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第六章 世界と仲間を救うために
1 頑張るアーサー
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1・
アルダリア世界に戻してもらうために、ユーリシエスを探して彼の居そうな場所をくまなくチェックしていった。
でも関係者以外立ち入り禁止の精霊王の城と世界樹にいつもいて、全然近付けない。
伝言だけが来て、もう忘れろって言われた。
ちくしょうこの野郎と城の外で叫んでいるとタンジェリンがやって来て、問答無用で俺を捕まえて森の共同浴場に突っ込んだ。
イライラしたが、確かに俺は汚れきっている。清潔好きな精霊たちの迷惑にはなっている。
だからとりあえず水浴びして、一緒に洗濯しようと寝間着を空間収納から取り出した。
ところどころが破けている上にコボルトと咲夜の血がべっとりついて乾いていて、見てからに呪われそうな一品になっている。
カルゼア大森林の美しい川で洗って良いものか悩んだ。
ら、俺を監視しているタンジェリンが寝間着を奪い取ってしまった。
「これは一体、どういう事なんだ? 誰の血なんだ?」
「それは……犬に襲われていた女の子を助けたんだ。重傷だったけれど、ちゃんと救ったよ」
「そうか。ただ普通に迷宮巡りでもしているのかと思っていたら、そんな事もしていたのか。良くやった。偉いな」
タンジェリンは川岸から手を伸ばして、流れの中にいる俺の頭をよしよしと撫でてくれた。
タンジェリンは俺がどこに行っていたか、本当に知らないのだろうか。ただ微笑む彼の優しい顔に、隠し事の影などいっさい見当たらない。
「父さん、俺、またその女の子に会いたい。彼女、物凄く困ってるんだ。だから助けに戻りたいのに、ユーリシエスが忘れろって言うんだ」
「そうか。でもそれは、ユーリシエスがアーサーのことを心配しているからだ。そんなにボロボロになってまで人を助けたいアーサーを、彼は助けたいんだ」
「大きなお世話だ」
「かもしれない。だけど、きっと後で感謝するだろう」
「しない! ユーリシエスになんか、絶対に感謝しない! 元いた場所に戻してくれるまでは、許さない!」
「じゃあそう伝えようか?」
「あ、うん。頼むよ」
タンジェリンも、本当は城か世界樹にいる筈の人員だ。俺、ちょっと迷惑をかけている。
しょうがないので今は普通に振る舞って新しい服に着替え、家に帰ってエリスと一緒にフルーツジュースを飲んだ。
タンジェリンは、すぐに出かけて行ってしまった。
俺はしばらくエリスに見張られたが、部屋で眠り始めるとキッチンに行ってくれた。
その隙に起きだして、迷宮に向かった。
2・
咲夜との契約は生きていて、今も遠くて薄くなったといえども彼女の感情が伝わってくる。
俺を呼び出そうとしている気配はあるものの、最初の時みたいには道が通じない。契約まで交わしたのに、あの時と今では何が違うのだろうか。
咲夜はとても焦っている。俺も、必要な時に傍にいれない不義理にイラつく。
でも、また呼び出された時のために、こちらで物質をまとめて仕入れられるチャンスでもある。
俺は前向きに捉える事にした。だからオゼロのシルバー迷宮に潜り、雑魚だろうがボスだろうが徹底的に狩り始めた。
家に帰らずろくに眠らず、三日が経過した。
すると魔物を独り占めする不届き者扱いされたので、別の迷宮に移動した。
そこでまた二日間頑張っていると、とうとう保護者が出現した。
寝不足の俺はエリスの眠りの呪文に対抗できず、倒れた。
目覚めた時には俺の部屋のベッドに入っていて、様子を見に来たのかプリムベラが傍に立っていた。
「アーサー君、最近どうしたの? なんだかヤケになってるようだけど」
「ヤケって……忙しいだけだよ。食料と武器と防具と魔石を集めたいんだ」
