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いざなう
しおりを挟む「今日はブライダルの後に、皆さんにお時間を頂きたいのですがよろしいですか」
朝のミーティングに品川さんがにっこりと笑って、皆に告げた。
「了解。何かあるんですか?」
「今は言えません。その時までのお楽しみです」
楽しそうに目を細めて、品川さんは到着した新婦を出迎えに行ってしまった。
視線を感じてミオを見ると、さりげなく逸らされた。
「なにがあると思う? 」
「さあ、知らない」
ミオがそっけない。
「なんか隠してる? 」
「そんなことない。後でわかるんだから、今はまだいいでしょ」
ミオの口調から、何か知っているようだが、教えては貰らえないこともわかった。
きびきびと厨房に行ってしまう後ろ姿を見送ると、沙那さんが話しかけてきた。
「今日はあたしも誘われてるのよ。後でまた合流するから一緒に出ましょうよ」
沙那さんからは、御山さんが言うような悩みを感じない。きっと御山さんの気のせいだ。
だってご両親とも和解したんだから、心配があるとしたら、お母さんの病気のことだろう。
それも、自分達二人が仲良くやっているとわかれば、多少なりともお母さんだって安心するはずだ。
ご両親だって沙那さんの一番の幸せを望んでいるはずだ。
「そうだね。沙那さんと一緒なら、楽しみに待つことにするよ」
「もう、結輝は口が上手いんだから」
きゅっと手を握ったら、はにかむように怒って行ってしまった。
年上でも、そんなふうに照れるのがかわいい。これからも、そばにいていろんな沙那さんを見ていけたらいい。
ゆっくり仕事へ気持ちがシフトしていく。ミーティングでの言葉を思い出しながら、幸せを形に残すために。
お客様を入り口で送り出して、また皆でミーティングルームまで戻ってくる。
よいお式だった後の、程よい疲れがまつわりついている。
あれこれ話しながらそれぞれが飲み物を用意していると、ミオがゆらゆらとロウソクをともしたケーキのワゴンを押して現れた。
途端に、まわりからハッピーバースデーの合唱が始まる。驚いて回りを見渡すと、皆がにこにこと自分を見て、肩や背中に手をやってワゴンのほうへと押していく。
まさかという思いも、ケーキに添えられたプレートを見てはっきりとした確信に変わった。
『HAPPY BIRTHDAY ゆうき』
丸みのあるミオの字で、プレートに刻まれていた。
声を出そうとしたら、泣いてしまいそうになって、慌てて上を向いて呼吸を整える。
「……何て言ったらいいのか……とても嬉しくて、言い表す言葉がみつかりません。こんなに沢山の人から祝福されるのは初めてです……ありがとうございました」
お辞儀をしてから見渡すと、皆笑顔で拍手してくれていた。
大きくなった拍手に押されるように、ロウソクを吹き消す。
自分は今、とても幸せ者だ。やりがいのある仕事、頼りになるスタッフ、綺麗だけれどかわいらしい彼女。
なにもかもが、かけがえのない宝物だ。
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