転生魔王と麒麟の勇者

海生まれのネコ

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一章 転生魔王

4 麗しの君

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1・

次の現場に行こうとして、オープンカフェの壊れたテーブルに隠れるように女子高生が数名いて、僕を見ているのに気付いた。

目撃されてしまったと反省したが、悔いはない。
が、一人がスマホをこちらに向けているのに気付いた。録画されたか。

どうしようと震えながら、動揺を見せないようにニッコリ笑って彼女たちに近付いた。

さすがにあんな戦いをしたので、同じ人間としても怖いのだろう。全員が身じろぎせず固まっている。

「もう大丈夫だよ。この周辺は……見た通りに僕が安全確保をしたからね。だからほら、そこから出てきて立ち上がって」

僕は、これ以上ない愛想良さでスマホを構える彼女に向けて手を差し伸べた。
あわよくばスマホを頂くために。

しかし一瞬のち、彼女以外の全員が僕の手を握りしめるか胴にすがりついてくるかして、結果として遠ざかってしまった。
かといって泣き叫び出した彼女らを捨てておく訳にいかないので、早く次の現場に行きたいなあと思いつつも、笑顔で対応した。

頭撫でたり背中撫でたり握手しまくったり。キスしてとせがまれてしまったのは困ったので、それは遠慮した。

しかしその成果があり、スマホを構える女子は撮影を止め、とうとう僕らに合流してくれた。
みんな無事で良かったと感動した。
で、スマホをこっそりいただこうとしたら、その彼女が涙目になり言った。

「みんな、あなたのことを白馬の王子様って呼んでます。私も、これからそう呼んでも良いですか?」

「みんな?」

誰もそんなこと言ってないと、周囲を見回した。

数秒後、気付いた。録画ではなく、中継だったのだと。

僕は次の現場があるからと叫んで彼女らを押し離し、脱兎のごとく逃げ出した。

もう後先考える必要はないと、開き直った!

2・

僕はそのまま隣接する区画の戦闘に飛び込んでいき、責任者出てこいと叫んでぶちのめした。攻撃魔法を遠慮なく使用したので、竹刀でも問題ない。

次も隣接する場所に行き、夜までにどうにか安全地帯を増やそうと躍起になった。普通に、自棄とも言う。

夕方、暴走気味の僕は駅を中心とした半径五キロ圏内を入手できた。
さすがに魔力が枯渇してきたので、そのまま帰宅した。

ただいまと言って玄関ドアを開けて叔父さんと目が合ってから、自分がこっそり抜け出して叔父さんの制服をズタボロにしている事実に気付いた。

夜、先に風呂に入って着がえてから、一家四人で食卓を囲んだ。
何か言いたそうな三人を前に、僕は料理を褒めて大盛りご飯を頂いた。
食事が終わりかけてから、姫が言った。

「お兄ちゃん、どこ行ってたの?」

「ん? どこも行ってないよ?」

いや行ってただろという三人の視線。

「私、スマホで動画見てたの」

「ふうん」

「お兄ちゃんにとてもよく似た人が、怪しい人たちを倒していくところ」

「それは、ただ似てるだけだよ」

「じゃあ龍馬。なんで俺の制服をズタボロにした?」

叔父さんの言葉に、答えられずに黙ってしまった。

「龍馬ちゃん、私の白馬の王子様になってくれる?」

「おい、止めろ」

叔母さんの願いに、叔父さんが本気でツッコミ入れてくれた。
もういてられないのでごちそうさまと言って食器を流しに持っていき、手を掻い潜り自分の部屋に逃げた。

スマホが怪しく点滅しているが、見る勇気がない。

ベッドに潜り込み、そのまま寝た。

3・

夜中に目覚めると、暗い部屋の隅で僕のスマホを視ている陸君が座っていた。

「驚いた」

「何にですか」

「いや、色々と」

「私も色々と驚きましたよ。まさか半日でこんな状況になるとは」

「どうなってるんだ?」

知らないのでベッドから出て、陸君からスマホを受け取った。
あくびしながらベッドに座り、陸君が見ていた情報サイトの文書を読んでみた。

襲撃者は、魔界からやって来た魔人たち。かつて魔界を支配した魔王の生まれ変わりを発見して連れ戻るために、異次元間の移動が可能な門を通過してやって来た。
全員が仲間という訳では無く、およそ十二の国の手下たちがやって来ていて、われ先に争い魔王の身柄を確保しようとしている。

魔王は人間として生まれ、一度死ぬか死ぬほどのショックを与えることで覚醒し、魔王としての力を取り戻す。
目覚めさせてから、身柄を確保した国が彼を王にするのだとか。

「何故こんなことを」

「どの部分の問題ですか?」

「元々の国王はどうするんだろう」

「そこですか。一歩下がって部下になり、転生魔王に国を繁栄させてもらおうと願っているようです」

「普通の支配者の考えることじゃないな。そんなにすんなりとトップを諦められるものなんだろうか」

「時と場合によりますよ」

「ふうん……」

答えてから、家の周囲にかけた憶えのない物理と魔法防御の術がかかっているのに気付いた。僕が寝ている間に何かあったようだ。

「あの、陸君、家を護ってくれてありがとう」

「構いません。あなたが暴れなけりゃ、私が今頃町で暴れていましたし」

「やっぱり、見捨てておけないもんなあ……」

とりあえず事情は理解できたものの、魔王復活が一度殺される話限定なのはいただけない。
間違って、別の高校生が殺されたらどうするんだ。

「よし、魔王を探そう。先に確保したらいいんだ」

「ですよね」

何だか、陸君の視線が生暖かい。

「ええと、高校生ぐらいの……男子なのか? 他の特徴の情報っと……」

スマホを操り、検索してみた。

僕が寝ている間も対策をしていた人たちが、全国に向けて漏らした情報によると。

魔王は、高確率で男子高校生。
家庭環境に不幸がある場合が。
今は普通の容姿かもしれないが、覚醒すると七色の髪を持つ絶世の美男子となり、あらゆる女性を虜にして味方につける能力を持つ。
魔界の誰よりも膨大な魔力を持っているので、下手に逆らっては駄目。
心優しい。とても長寿。

「これだけ? 誰だろう。目星つけられないな」

「は?」

陸君が物凄い睨みを効かせてくる。

「陸君は心当たりが?」

「それは難しい質問ですね」

「やっぱり分からないよなあ。町をうろついて探すしかないか」

覚醒前とはいえ、見たら気付けるかもしれない。
でも陸君が不満げな顔をしている。

「それは止めた方が……いえ、外に出るのも有りですね。ご一緒しますよ」

「一緒に行ってくれるのか。ありがとう!」

「とりあえず窓を開けて見て下さい」

何だろうと思いつつ、カーテンを開けて窓を開いて外を見た。
真夜中なのに黄色い悲鳴が耳をつんざいた。
窓を閉め、カーテンも閉めた。

「彼女らは、どうしてここに?」

「何をしたか、ご自身で思い出して下さいね?」

陸君は笑顔で行った。僕は、色々と思い出してみた。
叔父さんがノックしてきたので、陸君に隠れてもらって扉を開けた。
僕の無事を、確認したかっただけらしい。
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