「まるで戦場に出る兵士みたいね。今のアーサー君は、そんな感じよ。でもこの世はもう平和になったのよ? アーサー君が戦う必要なんてどこにもないんだから、安心して」
「できない。俺は……みんなを助ける。そのために今は休んでられない。もう行くよ」
また寝間着だと思いつつ普段着を探してみたが、周囲に見当たらない。タンスの中にもない。
エリスに聞きに行くと、しばらく外出禁止と言われてしまった。そんな馬鹿な。
言うことを聞く訳もない俺は可愛らしい寝間着のまま出かけ、近所の森の果実と木の実の収穫を開始した。
最初は保存食を全部食べ尽くしたからかと思われていたようだが、俺がどんどん採っているとストップがかかった。
ストップをかけにきたのは、今にも爆笑し出しそうなユリアヌスだ。
「笑うな! こっちは必死なんだよ!」
「いやいや、さすがの俺もあのレオンをウサギの格好でイチゴ摘みに出かけさせた事はないからな」
「はあ、そうですか。問題が分かってるなら話は早い。服を寄こせ」
「俺のサイズだとブカブカだろうに。子ウサギちゃん」
「上着でいいからくれ」
頼みつつ奪いに行くと、彼は空間収納から彼の新しい上着を取り出してくれた。それに、ここじゃ獲れない果物も分けてくれた。
「おい、どういう風の吹き回しだ? 明日は豪雨が降る」
「一応、ユーリシエスから聞いている。色々と大変なんだろう?」
俺は、ようやく理解者に出会った。
収穫作業を中断して、俺がどこに行っていたか、何をしていたか教えた。
神石を取り出して見せてみると、ユリアヌスはふーんと言った。
「本当らしいな。その姪っ子ちゃんを助けたいのか」
「当たり前のことを聞くな。俺の姪っ子だぞ!」
「前々世の姪っ子なんて、もう関係なくないか?」
「ユリアヌスは本当に冷たい奴だな。だったら十数代前の前世の友人なんて捨てておいて、全て滅したら良かったか」
あの時のことを思い出し、どんな思いで助けたと思ってるんだと怒りがこみ上げた。
そしたらユリアヌスは、俺の頭を撫でようとした。俺は回避した。
「俺たちは、無茶をするアーサーを放っておけないだけだ。精霊の二十歳なんか、赤子と同じだぞ? お前もさあ、赤子が剣を持って戦いに行くって言ったら絶対に止めるだろうに」
「俺は赤子でも子供でもない。もう十分に使える体を持っている。だから……呼ばれたら行く」
「うん? 契約でもしたのか?」
「……」
地面を見つめて答えないでいると、ユリアヌスは大きくため息をついた。
「あのなあ。子供という意味が理解できないのか? 体の見てくれは大きくても中身はまだまだ成長の途上にあって、今時期の無理は存在自体に響く可能性がある。だからもう、出かけたら駄目だ」
「じゃあ、大人だったら良かったのかよ」
「ああ。個人の判断に任せる」
今の自分が子供な原因の、トーマとして死んだ事が、物凄く憎らしくなった。
「じゃあ、ユリアヌスが代わりに行ってくれ。子供の俺は留守番する」
「分かった。それで大人しくするなら、俺が代わりに行ってやる。神石を寄こせ」
「……良いのか? 本気か?」
「俺はお前に恩返しをしていない。だから、これで恩返しできるというなら行ってやる。ユーリシエスを締め上げてな」
悪役ぽい笑顔のユリアヌスが、本気っぽいと感じた。
「じゃあ、じゃあ頼む」
「分かった」
俺はユリアヌスに神石を渡した。ユリアヌスは笑いながら瞬間移動して消えた。
俺は取り残されたけれど、これでいいと思った。ユーリシエスも、親父のユリアヌスの言葉なら聞くだろうし。
イチゴ摘みを中断して家に帰ると、タンジェリンが庭先でソワソワしていた。
「その上着は、タロートに貰ったのか?」
「うん。いや、ユリアヌスに貰った」
「そうか。後でお礼を言わないとな。今は家に入りなさい」
「……うん」
しょうがないと自分に言い聞かせた。
キッチンで手を洗ってから自分の部屋に戻り、ウサギ以外の寝間着に着替えてベッドで横になった。
目を閉じ、もう大丈夫だと自分に言い聞かせようとした。でも……納得できる訳がない!
