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勉強
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もうすぐ楽しい夏休みが待っている。……と言いたいところだが学園では休みの前の浮かれた気持ちなどどこにもなく静かで重い気持ちに包まれている。
それもそのはずで、夏休みの前には期末テストがあるからだ。
皆、テストに向けて山積みの教科書やノートを前に一心不乱に勉強している。
一人を除いて。
「みーんな、真面目にお勉強してますねー。」
「アンタは勉強しなさすぎ。」
たまたま教師に用事があり、自習になった今の時間は格好の好きな教科を勉強するチャンスだ。苦手な教科に取り組む者、得意な教科をさらに伸ばす者と様々なはずなのに、そんな生徒など意に返さぬようにプリムはただのんびりとしている。
目の前でアレンシカとエイリークも勉強しているというのに。
「アンタさ、アレンシカ様にお付きになるということは、すごく勉強しなきゃいけないんだよ?なのに何?このノート、なんにも書いてない!少しは勉強しなよ本当に。」
「でもねー、勉強って本当に苦手なんですよエイリーク君。この世で一番難しいものだと思うんです。」
「本当に不本意だけど、本当にほんとーに!不本意だけど!いつでもノート貸してあげるって言ってるよね?実際に貸してるし!ちゃんとしてるの?」
「一応ちゃんと読んでますよー。こうペラペラーって。」
「貸せば勉強すると思ったボクがバカだった……。」
目の前で文句を言いながらもけして手を休めないエイリークとプリムが言い合いをしている言葉たちをBGMに、アレンシカは会話に参加せずに勉強している。
その様子からはいつものような穏やかさもなく、どことなく焦りも見られた。
「アレン様、大丈夫ですか?」
「……ん?」
「最近アレンシカ様が誰の目から見ても分かるくらいすごーく疲れてるんだなーってエイリーク君と話してるんですー。」
「ちゃんとお休みしていますか?」
「もちろん、ちゃんとしてるよ。身体は資本だからね。」
嘘だ。ここ最近は夜遅くまで起きていることが何回もある。どうしても眠い時は、先に寝てとても早い時間に起きることもあるがそれでも睡眠時間は取れていない。
毎日同じ招待状がまるで脅迫のように届くのだ。内容が同じものを間引いたところで数自体多い。それに一枚一枚、せめて数を減らすようにとユースに返事をしなければならない。
だというのにさらに日を置かずにユースかフィラルのどちらかが来訪し、社交の為の服やアクセサリーを見に行こうと誘われ外出させられたりもする。
さすがに王族であるユースが来訪する日は少ないが、フィラルの来訪回数は多く、また将来の王配であるフィラルが訪れるというのに公爵家として簡単な出迎えでは済まされない。その度に勉強時間がストップしてしまうというのに、未だ拒否できていない全てのパーティーの来賓達の情報を頭に入れなければならず、そのせいでせっかく蓄えた勉強知識が追いやられてしまいそうだった。
「本当に、大丈夫ですか……?」
「もちろんだよ。勉強は好きだし、きちんと生活してるからね。」
「でも……。」
「でもプリムはもう少し勉強しようか。プリムは要領がいいし、本気を出せばこれくらいすぐ出来ちゃうよ。」
「はあーい。」
「僕も手伝うから一緒に頑張ってみようね。まずは一番得意な教科を伸ばそうか。」
プリムに寄り添いノートを広げて交互に見るアレンシカ。
「でもアレン様の負担になっちゃうんじゃないですか?プリム全然出来ないし……。」
「ううん。ちょうど基礎を学び直したいと思っていたところだし、ちょうど良かったよ。いい復習になるし良かった。それにプリムと勉強するのも楽しいし。」
そう言ってニコリと笑って勉強するアレンシカは、複雑そうな目で見ているエイリークには気づかなかった。
それもそのはずで、夏休みの前には期末テストがあるからだ。
皆、テストに向けて山積みの教科書やノートを前に一心不乱に勉強している。
一人を除いて。
「みーんな、真面目にお勉強してますねー。」
「アンタは勉強しなさすぎ。」
たまたま教師に用事があり、自習になった今の時間は格好の好きな教科を勉強するチャンスだ。苦手な教科に取り組む者、得意な教科をさらに伸ばす者と様々なはずなのに、そんな生徒など意に返さぬようにプリムはただのんびりとしている。
目の前でアレンシカとエイリークも勉強しているというのに。
「アンタさ、アレンシカ様にお付きになるということは、すごく勉強しなきゃいけないんだよ?なのに何?このノート、なんにも書いてない!少しは勉強しなよ本当に。」
「でもねー、勉強って本当に苦手なんですよエイリーク君。この世で一番難しいものだと思うんです。」
「本当に不本意だけど、本当にほんとーに!不本意だけど!いつでもノート貸してあげるって言ってるよね?実際に貸してるし!ちゃんとしてるの?」
「一応ちゃんと読んでますよー。こうペラペラーって。」
「貸せば勉強すると思ったボクがバカだった……。」
目の前で文句を言いながらもけして手を休めないエイリークとプリムが言い合いをしている言葉たちをBGMに、アレンシカは会話に参加せずに勉強している。
その様子からはいつものような穏やかさもなく、どことなく焦りも見られた。
「アレン様、大丈夫ですか?」
「……ん?」
「最近アレンシカ様が誰の目から見ても分かるくらいすごーく疲れてるんだなーってエイリーク君と話してるんですー。」
「ちゃんとお休みしていますか?」
「もちろん、ちゃんとしてるよ。身体は資本だからね。」
嘘だ。ここ最近は夜遅くまで起きていることが何回もある。どうしても眠い時は、先に寝てとても早い時間に起きることもあるがそれでも睡眠時間は取れていない。
毎日同じ招待状がまるで脅迫のように届くのだ。内容が同じものを間引いたところで数自体多い。それに一枚一枚、せめて数を減らすようにとユースに返事をしなければならない。
だというのにさらに日を置かずにユースかフィラルのどちらかが来訪し、社交の為の服やアクセサリーを見に行こうと誘われ外出させられたりもする。
さすがに王族であるユースが来訪する日は少ないが、フィラルの来訪回数は多く、また将来の王配であるフィラルが訪れるというのに公爵家として簡単な出迎えでは済まされない。その度に勉強時間がストップしてしまうというのに、未だ拒否できていない全てのパーティーの来賓達の情報を頭に入れなければならず、そのせいでせっかく蓄えた勉強知識が追いやられてしまいそうだった。
「本当に、大丈夫ですか……?」
「もちろんだよ。勉強は好きだし、きちんと生活してるからね。」
「でも……。」
「でもプリムはもう少し勉強しようか。プリムは要領がいいし、本気を出せばこれくらいすぐ出来ちゃうよ。」
「はあーい。」
「僕も手伝うから一緒に頑張ってみようね。まずは一番得意な教科を伸ばそうか。」
プリムに寄り添いノートを広げて交互に見るアレンシカ。
「でもアレン様の負担になっちゃうんじゃないですか?プリム全然出来ないし……。」
「ううん。ちょうど基礎を学び直したいと思っていたところだし、ちょうど良かったよ。いい復習になるし良かった。それにプリムと勉強するのも楽しいし。」
そう言ってニコリと笑って勉強するアレンシカは、複雑そうな目で見ているエイリークには気づかなかった。
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