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到着
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翌日になり皆で食堂でゆったりと食事をしてから再び馬車に乗り走っていく。
王都に近づけば近づくほど自然は減っていきフィルニース国境からも離れていく。道も広くなって走りやすくなる。
長い道のりだが少しだけ余裕が出来た分、会話を楽しむことになった。専ら内容はアレンシカの置かれる状況や秘匿事項に反しない程度のソーンの商団のことだった。
少しずつ走ってまた休憩をして王都へ向かう。建物は少しづつ増えてきて王都らしくなっていく。
「その、僕を迎えることを立候補した方はお知り合いですか?」
「私の商会でも一番の顧客ではありますが……何よりアレンシカ様を迎えることを何よりも楽しみに自ら名乗り出た方です。」
「何故縁もゆかりもない僕を……。」
「直接聞いたほうがいいと思いますよ。アレンシカ様とお会いしたいと話していましたので。」
公爵家である以上隣国の者と会った経験もそれなりにはあるが、それでもほとんどは父や王国の関係で会ったくらいで、隣国に友人と呼べる立場もいない。父の関係者としてもアレンシカを迎えるほどの決意をする程の仲の人物がいるとは思えなかった。ライトン伯爵は領主として仕事上の付き合いの延長もあり快く迎えてくれていたが、それも自国だからの話だ。
「見当はつきませんが……こんな僕を迎えてくれるのですから良い人だと思います。会うのが楽しみです。」
知らない人に会う不安はあるが、それでも楽しみもある。どんな人なのか想像しながら馬車は長い日時の王都へ向かった。
何日もかけてとうとう王都へと入った。
隣国であるのでフィルニースと雰囲気は似つつもやはり別の国であり、街並みは違う。何より違うのは屋根だろう。様々な色の屋根があるフィルニースとは違い、ここは多少の差はあれど赤色の屋根で統一されている。
「とうとう来たんですね……ハンリビスに。」
家からも遠くフィルニースからも遠く離れた地。日数的にももう学園は始まっている。王都が華やかな分少し寂しい気持ちになる。
「さあ、もう少しで着きますね。」
王都へ行くと言われた時点で、隣国のことも勉強したアレンシカには向かう先がどこなのかある程度の推察できてしまっている。王都にある貴族専門の宿や騎士団の護衛対象専用の屋敷ということも考えれられなくはないが、ソーンの口ぶりから言ってどこかの貴族家へ向かうのだろう。そしてソーンが仕えるような人物。
馬車はゆっくりと目的地へ行き、そしてゆっくりと止まる。
「さあ、着きました。ようこそハンリビス王都へ。」
アレンシカが降りれば、目の前には豪奢な屋敷がそびえ建つ。
「ここは……、シルロライラ公爵家の屋敷ではないですか……?」
「屋敷を見ただけで当ててしまうとは。」
「ハンリビス王国の宰相である公爵と王妃の右腕である夫人の住む屋敷ですよ!フィルニース王家に携わる者なら必ず知っています。」
「まあ、こちらがアレンシカ様を迎えたいと立候補した方々の屋敷です。」
「まさか!」
まさか国でも重要人物からの申し出だとは思わずアレンシカはひどく狼狽した。隣りを見ればメイメイとジュスティも唖然としている。
屋敷から筆頭執事と思われる紳士がやって来てアレンシカ達に礼をした。
「フィルニース王国リリーベル公爵家のご子息様のアレンシカ様ですね。そちらはアレンシカ様のお付きであられるメイメイ様とジュスティ様。お待ちしておりました。ご案内いたします。」
荷物はいつの間にか傍らにいたシルロライラ家のメイドに預けられて屋敷の中へと案内された。後ろを見るとソーンがきちんといたので安心する。屋敷の主と顔見知りのソーンがいれば心強い。
執事は応接室と思われる部屋で止まりノックをした。
「奥様、リリーベル様をご案内いたしました。」
王都に近づけば近づくほど自然は減っていきフィルニース国境からも離れていく。道も広くなって走りやすくなる。
長い道のりだが少しだけ余裕が出来た分、会話を楽しむことになった。専ら内容はアレンシカの置かれる状況や秘匿事項に反しない程度のソーンの商団のことだった。
少しずつ走ってまた休憩をして王都へ向かう。建物は少しづつ増えてきて王都らしくなっていく。
「その、僕を迎えることを立候補した方はお知り合いですか?」
「私の商会でも一番の顧客ではありますが……何よりアレンシカ様を迎えることを何よりも楽しみに自ら名乗り出た方です。」
「何故縁もゆかりもない僕を……。」
「直接聞いたほうがいいと思いますよ。アレンシカ様とお会いしたいと話していましたので。」
公爵家である以上隣国の者と会った経験もそれなりにはあるが、それでもほとんどは父や王国の関係で会ったくらいで、隣国に友人と呼べる立場もいない。父の関係者としてもアレンシカを迎えるほどの決意をする程の仲の人物がいるとは思えなかった。ライトン伯爵は領主として仕事上の付き合いの延長もあり快く迎えてくれていたが、それも自国だからの話だ。
「見当はつきませんが……こんな僕を迎えてくれるのですから良い人だと思います。会うのが楽しみです。」
知らない人に会う不安はあるが、それでも楽しみもある。どんな人なのか想像しながら馬車は長い日時の王都へ向かった。
何日もかけてとうとう王都へと入った。
隣国であるのでフィルニースと雰囲気は似つつもやはり別の国であり、街並みは違う。何より違うのは屋根だろう。様々な色の屋根があるフィルニースとは違い、ここは多少の差はあれど赤色の屋根で統一されている。
「とうとう来たんですね……ハンリビスに。」
家からも遠くフィルニースからも遠く離れた地。日数的にももう学園は始まっている。王都が華やかな分少し寂しい気持ちになる。
「さあ、もう少しで着きますね。」
王都へ行くと言われた時点で、隣国のことも勉強したアレンシカには向かう先がどこなのかある程度の推察できてしまっている。王都にある貴族専門の宿や騎士団の護衛対象専用の屋敷ということも考えれられなくはないが、ソーンの口ぶりから言ってどこかの貴族家へ向かうのだろう。そしてソーンが仕えるような人物。
馬車はゆっくりと目的地へ行き、そしてゆっくりと止まる。
「さあ、着きました。ようこそハンリビス王都へ。」
アレンシカが降りれば、目の前には豪奢な屋敷がそびえ建つ。
「ここは……、シルロライラ公爵家の屋敷ではないですか……?」
「屋敷を見ただけで当ててしまうとは。」
「ハンリビス王国の宰相である公爵と王妃の右腕である夫人の住む屋敷ですよ!フィルニース王家に携わる者なら必ず知っています。」
「まあ、こちらがアレンシカ様を迎えたいと立候補した方々の屋敷です。」
「まさか!」
まさか国でも重要人物からの申し出だとは思わずアレンシカはひどく狼狽した。隣りを見ればメイメイとジュスティも唖然としている。
屋敷から筆頭執事と思われる紳士がやって来てアレンシカ達に礼をした。
「フィルニース王国リリーベル公爵家のご子息様のアレンシカ様ですね。そちらはアレンシカ様のお付きであられるメイメイ様とジュスティ様。お待ちしておりました。ご案内いたします。」
荷物はいつの間にか傍らにいたシルロライラ家のメイドに預けられて屋敷の中へと案内された。後ろを見るとソーンがきちんといたので安心する。屋敷の主と顔見知りのソーンがいれば心強い。
執事は応接室と思われる部屋で止まりノックをした。
「奥様、リリーベル様をご案内いたしました。」
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