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過去編

第12章 危機と迫る脅威

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第12章

危機と迫る脅威

カカリーナの街

マリク・バレンシア(25歳、第三騎士団百人長)が率いる第五騎士団の精鋭250人は、早馬で王都エルニアを出発してから約1日半、ついにカカリーナの東門に到着した。朝霧が薄く立ち込める中、馬蹄の音が石畳に響き、鎧のきらめきが朝日を反射していた。カカリーナは中規模の温泉街で、普段は湯煙と旅人の笑顔に包まれた穏やかな街だが、今は異様な緊張感が漂っていた。

東門の門番が、騎士団の姿を認め、大声で叫んだ。「騎士団が来たぞー!」その声に、街中から歓声が沸き上がった。疲れ果てた住民や冒険者たちの間に、希望の光が差し込んだ瞬間だった。

マリクは馬から降り、兜を外して周囲を見回した。街の通りには、傷ついた冒険者や街の兵士が壁に寄りかかり、応急処置を受けている者もいた。血と汗の匂いが漂い、遠くからは戦いの叫び声がかすかに聞こえてくる。マリクの胸に、リンダとリオの顔が浮かんだ。「リンダ……リオ……無事でいろよ……。」

「誰か状況を知っている者はいるか!」マリクの声が通りを切り裂いた。鋭い目つきで周囲を見渡すと、群衆の中から二人の男が前に進み出た。カカリーナ冒険者ギルド支部のギルド長、ロドリック(45歳、元冒険者)と、街の郡長(市長に相当する役職)のハロルド(50歳、恰幅の良い男性)だ。

ロドリックは灰色の髪を後ろに束ね、傷だらけの革鎧をまとっていた。彼は疲れた顔で、しかし落ち着いた声で言った。「マリク隊長、ようこそカカリーナへ。まずはギルドの会議室で状況を説明します。こちらへどうぞ。」

マリクは頷き、部下たちに素早く指示を出した。「副長! ジーニアス! 街の治安維持と怪我人の治療を優先しろ! ジュリアン、お前も一緒に来い!」副長のジーニアス(30歳、冷静沈着な騎士)とジュリアン(25歳、若く敏捷な騎士)が頷き、マリクと共にギルドへと向かった。



ギルド会議室:危機の全貌

カカリーナ冒険者ギルド支部の会議室は、質素だが広々とした部屋だった。木の長テーブルには、地図や報告書が散乱し、壁にはモンスターの討伐記録が貼られている。ロドリックとハロルドがマリクたちを席に案内し、早速状況を説明し始めた。

ロドリックは重い口調で切り出した。「マリク隊長、3日前、南カヤーべ遺跡でボブゴブリンの異常発生が確認されました。それから状況が悪化し、ついにスタンピードが発生したんです。モンスターの数は、約500体。」

「500!?」マリクは思わず声を上げ、テーブルを叩いた。「ありえねえだろ! ボブゴブリンがそんな数で群れるなんて、聞いたことねえ!」

ロドリックは苦い顔で頷いた。「その通りだ。ボブゴブリンは通常、ゴブリンジェネラルやゴブリンキング、ゴブリンクイーンのようなネームドモンスターの手下として動く。単体なら問題ないが、500体となると……異常事態だ。だが、冒険者と街の兵士が総出で戦って、何とか抑え込んでる。殲滅は時間の問題だ。」

ハロルドが補足した。「街の南門で、冒険者と兵士が必死に戦ってます。モンスターの勢いは弱まってきてるんで、騎士団の皆さんには後方支援をお願いしたい。」

マリクは眉を寄せ、会議室の壁に広げられたカカリーナ周辺の地図に目をやった。地図には、南カヤーべ遺跡が赤い印で示され、周辺にいくつかの黒いマークが点在していた。「このモンスター、全部南カヤーべ遺跡から来てるんだろ? 500体って数がおかしすぎる。今までこんな規模、聞いたことねえぞ。」

