天啓によると殿下の婚約者ではなくなります

ふゆきまゆ

文字の大きさ
120 / 154

支え合う

「それでどうだった?」

帰って早々に執務室に迎えば扉を開いてすぐにユースに聞かれた。

「成果はありません。どちらも協力も正直に話すことも拒否すると。」

「そうか……。」

「言い訳ばかりではぐらかしてばかりでした。」

鞄を座席に置いてから自分もドカリと座った。
いつもならすぐにお茶でも頼むが今日はとてもそんな気分にはなれない。

「王家はどれだけ舐められているんだ……子爵家は置いておいても平民にまで……。嘆かわしい。」

ウィンノルの報告を聞いてからユースは大きくため息をついた。

「命令でも出せれば直ぐにでも解決するんだがな……どうにか手立てはないか……。」

「……いっそ兄上が命令するのはどうです?立太子は確実ですし、次期国王の命令でさえも軽視するのならもう重罪です。王家をここまで足蹴にするなんて……。」

「ううん……確かにな……国王ではなくとも王子としての命令でも聞かないなら許されるものではないしな。貴族も民も全て王の臣下なのだからな……。最終的には考えてみるか。」

二人して頭を揃えてずっと考えているのに事態は好転しない。

「どちらにせよ、ミラー家と平民には罰を与えることは決定だな。王家への虚偽申告に非協力……学園からの退学くらいが妥当か?」

「そう思いますよ。王族への暴力に等しい。」

「では学園に申請しておこう。」

ユースは手早く書類を纏め始めた。方針が決まればすぐに動いた方がいい。自分たちがすぐに動いていればアレンシカは逃げなかったといつも悔いている。

「そういえば……プリム・ミラーが貴顕秩序衛務院に手紙の件を報告したとか。」

「手紙の件?ああフィラルのか。」

「外見が王族で中身が別の貴族のものだからだとか。まあ悪あがきですね。それでハッタリが出来るとでも思っているところが非常に浅はかな手です。」

「衛務院の最高責任者が王弟殿下だとは知らなかったのか?」

「それでこちらへの牽制になると思っているのだから知らなかったのではないですか?」

報告を聞いてユースは思わず出そうになる笑いを堪えた。最高責任者も王族なのだからいくら報告しようが自分たちの非になることをするはずがない。同じ身内でも可愛い息子の為に思わない国王とは大違いだ。
王弟殿下に連絡をしておくまでもない。

「王弟殿下が率いる衛務院にも話しているなら安心だろう。あちらも墓穴を掘ったな。」

ユースは鼻歌でも奏でそうに上機嫌になりながら仕事を片付けている。

「では罰するのはあちらに任せてもいいのですか?」

「いや、それだけでは示しはつかないから学園からも罰してもらう。よし、出来た。あとは届けてもらえば終わりだ。」

机の上には封書が存在感を放ちながら置いてある。あの子たちへの最後通牒だ。

「さて、あとはミラー家とリリーベル家へ……。だがこれは王の管轄でもあるからな。どうするか……。」

「まだリリーベル家への処罰が決まっていませんよね。では最後にきちんと話をしてからでもいいんじゃないですか?」

「話?」

「はい、あの子らはまだ教育が行き届いていないから融通が利かないんです。でもリリーベル家も今ならしっかり話を聞くかもしれません。プリム・ミラーへの処罰が聞かされるのなら。」

「そうだな……。侍従見習いでも処罰を与えられるのなら自分たちはさらに重くなる、と考えればもう少し王家へ協力的にもなるかもしれない。」

「これは希望的観測ですか?」

「……いや、アレンシカの婚約者はお前だ。最後にはお前の決定に俺も従うよ。」

「ありがとうございます。」

ウィンノルは噛みしめるようにお礼を言った。リーダーシップに溢れ優秀でしっかり者の兄が認めて見守ってくれることがウィンノルは嬉しかった。

「では、リリーベル家はウィンノルに任そう。雑務は俺に任せてくれ。」

「必ず成果を上げてみせます。」

兄弟の絆を確かめた時、執務室の扉が鳴った。

「失礼いたします。至急お知らせしたいことが。」

「なんだ?」

機嫌よくユースは入ってきた部下に返事をした。

「アレンシカ様が見つかりました。」
感想 80

あなたにおすすめの小説

愛され方を教えて

あちゃーた
BL
主人公リハルトは自分を愛さなかった元婚約と家族のために無惨に死んだ…はずだった。 次に目が覚めた時、リハルトは過去に戻っていた。 そこは過去のはずなのにどこかおかしくて…

あなたの愛したご令嬢は俺なんです

久野字
BL
「愛しい令息と結ばれたい。お前の家を金銭援助するからなんとかしろ」 没落寸前の家を救うため、強制的な契約を結ばれたアディル。一年限りで自分の体が令嬢に変わる秘薬を飲まされた彼は、無事に令息と思いを通じ合わせることに成功するが……

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

生まれ変わりは嫌われ者

青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。 「ケイラ…っ!!」 王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。 「グレン……。愛してる。」 「あぁ。俺も愛してるケイラ。」 壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。 ━━━━━━━━━━━━━━━ あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。 なのにー、 運命というのは時に残酷なものだ。 俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。 一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。 ★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!