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とらえる
しおりを挟むワイシャツの首まわりが少し苦しい気がして、指を入れてゆるめた。
結婚式の撮影に、着慣れないブラックスーツでいるため緊張している。
お色直しをした新郎新婦とともに会場の前まで来ると、先導していた品川さんがインカムで到着を知らせた。
インカムで指示を出す品川さんは、いつもより三割増しで格好良く見える。
プレスのきいたパンツスーツもまた品川さんに良く似合っていた。
品川さんとアイコンタクトして先に会場に入り、撮影のベストポジションを確保する。
一瞬の間をおいて内側から扉が開かれた。新郎新婦の笑顔とともに、拍手が沸きおこる。
扉の陰からお辞儀をした品川さんと視線が絡む。にこりと笑顔をつくる品川さんに、自分が笑っているのがわかるだろうか。
完璧なタイミングだった。仕事がしやすい、いい現場だ。
お色直しの後は、ファーストバイト、新郎新婦からのデザートバイキングの流れになる。
新郎新婦が初めての共同作業として、ケーキに入刀した後お互いに食べさせあうファーストバイトは、微笑ましいような恥ずかしいようなくすぐったい感じがして落ちつかない。
新郎が新婦の持つ大きなスプーンから食べさせてもらうと、会場が笑いに包まれる。
撮影をしながら、視界のすみにミオの動きを捕らえていた。
なんだか、綺麗になった気がする……
もともとふっくらとして血色のいい頬も、赤いぷっくりした唇も、伏せられて影を落とすまつげも、今までより色香をまとっている。
じわりと胸に染み出してくるものがある。あまりいいとは思えないそれを、いらいらと認識しないように意識を新郎新婦に集中しようとする。
それでも、デザートバイキングのサポートをするミオはどこか視界に入ってきて訳もなく苛立つ。
どうして、そんなに綺麗になったんだよ。
誰かのせい…?
誰かと付き合っているとは聞かないけれど、好きな人くらいは出来たのかもしれない。
「棚橋さん、綺麗になったよね」
ふいに話しかけられて横を見ると、御山さんだった。
「睨みつけるように見ていたけど、気になる? 」
「一緒に仕事をしている仲間ですから、多少は」
話しかけられながらも、冷静にシャッターを切る。
「今の顔は多少なんてものじゃなかったよ。それくらいは沙那のことも気にして欲しいよね」
「あいつは独りで悩んで、独りで決めるからね。気づいてやれないなら、俺がもらうけど」
言われた言葉に打たれるように顔を見ると、ふざけて言っているようには見えなかった。
「何かあったんだろ? 溜息をついているし、いつもより手をとめて考えこむ時間が長い」
前日に準備する沙那さんを、料理の仕込みで来ていた御山さんは見かけたんだろう。
朝の支度でブーケを届けた沙那さんは、いつもと変わらないようだった。
「聞いてみます」
「沙那は、きっと言わないよ。自分のなかで答えが出るまで話すような奴じゃない」
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