俺も行きたいと必死になって咲夜に念を飛ばし続けていると、不意に体が軽くなった。
誰かがいると思って目を開けて振り向くと、一瞬だけアルスノバの姿が見えた。
そして次の瞬間には、そこに立っているのは咲夜になった。
「咲夜! 俺を呼び出してくれたのか!」
床に座っていた俺は立ち上がり、咲夜に飛び付いた。
咲夜は俺を、しっかりと抱き締めてくれた。
「叔父さん! 何度も何度も呼んだのに来ないから、もう諦めてたのよ! 今まで何やってたの!」
「俺がここに来られたのは、アルスノバが力を貸してくれたからだ。咲夜の力だけじゃ、俺を異世界からは呼び出せないんだ」
「え? でもその──」
咲夜の話し声がかき消される轟音が、地響きと共に襲いかかってきた。
「なんだこれ!」
「戦争よ! 聖地に、人間たちが来てるの!」
六日間ほどのブランクが、最悪な状況下で効果を発揮してしまった。戦いの回避とか戦場の変更とかの工作が、全然出来なかったなんて酷い。
岩山内部から外を確認すると、はるか向こうの上空に見える飛空艇団から砲撃されている。そしてどうやら、手前の森まで敵が迫っているようだ。武器のぶつかり合う音が聞こえる。
俺が行かないとと覚悟を決めた。赤子でも子供でも、そんなの関係ない。
「咲夜は後方支援をしてくれ! 俺は前線に出る!」
「あのね、だけどさっき来た人が、アーサー叔父さんは戦わせるなって言うのよ」
「さっき来た人?」
俺の疑問は、森の奥で木々ごと大地が破壊される光景と音でいくらか解消された。
「さっき来た人って、この黒い上着と似たデザインの服を着用した、黒髪長髪の細身で背の高いイケメン?」
空間収納から、俺が身に着けたら短めのコートになってしまう上着を取り出して聞いてみた。
「あ、うん。その人」
「咲夜が呼んだ?」
「アーサー叔父さんを呼んでたら来たの」
「……」
アルスノバの雑な支援をどう考えるべきだろうと、悩んでしまった。
アルダリア世界に戻してもらうために、ユーリシエスを探して彼の居そうな場所をくまなくチェックしていった。
でも関係者以外立ち入り禁止の精霊王の城と世界樹にいつもいて、全然近付けない。
伝言だけが来て、もう忘れろって言われた。
ちくしょうこの野郎と城の外で叫んでいるとタンジェリンがやって来て、問答無用で俺を捕まえて森の共同浴場に突っ込んだ。
イライラしたが、確かに俺は汚れきっている。清潔好きな精霊たちの迷惑にはなっている。
だからとりあえず水浴びして、一緒に洗濯しようと寝間着を空間収納から取り出した。
ところどころが破けている上にコボルトと咲夜の血がべっとりついて乾いていて、見てからに呪われそうな一品になっている。
カルゼア大森林の美しい川で洗って良いものか悩んだ。
ら、俺を監視しているタンジェリンが寝間着を奪い取ってしまった。
「これは一体、どういう事なんだ? 誰の血なんだ?」
「それは……犬に襲われていた女の子を助けたんだ。重傷だったけれど、ちゃんと救ったよ」
「そうか。ただ普通に迷宮巡りでもしているのかと思っていたら、そんな事もしていたのか。良くやった。偉いな」
タンジェリンは川岸から手を伸ばして、流れの中にいる俺の頭をよしよしと撫でてくれた。
タンジェリンは俺がどこに行っていたか、本当に知らないのだろうか。ただ微笑む彼の優しい顔に、隠し事の影などいっさい見当たらない。
「父さん、俺、またその女の子に会いたい。彼女、物凄く困ってるんだ。だから助けに戻りたいのに、ユーリシエスが忘れろって言うんだ」
「そうか。でもそれは、ユーリシエスがアーサーのことを心配しているからだ。そんなにボロボロになってまで人を助けたいアーサーを、彼は助けたいんだ」
「大きなお世話だ」
「かもしれない。だけど、きっと後で感謝するだろう」
「しない! ユーリシエスになんか、絶対に感謝しない! 元いた場所に戻してくれるまでは、許さない!」
