水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?

ラララキヲ

文字の大きさ
2 / 29

2>> 理由

しおりを挟む
-




 この世界には火・水・風・土・光の五属性の魔法があります。
 火を極めれば岩を溶かし、水を極めれば海をも凍らせ、光を極めれば昼間を暗闇にすることもできます。
 しかしそこまでの事が出来るのは貴族の血を持つ者だけ。平民が使える魔法はとても弱く、手のひらの上で使えれば良い方だそうです。

 ですが、全員が五属性を使えます。
 使えて当然の世界だと思われています。

 それなのに。
 そんな世界で……

 わたくしは『水の魔力だけ』を持って生まれてきました。


 パーシバル侯爵家の二番目の子として産声を上げたわたくしを、抱き上げた医師が魔力の流れからその異変に気付いて、その後の正式な鑑定をもっ
『この子には水属性の魔力しか宿っていません』
と断言されたと聞きます。その時の事は今でも地獄の始まりだったとお父様は言っていました。
 わたくしは“完璧を求める貴族の世界にあるまじき『欠陥品』”として生まれてきたのです。
 
 母はその事が心労となり、産後の体調不良と合わせて体を更に壊して、ほとんど赤子のわたくしを抱く事なく、二年後には亡くなったそうです。
 一歳上のお兄様は母が亡くなったのはわたくしの様な欠陥品が生まれてきたからだとわたくしを嫌い、お父様に『あんなのはさっさと捨ててくれ』と泣いて訴えたそうですが、お父様は『あんな出来損ないでも私とリンナ(母)の正式な血を引く子供に間違いないのだから勿体無い』と、わたくしを育ててくださいました。

 欠陥品でも出来損ないでも、わたくしには父であるガレリオ・パーシバル侯爵当主と元伯爵令嬢である母リンナの血が入っているのです。
 皆はわたくしではなく、わたくしの“血”から生まれる子、わたくしが産むであろう“子供”に期待しているのです。

 『血は問題ないのだから次はまともなものが生まれてくるはずだ』と。

 ですからわたくしはワゼロン侯爵家の嫡男・カッシム様の婚約者となりました。パーシバル侯爵家とワゼロン侯爵家を繋ぐ為の政略結婚です。わたくしが欠陥品だろうとカッシム様の血があればまともな子供が生まれてくるだろうと皆が信じているのです。
 ……信じているというよりも、『まともな子が産まれなければは無かった事にすれば良い』と考えていると言った方が正しいですね……


 わたくしには、わたくしの体の中に『流れている血』と『子宮』にしか価値が無いのです。

 この体に流れる貴族の血にしか…………

 流れる…………

 あら? 流れるって言えば水ですわね?

 水も血も同じような……ような……

 あら? ……………あら……?




-
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。

下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。 豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。 小説家になろう様でも投稿しています。

素直になる魔法薬を飲まされて

青葉めいこ
ファンタジー
公爵令嬢であるわたくしと婚約者である王太子とのお茶会で、それは起こった。 王太子手ずから淹れたハーブティーを飲んだら本音しか言えなくなったのだ。 「わたくしよりも容姿や能力が劣るあなたが大嫌いですわ」 「王太子妃や王妃程度では、このわたくしに相応しくありませんわ」 わたくしといちゃつきたくて素直になる魔法薬を飲ませた王太子は、わたくしの素直な気持ちにショックを受ける。 婚約解消後、わたくしは、わたくしに相応しい所に行った。 小説家になろうにも投稿しています。

留学してたら、愚昧がやらかした件。

庭にハニワ
ファンタジー
バカだアホだ、と思っちゃいたが、本当に愚かしい妹。老害と化した祖父母に甘やかし放題されて、聖女気取りで日々暮らしてるらしい。どうしてくれよう……。 R−15は基本です。

今、私は幸せなの。ほっといて

青葉めいこ
ファンタジー
王族特有の色彩を持たない無能な王子をサポートするために婚約した公爵令嬢の私。初対面から王子に悪態を吐かれていたので、いつか必ず婚約を破談にすると決意していた。 卒業式のパーティーで、ある告白(告発?)をし、望み通り婚約は破談となり修道女になった。 そんな私の元に、元婚約者やら弟やらが訪ねてくる。 「今、私は幸せなの。ほっといて」 小説家になろうにも投稿しています。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

レイブン領の面倒姫

庭にハニワ
ファンタジー
兄の学院卒業にかこつけて、初めて王都に行きました。 初対面の人に、いきなり婚約破棄されました。 私はまだ婚約などしていないのですが、ね。 あなた方、いったい何なんですか? 初投稿です。 ヨロシクお願い致します~。

心が折れた日に神の声を聞く

木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。 どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。 何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。 絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。 没ネタ供養、第二弾の短編です。

王家も我が家を馬鹿にしてますわよね

章槻雅希
ファンタジー
 よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。 『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。

処理中です...