生まれた時から「お前が悪い」と家族から虐待されていた少女は聖女でした。【強火ざまぁ】

ラララキヲ

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番外☆オルドラン編

17>> 広がるもの 

        
       
        
        
       
       
 ワッツとガゼルがアルを呼ぶことが増えて、アルは自然とオデットと離れる時間が増えた。
 あんなに母の側に居たかったのに、あの感情は何だったのかと思う程に今は自然と離れることができていた。ワッツとガゼルと、それからその二人から紹介されてできた新しい友人たち。遊び時間に人目も気にせず服が汚れるのも気にせずマナーも気にせずに遊ぶことの楽しさをアルは直ぐに夢中になった。
 そして家に帰ればオデットが優しく温かく迎えてくれる。そのことがアルを嬉しくさせた。離れていても『母はここに居る』んだと安心感を持てた。そしてこの家にはアルを迎え入れてくれる人がオデット以外にもちゃんと居て、『ここはアルの居場所』なんだと教えてくれる。家の中にいる人の数は侯爵家の時とは比べ物にならない程少ないのに、今の家の方が何倍も安心できるとアルに思わせてくれていた。ここに居る大人は皆自分アルを守ってくれる。自分アルの心を大事にしてくれる。自分アルを『侯爵家の跡取り』としてではなく『一人の人』として見てくれる。その安心感が、アルの心にゆとりを持たせてくれていた。

 そんなある日、ワッツが嬉しそうに言った。

「今度やっとフレッドさんの剣術指導に参加させてもらえることになったんだ!」

「今まで子供は危ないからって見てるだけだったもんな~」

 ワッツの話に自然にガゼルも話し出す。仲の良い兄弟は何時も一緒だから会話も掛け合いのようだった。

「アルのお陰だぜ!」

「え? 僕の?」

 何のことか分からず聞き返したアルにワッツがキラキラさせた瞳で目を合わせた。

「俺たちはまだ小さいから剣を覚えるのは早いって言われてたけど、アルはもっと小さい頃から教えてもらってたんだろ? それを言ったらフレッドさんも言い返せなくなってさ! しかも俺たちの場合は手習いとかじゃなくて生活に関わってくるじゃんな! 遊びじゃなくて本気だって言ったんだよ!」

「教えてくれなきゃアルに聞くって言ったのも良かったよね!」

「基礎ならアルから聞けるもんな!」

 そう言って笑った二人をアルは少しだけ驚いた顔をして見返していた。そういえば剣を触ったことがあるかとかの話をしたなと思い出す。
 そうか平民の子供は剣を習わないのかとこの時初めてアルは知った。自分は紳士教育の一環として教わっていたから取り立てて興味が湧くものでもなかったから。でも思い返してみればワッツやガゼルをはじめ村の少年たちは村の警備をしてる男たちを見かけるといつも興奮して見ていた。カッコイイと言っていたのはフレッドの見た目やここでは珍しいつかさやの見た目のことを言っているのかと思っていたけれど、もしかしてあれは『剣を腰に下げている男の姿』への憧れから漏れた言葉なのかもしれないとここに来て初めてアルは思い至った。アルにとっては騎士は人の上に立つ人たちではなく後ろで控えている使用人たちと同じ立ち位置だったから、『憧れる』なんて感情を向ける対象であったことが驚きだった。

「当然アルも行くよな?」

「え?」

 ワッツに振られた言葉に驚く。そんなアルの顔をガゼルが楽しそうに覗き込んだ。

「知ってるって言ったって、体動かさなきゃアルだって忘れちゃうだろ? 大人になって使えなきゃ意味ないもんな! 忘れる前に俺たちにも教えてくれよ! そしたら将来、村に悪者が出た時には皆で剣持って撃退しようぜ! 
 最強の三騎士! なんてな!」

「三騎士っ?! いいな、それ!!」

「この村を護る英雄だぜ!」

「強過ぎて王都から人が来ちゃったりして!!」

 キャアキャアと盛り上がるワッツとガゼル兄弟のノリにいまいちついていけないアルが愛想笑いで付き合いながら二人の話を聞いていた。剣は別に好きでも嫌いでもない。でも体は動かしたいなと思った。それにこの村で生きていくなら万が一のことも考えて戦う術は必要だ。ワッツからの誘いを断る理由はないと思った。
 ただ少しだけ……フレッドとどう接すればいいだろうかと思った。

 それはオデットも似た思いだった様で、アルがフレッドが指導する集まりに参加すると聞いた時にはとても複雑そうな顔で笑っていた。
 でも、ダメだとは言わなかった。
 戸惑いながらも、怪我しないようにね、と背中を押してくれた。
        
       
       
       
       
           
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