「じゃあそう伝えようか?」
「あ、うん。頼むよ」
タンジェリンも、本当は城か世界樹にいる筈の人員だ。俺、ちょっと迷惑をかけている。
しょうがないので今は普通に振る舞って新しい服に着替え、家に帰ってエリスと一緒にフルーツジュースを飲んだ。
タンジェリンは、すぐに出かけて行ってしまった。
俺はしばらくエリスに見張られたが、部屋で眠り始めるとキッチンに行ってくれた。
その隙に起きだして、迷宮に向かった。
2・
咲夜との契約は生きていて、今も遠くて薄くなったといえども彼女の感情が伝わってくる。
俺を呼び出そうとしている気配はあるものの、最初の時みたいには道が通じない。契約まで交わしたのに、あの時と今では何が違うのだろうか。
咲夜はとても焦っている。俺も、必要な時に傍にいれない不義理にイラつく。
でも、また呼び出された時のために、こちらで物質をまとめて仕入れられるチャンスでもある。
俺は前向きに捉える事にした。だからオゼロのシルバー迷宮に潜り、雑魚だろうがボスだろうが徹底的に狩り始めた。
家に帰らずろくに眠らず、三日が経過した。
すると魔物を独り占めする不届き者扱いされたので、別の迷宮に移動した。
そこでまた二日間頑張っていると、とうとう保護者が出現した。
寝不足の俺はエリスの眠りの呪文に対抗できず、倒れた。
目覚めた時には俺の部屋のベッドに入っていて、様子を見に来たのかプリムベラが傍に立っていた。
「アーサー君、最近どうしたの? なんだかヤケになってるようだけど」
「ヤケって……忙しいだけだよ。食料と武器と防具と魔石を集めたいんだ」
「まるで戦場に出る兵士みたいね。今のアーサー君は、そんな感じよ。でもこの世はもう平和になったのよ? アーサー君が戦う必要なんてどこにもないんだから、安心して」
「できない。俺は……みんなを助ける。そのために今は休んでられない。もう行くよ」
また寝間着だと思いつつ普段着を探してみたが、周囲に見当たらない。タンスの中にもない。
エリスに聞きに行くと、しばらく外出禁止と言われてしまった。そんな馬鹿な。
言うことを聞く訳もない俺は可愛らしい寝間着のまま出かけ、近所の森の果実と木の実の収穫を開始した。
最初は保存食を全部食べ尽くしたからかと思われていたようだが、俺がどんどん採っているとストップがかかった。
ストップをかけにきたのは、今にも爆笑し出しそうなユリアヌスだ。
「笑うな! こっちは必死なんだよ!」
「いやいや、さすがの俺もあのレオンをウサギの格好でイチゴ摘みに出かけさせた事はないからな」
「はあ、そうですか。問題が分かってるなら話は早い。服を寄こせ」
「俺のサイズだとブカブカだろうに。子ウサギちゃん」
「上着でいいからくれ」
頼みつつ奪いに行くと、彼は空間収納から彼の新しい上着を取り出してくれた。それに、ここじゃ獲れない果物も分けてくれた。
「おい、どういう風の吹き回しだ? 明日は豪雨が降る」
「一応、ユーリシエスから聞いている。色々と大変なんだろう?」
俺は、ようやく理解者に出会った。
収穫作業を中断して、俺がどこに行っていたか、何をしていたか教えた。
神石を取り出して見せてみると、ユリアヌスはふーんと言った。
「本当らしいな。その姪っ子ちゃんを助けたいのか」
「当たり前のことを聞くな。俺の姪っ子だぞ!」
「前々世の姪っ子なんて、もう関係なくないか?」
「ユリアヌスは本当に冷たい奴だな。だったら十数代前の前世の友人なんて捨てておいて、全て滅したら良かったか」
あの時のことを思い出し、どんな思いで助けたと思ってるんだと怒りがこみ上げた。
そしたらユリアヌスは、俺の頭を撫でようとした。俺は回避した。
「俺たちは、無茶をするアーサーを放っておけないだけだ。精霊の二十歳なんか、赤子と同じだぞ? お前もさあ、赤子が剣を持って戦いに行くって言ったら絶対に止めるだろうに」
