Focus

高遠 加奈

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みせたい

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沙那さんと御山さんの一件があってからしばらくして、元々の専属カメラマンである山並さんが帰国した。



山並さんが無事に帰国したことで、ウエディングの仕事はがっくりと減ってしまった。

甘い名前のあの建物で催されるパーティーは、1日限定一組というなんとも優雅でゆったりしたものであって、極上の時間を求めるセレブリティに大人気なのだ。


宣伝なんてしなくとも、予約は2年さきまで埋まっているので、別れないで待てる覚悟が無ければ結婚を勧められない。


口コミだけでそれだけの需要があるというのは凄いことだが、社長令嬢である沙那さんの御学友からの御紹介というものも大きいそうだ。



しばらく間があいてしまっても、機会があるなら相模くんにもお願いしたいと言って貰えたので、こちらも嬉しくまた予定を入れてもらうことにした。




そんなある日、紙袋一つとカメラバックを片手に坂道を登っていた。

駅から最短の近道に気持ちのいい大木があって、通るたびに癒やされていた。時には、ほんの僅かな間だけでも立ち止まり、風が木々の枝を揺らすのを聞いて街の中にある自然を感じていた。


今日もゆっくり枝と葉の奏でる音を聞こうかと坂道の下から見上げると、すでに先客がいるらしく木の影にブルーのワンピースがのぞいていた。


まだ暑くなる時間ではないけれど、気持ちのいい木陰で一休みしたくなる気持ちもよくわかるので、邪魔をしないように、そっと通りすぎることにした。


「ご無沙汰してたくせに、しらんぷり?」


聞き覚えのある声に振向くと、唇を引き上げたミオがいた。


「同化しててわからないって」


「関わりたくねーって顔してた」


「関わりたくねーって言うより、そっとしといてやったんだけど」


「へえっご親切にどうも」


ミオの顔には、納得していないんだから
と書いてあってわかりやすい。

そのわかりやすさがミオらしくて笑みが浮く。近づいて見上げてきたミオは不満そうに頬が膨れていて、リスみたいだ。


「もうっバカにしてる?」

「していないって」


怒っているミオも、ミオらしくてさらに笑いがこみ上げてくる。


「ミオに見せたいものがある」


「偶然ね。あたしもよ」

ぱっと不満げな顔を引っ込めたミオが、肩から下げたトートバックを漁り、雑誌を突き出す。俺も紙袋から同じように雑誌をミオに渡した。


ミオが、期待を込めて見つめてくるので、先にミオから受け取った雑誌を開く。


開こうとしただけで、目当てのページが
開いてしまうほど、その雑誌にはクセがついていて、どれだけミオがそのページを見ていたのかがよくわかった。


新人パティシエコンクール


ミオが、悩んで悩んで作り上げたケーキが、一番大きな写真と共に最優秀の評価
を受けていた。


「……なにか言うことないの」


ミオは、一向に口を開かない俺にじれて眉間にシワを寄せている。おめでとうも、凄いなという賞賛もない。


ミオのことなら、なんだって知ってる。会わない間のことも全て。

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