聖力を奪われたので、まぁいいかと力を上げたら文字通り弾け跳んだ話

ラララキヲ

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2>> なんか来た 

     
 
 
 
 
 
 そんな私の平穏の中に突然異物が投げ込まれた。

「キアラ! 会いたかったわ!!」

 突然そう言って抱き着かれて心底驚いた。

「だ……、誰?」

 そう聞いた私に、抱き着いてきた女性は心底傷付いたと言わんばかりの表情で驚いた。

「まぁ?! 少し離れていただけで親友の顔を忘れるなんて酷いわ?! 私よ! メリッサよ! あんなに仲良くしてたじゃない! 本当にキアラは薄情なんだから! 酷いわ!!」

 涙を流して騒ぐメリッサと名乗った女に、私は村に居た子どもたちの顔を思い出す。メリッサは私を嫌っていた女子だ。だけどこんな顔だったっけ?

「メリッサ……なの?」
「そうよ!! 思い出してくれた?!」
「え……私の知ってるメリッサと顔が違うような……」
「まぁ酷い! 親友の顔を本当に忘れてしまったのね!! 私は昔からこの顔よ?! キアラと離れてから成長したから少し印象が違うかも知れないけれど、大人になっただけで全然私は変わってないわよ!」

 そう言うメリッサの顔は、私が覚えている顔よりも確実に美人になっていた。
 
 
 
 
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 王都の教会に突然メリッサが押し掛けてきてから私の生活は少し変わった。
 メリッサが私の“親友”だと言い張る所為で周りの人たちが気を利かせてメリッサを私の側付きにしてしまったのだ。最初の数日はメリッサはお客様みたいなものだったのに、気付けばメリッサは元々居た私専属の侍女の立場を押しやってそこに居座ってしまった。『幼い頃からの親友だから、私の方がキアラのことを知っている』、そう言って私の周りから人を遠ざけているようだった。

「私たちって親友だったっけ?」

 そう聞くと直ぐにメリッサは泣いて騒いだ。

「なんでそんな酷いこと言うの?! 聖女になったら昔の友達はもう要らないってこと?! 王都に出たらそんなに偉いの?! キアラはそんな子じゃないでしょ!!」

 気付けば私が悪いことになっていた。
「幼馴染は大切にしなきゃ」
「心配してここまで来てくれた親友は大事にしなきゃダメよ」
「聖女になっても平民だった頃の意識はなくしちゃ駄目だ」
「自分を愛してくれる人は大切だよ」
「王都に出て来て気持ちが大きくなっちゃったんだね。自分の生まれが辺境の村だったとしても、それを恥だと思っちゃいけないよ。それは傲慢な考え方だ」
「聖女なら仲間にこそ親切にしなきゃ」
 みんな私が何も言ってないのに色々言ってくるようになった。親友どころか友達でもなかったはずなのに、それを聞くことすらダメなのか? なんだか面倒臭いことになってきたぞ?
 そう思っていた私にメリッサが近付いてきた。

「ねぇキアラ。私アナタにプレゼントがあるの」

「プレゼント?」

「そう。プレゼント!
 喜んでね。私とお揃いよ!」

 そう言ってメリッサは2個の腕輪をポケットから出した。銀色の腕輪は全く同じデザインの細いリングだった。よく見るとそれぞれに石が一つ付いていた。赤と緑。そして赤色の石の付いた腕輪をメリッサは私の腕に勝手に着けた。

「こっちはキアラに、そしてこっちは私の」

 おたがいの左手首に腕輪を付けるとメリッサは自分の左手で私の左手を握った。

「これで私たち、“ずっと一緒ね”!」

 メリッサがそう言うと腕輪の石がどちらも光って、そして銀の腕輪は私の腕の太さに合わせてサイズを変えて、完全に固定されてしまった。

「えぇ~……何これ?」

 腕から取れなくなった腕輪に私は不満を漏らす。でもメリッサは凄く良い笑顔で
「腕輪よ。バカね」
と笑った。

「もう二度と外せないわよ。アナタと私はこれで。アナタは私で、私はアナタ。この意味分かる?」

 意味のわからないことを言い出したメリッサに私は顔をしかめて見返した。

「……何言ってるの?」

 そう聞くとメリッサは人の悪い笑みを浮かべてフフフと笑った。

「直ぐに分かるわよ、おバカさん♡
 アナタが間抜けで良かったわ」

 そう言ってメリッサは立ち去った。性格が悪いと思っていたけれど思っていた以上に意地が悪くて苛立った。

「間抜けじゃないわよ。何事も“気にする必要がない”のよ、私は」

 だって聖女だから。
 メリッサの居なくなった方を向いて私は不快感を吐き出すように呟いた。

 先代聖女様はもう居ない。
 寿命で天へと帰られた。
 だから今、“私”を理解できるのは私だけ。

 聖女をどうするかを決められるのも私だけ。
 そのことに気付いているのも“私”だけなことに、私は少しだけため息を吐いた。
 
 
 
 
 
         
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