ロドリックは少し気まずそうに答えた。「確かに異常だが、冒険者たちが頑張ってくれてる。何とか殲滅できそうですよ。騎士団の力は、もう必要ないかもしれません。」

マリクは鋭く言い返した。「そういう問題じゃねえ! 500体が湧いてきたってことは、もっとでかい何かが潜んでる可能性があるだろ!」彼は地図を指差し、黒いマークに目を止めた。「この黒いマークはなんだ?」

ロドリックは地図を見ながら答えた。「それは、昔の坑道です。南カヤーべ遺跡の周辺に、全部で4カ所。鉱石採掘のために使われてたが、今はもう使われてません。」

マリクは目を細め、決断を下した。「ジュリアン! 斥候を3人選んで、坑道周辺を偵察してこい! 何か見つけたら即座に報告だ!」

ジュリアン(25歳、軽やかな動きが特徴の騎士)はキビキビと敬礼した。「了解しました、隊長!」彼はすぐに部下を呼び、偵察に向かった。

「それまで、騎士団は街の周辺警備に徹する。南門の戦闘は冒険者と兵士に任せ、俺たちは後方支援だ。」マリクはジーニアスに指示を出し、会議室を後にした。



街の防衛と新たな脅威

カカリーナの南門では、冒険者と街の兵士がボブゴブリンと激しい戦闘を繰り広げていた。剣と魔法の火花が飛び交い、ゴブリンの甲高い叫び声が響く。マリクの騎士団は後方支援に回り、負傷者の運搬や物資の補給を手伝った。マリクは南門の戦況を眺めながら、リンダとリオがいるストーン家の屋敷を思った。「リンダ、カシムさんがいるから大丈夫だよな……。」

数時間後、ジュリアンと斥候隊が息を切らせて戻ってきた。ジュリアンの顔は青ざめ、汗と埃にまみれていた。「隊長! 大変です! 坑道周辺の偵察結果ですが……1つ目の坑道にモンスター約2000~3000体! 2つ目の坑道に1500~2000体! 3つ目、4つ目の坑道もそれぞれ2000~3000体!」

マリクは目を丸くし、声を上げた。「全部で1万以上だと!? なんだその数!」

ジュリアンは息を整えながら続けた。「坑道付近は瘴気が強くて、これ以上近づけませんでした。ボブゴブリンだけじゃなく、もっとでかいモンスターがいる気配です!」

マリクはロドリックを振り返り、鋭く問いただした。「ギルド長! 坑道付近に斥候を出してなかったのか!?」

ロドリックは顔を曇らせ、肩を落とした。「いや……3日前までは、坑道にそんな気配はなかった。完全に状況確認を怠った……。」

マリクは拳を握り、声を張り上げた。「そんなこと言ってる場合じゃねえ! 全住民の避難を始めろ! ハロルド郡長、すぐに準備だ! そして、ジーニアス! 早馬で王都に報告、救援を要請しろ!」

ジーニアスは頷き、すぐさま伝令を準備した。マリクは地図を睨み、唇を噛んだ。「1万以上のモンスター……これが街道に出たら、キャラバンや旅人に被害が出る。いや、王都だって危ねえぞ!」

ロドリックは意気消沈しながら呟いた。「私の失態だ……すまなかった、隊長。」

マリクはロドリックを睨み、しかしすぐに気を取り直した。「落ち込んでる暇はねえ! 王都に被害を出すわけにはいかねえ。ここで食い止めて、時間を稼ぐんだ! あと1日、父貴――ガルド閣下が必ず来てくれるはずだ!」





カカリーナの街は、ボブゴブリンのスタンピードに襲われ、さらなる脅威――坑道に潜む1万以上のモンスターの気配に直面していた。マリクは第五騎士団300を率い、住民の避難と防衛戦の準備を急いだ。リンダとリオを守るため、そして王都への被害を防ぐため、彼は全力を尽くす覚悟だった。

次なる戦いは、カカリーナの存亡を賭けた魔物防衛戦。王都からの救援が届くまで、マリクたちは時間を稼げるのか――? 物語は、壮絶な戦いの幕開けへと突き進む。
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