Believe me

高遠 加奈

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帰ってきた男

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  二年間、婚活をした。かなり気合いを入れていたのにちっとも結婚の二文字にたどり着かなかった。

  そんな折、奴が帰ってくるとの一報があった。出世コースの奴は部長に昇進して、林部長は本社に帰るそうだ。支社でもって可愛いお嫁さんを手に入れて幸せいっぱいだ。もし問題があるとしたら、奴が一方的に言い放っていったことだ。




「それで、どうしたい訳? 」

「お前が一番わかってるんじゃねぇの」


 奴が支社に戻るなり、壁ドンされている。ちなみに今は就業時間後で残業タイムに突入していて、月初めでこちらの仕事は落ち着いている。また検査待ちだ。


「結婚してないってことは、いいんだよな?」

「誰もそんなこと言ってない」


 胸元に伸びた腕が、ぷつりとボタンを外す。慌てて手首をつかんだけれど、熱い体で射すくめるように見つめられた。


「オレのこと好きなんだろ? 」

「自惚れないでよ。引く手あまたで相手を見定めてるの」

「そんなのオレにすればいいだろ! オレこれでも出世頭なんだけど」


 こつりとおでこをくっつけて苦しげに訴えてくる。


「禁欲してたから、ご褒美ちょうだい」


 またしても強引にキスしてくる。そのくせキスじたいは優しくて甘い。あたしが漏らす吐息よりも甘く色気がある。二年前のキスで泣いたせいか、優しく頬に手を添えて角度を変え、キスしてくる。無理矢理舌を入れてこようともしない。唇を離してから、間近でじっとみつめてくる。


「本社に行ってる間は、彼女作ってないから。ずっとお前のこと考えてしてた。もういい加減、オレに落ちてこいよ」

「なに普通に下ネタ挟んでくるのよ」

「そこ聞きたいとこじゃない? どんだけ愛されてるのか」


抱きしめられて、頭にすりよってくる。頬をすりつける気配がする。


「オレも健全な肉体があるわけで、そろそろ生身の惚れた女としたいわけ」

「口が軽すぎて信じられない」

「紙一枚で信用されるなら、婚姻届だって書くけど」


 信じられなくて、胸を押して顔が見れるところまで離れる。奴は背広のポケットから折り畳まれた薄い紙を取り出した。保証人の欄まで記入済みのそれをよこすと、にやっと笑った。


「オレだって必死なんだよ。愛してる梨央」

「胸小さいけど」

「オレはね脚フェチなんだよ。梨央のかわいいお尻からのびてるすらっとした脚が好きなんだよ」

「そんな細くないよ」

「バカだな。締まりのいいほうがいいんだよ。走ってるんだろ? アスリートの体っていいんだよ」


 自分のフェチまで暴露してる。学生時代から陸上をしていたあたしの体は走るのに都合が良かった。揺れる胸がなくて、脚が長くて。


「ホント下ネタ」

「顔も好きだよ。ツンツンしてるお前のことベットでとろけさせたい。もういいよな? 」


 またキスがはじまる。抵抗する気もうせてされるままに受け入れると、嬉しそうにつぶやかれた。


「やっとオレのだ」


 髪に触れる頬と、熱くて大きな体に覆われる。じわりと男の熱が伝わってきて体温をあげていく。


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