4 / 6
帰ってきた男
しおりを挟む
二年間、婚活をした。かなり気合いを入れていたのにちっとも結婚の二文字にたどり着かなかった。
そんな折、奴が帰ってくるとの一報があった。出世コースの奴は部長に昇進して、林部長は本社に帰るそうだ。支社でもって可愛いお嫁さんを手に入れて幸せいっぱいだ。もし問題があるとしたら、奴が一方的に言い放っていったことだ。
「それで、どうしたい訳? 」
「お前が一番わかってるんじゃねぇの」
奴が支社に戻るなり、壁ドンされている。ちなみに今は就業時間後で残業タイムに突入していて、月初めでこちらの仕事は落ち着いている。また検査待ちだ。
「結婚してないってことは、いいんだよな?」
「誰もそんなこと言ってない」
胸元に伸びた腕が、ぷつりとボタンを外す。慌てて手首をつかんだけれど、熱い体で射すくめるように見つめられた。
「オレのこと好きなんだろ? 」
「自惚れないでよ。引く手あまたで相手を見定めてるの」
「そんなのオレにすればいいだろ! オレこれでも出世頭なんだけど」
こつりとおでこをくっつけて苦しげに訴えてくる。
「禁欲してたから、ご褒美ちょうだい」
またしても強引にキスしてくる。そのくせキスじたいは優しくて甘い。あたしが漏らす吐息よりも甘く色気がある。二年前のキスで泣いたせいか、優しく頬に手を添えて角度を変え、キスしてくる。無理矢理舌を入れてこようともしない。唇を離してから、間近でじっとみつめてくる。
「本社に行ってる間は、彼女作ってないから。ずっとお前のこと考えてしてた。もういい加減、オレに落ちてこいよ」
「なに普通に下ネタ挟んでくるのよ」
「そこ聞きたいとこじゃない? どんだけ愛されてるのか」
抱きしめられて、頭にすりよってくる。頬をすりつける気配がする。
「オレも健全な肉体があるわけで、そろそろ生身の惚れた女としたいわけ」
「口が軽すぎて信じられない」
「紙一枚で信用されるなら、婚姻届だって書くけど」
信じられなくて、胸を押して顔が見れるところまで離れる。奴は背広のポケットから折り畳まれた薄い紙を取り出した。保証人の欄まで記入済みのそれをよこすと、にやっと笑った。
「オレだって必死なんだよ。愛してる梨央」
「胸小さいけど」
「オレはね脚フェチなんだよ。梨央のかわいいお尻からのびてるすらっとした脚が好きなんだよ」
「そんな細くないよ」
「バカだな。締まりのいいほうがいいんだよ。走ってるんだろ? アスリートの体っていいんだよ」
自分のフェチまで暴露してる。学生時代から陸上をしていたあたしの体は走るのに都合が良かった。揺れる胸がなくて、脚が長くて。
「ホント下ネタ」
「顔も好きだよ。ツンツンしてるお前のことベットでとろけさせたい。もういいよな? 」
またキスがはじまる。抵抗する気もうせてされるままに受け入れると、嬉しそうにつぶやかれた。
「やっとオレのだ」
髪に触れる頬と、熱くて大きな体に覆われる。じわりと男の熱が伝わってきて体温をあげていく。
そんな折、奴が帰ってくるとの一報があった。出世コースの奴は部長に昇進して、林部長は本社に帰るそうだ。支社でもって可愛いお嫁さんを手に入れて幸せいっぱいだ。もし問題があるとしたら、奴が一方的に言い放っていったことだ。
「それで、どうしたい訳? 」
「お前が一番わかってるんじゃねぇの」
奴が支社に戻るなり、壁ドンされている。ちなみに今は就業時間後で残業タイムに突入していて、月初めでこちらの仕事は落ち着いている。また検査待ちだ。
「結婚してないってことは、いいんだよな?」
「誰もそんなこと言ってない」
胸元に伸びた腕が、ぷつりとボタンを外す。慌てて手首をつかんだけれど、熱い体で射すくめるように見つめられた。
「オレのこと好きなんだろ? 」
「自惚れないでよ。引く手あまたで相手を見定めてるの」
「そんなのオレにすればいいだろ! オレこれでも出世頭なんだけど」
こつりとおでこをくっつけて苦しげに訴えてくる。
「禁欲してたから、ご褒美ちょうだい」
またしても強引にキスしてくる。そのくせキスじたいは優しくて甘い。あたしが漏らす吐息よりも甘く色気がある。二年前のキスで泣いたせいか、優しく頬に手を添えて角度を変え、キスしてくる。無理矢理舌を入れてこようともしない。唇を離してから、間近でじっとみつめてくる。
「本社に行ってる間は、彼女作ってないから。ずっとお前のこと考えてしてた。もういい加減、オレに落ちてこいよ」
「なに普通に下ネタ挟んでくるのよ」
「そこ聞きたいとこじゃない? どんだけ愛されてるのか」
抱きしめられて、頭にすりよってくる。頬をすりつける気配がする。
「オレも健全な肉体があるわけで、そろそろ生身の惚れた女としたいわけ」
「口が軽すぎて信じられない」
「紙一枚で信用されるなら、婚姻届だって書くけど」
信じられなくて、胸を押して顔が見れるところまで離れる。奴は背広のポケットから折り畳まれた薄い紙を取り出した。保証人の欄まで記入済みのそれをよこすと、にやっと笑った。
「オレだって必死なんだよ。愛してる梨央」
「胸小さいけど」
「オレはね脚フェチなんだよ。梨央のかわいいお尻からのびてるすらっとした脚が好きなんだよ」
「そんな細くないよ」
「バカだな。締まりのいいほうがいいんだよ。走ってるんだろ? アスリートの体っていいんだよ」
自分のフェチまで暴露してる。学生時代から陸上をしていたあたしの体は走るのに都合が良かった。揺れる胸がなくて、脚が長くて。
「ホント下ネタ」
「顔も好きだよ。ツンツンしてるお前のことベットでとろけさせたい。もういいよな? 」
またキスがはじまる。抵抗する気もうせてされるままに受け入れると、嬉しそうにつぶやかれた。
「やっとオレのだ」
髪に触れる頬と、熱くて大きな体に覆われる。じわりと男の熱が伝わってきて体温をあげていく。
0
あなたにおすすめの小説
放課後の保健室
一条凛子
恋愛
はじめまして。
数ある中から、この保健室を見つけてくださって、本当にありがとうございます。
わたくし、ここの主(あるじ)であり、夜間専門のカウンセラー、**一条 凛子(いちじょう りんこ)**と申します。
ここは、昼間の喧騒から逃れてきた、頑張り屋の大人たちのためだけの秘密の聖域(サンクチュアリ)。
あなたが、ようやく重たい鎧を脱いで、ありのままの姿で羽を休めることができる——夜だけ開く、特別な保健室です。
義兄様と庭の秘密
結城鹿島
恋愛
もうすぐ親の決めた相手と結婚しなければならない千代子。けれど、心を占めるのは美しい義理の兄のこと。ある日、「いっそ、どこかへ逃げてしまいたい……」と零した千代子に対し、返ってきた言葉は「……そうしたいなら、そうする?」だった。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる