下へと出た。

◆◆◆

騒ぐ、騒ぐ…前の世界なら同伴出勤、しかも両手に花、これぞホストの花道。

最も、腕を組んでいたけど、僕が子供で背が低いから、見栄えが悪い、だから手繋ぎに変えた。

最もただ手を繋ぐだけじゃない…恋人繋ぎだ。

「嘘…同じ男でもランクが違うとこうも、違うの?」

「私なんか、口も真面に聞いて貰えないのに…」

「Cランクって…手まで繋いでくれるんだ…Fランクとは大違い」

「変わって欲しい…変わってくれるなら全財産差し出す」

「あの環境がたかが数千万で手に入るわけないわ…金よ、金」

「なら幾らなのかな?10億円?」


騒いでいるのが聞こえてくるけど…凄く勿体ないな。

二人には見劣るけど…全員がそこそこ美人だ。

誘っても良いけど、他の男性に付いている女性に声を掛けるのはマナー違反だしトラブルの元と琴美さんが言っていた。

『絶対に守って下さいね』そう言っていたから…諦めよう。

「此処がラウンジか…なかなか良い雰囲気だ…」

ああっ懐かしいな…こういう場所は変わらない。

水商売の雰囲気…棚に並んだお酒。

最高だ…

「いらっしゃいませ…身分証明書を…あらやだ未成年」

「雰囲気だけでも味わいたくて、いけませんか?」

「そうね…アルコールは駄目だけど…他のメニューなら良いわ」

「ありがとう」

「….」

「どうかしました?」

「C級って凄いのね、女性と話せてお礼まで言えるなんて…」

「正平様は限りなくBに近いC+なんですわ」

「C+ですって、Cですら凄いのにその上位者…流石ですね」

ボックスシートに案内されて三人で座った。

コーラを飲みながら、ナッツとキスチョコを食べているけど…なんか違うな。

二人とも目が合うと嬉しそうだが…盛り上がらない。

流石にコーラじゃな…少しだけ雰囲気変えるかな…

「お姉さん、ちょっとお願いして良い?」

「はい、何でもおっしゃって下さい」

僕は、コーラとジュースのペットボトルと氷とレモンの輪切りとグラスを貰った。

「千鶴さん…グラスが空いているよ…」

「うん、喉が渇いてつい飲んじゃった」

「そう、それじゃお代わりつくるね」

僕は新しいグラスに氷をいれレモンを入れた。

「千鶴さん、ジュースとコーラどっちが良い?」

「…ジュース…」

僕はジュースを注ぎ軽くマドラーでかき混ぜて、素早くコースターの上に差し出しだ。

「どうぞ…」

完全に錆錆だ。

体が子供になったせいか…気の利いたセリフや歯の浮くセリフも出ない。

所作も駄目だ…見習いホストにすら及ばないな。

「あれ…飲まないの?」

千鶴は顔を真っ赤にしてジュースを見つめている。

「男の子が…正平様の手作りのジュースなんて飲めません…持ち帰って凍らせて宝物にします」

駄目だな…

これじゃ、面白くないな…

「千鶴ちゃんの良い所…カッコ良い所見てみたい…それいっき、いっき、いっき」

「正平様? 私はどうすれば…」

「それを僕のリズムに合わせていっき飲みして…そうしたら次をすぐ作るから」

ドンッ

「飲みましたわ」

僕はさっきと同じように素早く飲み物をつくりに掛かる。

「エルミナちゃんはジュースとコーラどっちが良いですか?」

「こコーラでお願い致しますわ」

「了解…はいどうぞ…それじゃ…エルミナちゃんの良い所、カッコ良い所みてみたい…それいっき、いっき、いっき…どうもでした~」

「正平様…次をお願いしますわ…今度はジュースで…」

「待って、今度は私の番です」

「そうだね…それじゃエルミナさんも僕の真似をしてくれる?」

「解りましたわ」

ちょっと違う気もするが…楽しんで飲んでいるから良いか。

しかし僕はダメダメだな…昔学んだ事が何も出来ない。

体が子供だからか…精神まで子供になった気がする。

◆◆◆

「ゲプッ…正平様…聞かないで欲しいですわ」

「ゲプッゲプッ お願いします」

「気にしないで良いよ…炭酸をあんなに飲んだらそうなるって」

二人して1.5リットルのペットボトル5本も空ければそうなるよ。






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