「俺は赤子でも子供でもない。もう十分に使える体を持っている。だから……呼ばれたら行く」
「うん? 契約でもしたのか?」
「……」
地面を見つめて答えないでいると、ユリアヌスは大きくため息をついた。
「あのなあ。子供という意味が理解できないのか? 体の見てくれは大きくても中身はまだまだ成長の途上にあって、今時期の無理は存在自体に響く可能性がある。だからもう、出かけたら駄目だ」
「じゃあ、大人だったら良かったのかよ」
「ああ。個人の判断に任せる」
今の自分が子供な原因の、トーマとして死んだ事が、物凄く憎らしくなった。
「じゃあ、ユリアヌスが代わりに行ってくれ。子供の俺は留守番する」
「分かった。それで大人しくするなら、俺が代わりに行ってやる。神石を寄こせ」
「……良いのか? 本気か?」
「俺はお前に恩返しをしていない。だから、これで恩返しできるというなら行ってやる。ユーリシエスを締め上げてな」
悪役ぽい笑顔のユリアヌスが、本気っぽいと感じた。
「じゃあ、じゃあ頼む」
「分かった」
俺はユリアヌスに神石を渡した。ユリアヌスは笑いながら瞬間移動して消えた。
俺は取り残されたけれど、これでいいと思った。ユーリシエスも、親父のユリアヌスの言葉なら聞くだろうし。
イチゴ摘みを中断して家に帰ると、タンジェリンが庭先でソワソワしていた。
「その上着は、タロートに貰ったのか?」
「うん。いや、ユリアヌスに貰った」
「そうか。後でお礼を言わないとな。今は家に入りなさい」
「……うん」
しょうがないと自分に言い聞かせた。
キッチンで手を洗ってから自分の部屋に戻り、ウサギ以外の寝間着に着替えてベッドで横になった。
目を閉じ、もう大丈夫だと自分に言い聞かせようとした。でも……納得できる訳がない!
俺も行きたいと必死になって咲夜に念を飛ばし続けていると、不意に体が軽くなった。
誰かがいると思って目を開けて振り向くと、一瞬だけアルスノバの姿が見えた。
そして次の瞬間には、そこに立っているのは咲夜になった。
「咲夜! 俺を呼び出してくれたのか!」
床に座っていた俺は立ち上がり、咲夜に飛び付いた。
咲夜は俺を、しっかりと抱き締めてくれた。
「叔父さん! 何度も何度も呼んだのに来ないから、もう諦めてたのよ! 今まで何やってたの!」
「俺がここに来られたのは、アルスノバが力を貸してくれたからだ。咲夜の力だけじゃ、俺を異世界からは呼び出せないんだ」
「え? でもその──」
咲夜の話し声がかき消される轟音が、地響きと共に襲いかかってきた。
「なんだこれ!」
「戦争よ! 聖地に、人間たちが来てるの!」
六日間ほどのブランクが、最悪な状況下で効果を発揮してしまった。戦いの回避とか戦場の変更とかの工作が、全然出来なかったなんて酷い。
岩山内部から外を確認すると、はるか向こうの上空に見える飛空艇団から砲撃されている。そしてどうやら、手前の森まで敵が迫っているようだ。武器のぶつかり合う音が聞こえる。
俺が行かないとと覚悟を決めた。赤子でも子供でも、そんなの関係ない。
「咲夜は後方支援をしてくれ! 俺は前線に出る!」
「あのね、だけどさっき来た人が、アーサー叔父さんは戦わせるなって言うのよ」
「さっき来た人?」
俺の疑問は、森の奥で木々ごと大地が破壊される光景と音でいくらか解消された。
「さっき来た人って、この黒い上着と似たデザインの服を着用した、黒髪長髪の細身で背の高いイケメン?」
空間収納から、俺が身に着けたら短めのコートになってしまう上着を取り出して聞いてみた。
「あ、うん。その人」
「咲夜が呼んだ?」
「アーサー叔父さんを呼んでたら来たの」
「……」
アルスノバの雑な支援をどう考えるべきだろうと、悩んでしまった。
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