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5>> 利害の一致
しかしやっぱりこの言葉は皆の怒りを買うようで、デービッド様は額に血管を浮かべるほどに怒りの表情になった。
「まだ言うか!? この悪女が!! どこまで嘘を吐き続ければ気が済むんだ!!
お前は聖女ではない!! 真の聖女はメリッサだ!! この詐欺師め!!
お前との婚約など破棄だ!! 真の聖女がメリッサならば、俺の婚約者はメリッサだ!! 同じ平民であっても雲泥の差だな!! キアラのような女よりメリッサの方が断然俺の妻に相応しい!!!」
嬉しそうにそう言うデービッド様を見て、あぁやっぱり顔か……と思った。この王子は身分が平民がと騒いでいたがやっぱり見た目が一番気になっていたんだなぁとしみじみ思った。
メリッサは昔と違ってとても美人だ。どうやって今の顔になったのかは分からないけれど、発言を聞いている限り中身は私の知っているメリッサみたいなので、何かしらの手段を使って顔を変えたのだろう。デービッド様は身分が平民でもメリッサが良いと言っているのだから、やはり女は顔なのだと思った。
まぁ私もデービッド様が好きだったかと聞かれれば全くなんとも思っていなかったので、どうでも良いんだけれど。
そんなことをしみじみ考えているとメリッサが私に顔を近付けて小声で囁いた。
「アンタが王子様と結婚なんて分不相応なのよ。聖女ってだけでも許せないのに。
デービッド様は私が好きなの。聖女の力も私が上手く使ってあげるから、アンタはさっさと退場しなさいよ。国外追放くらいにしといてあげるからさ」
そう言われて思ったのは、『国外追放なら、まぁいいか』だった。
聖女を騙った罪で牢屋に入れられたり最悪処刑だと言われたら抵抗しようかと思ってたけど、国外追放なら別に困ることもないからまぁいいかなと思った。
私は平民だし、十歳の頃から教会にいたから隣国の教会にでも行けば何も困らない。
今の感じだと、腕に着けられたこの腕輪の影響で聖女の力がメリッサに少し盗まれている感じがする。でも全部の力を盗られている訳では無い。私自身が力を使えなくなっている訳ではないから国境に捨てられても魔物や盗賊に会っても負けることもない。
むしろメリッサに立場を譲れば聖女としてのごたごたからも解放されて、自由にできるかも……
そう思ったらメリッサの話がとても魅力的に見えた。
自分を嫌っているデービッド様のお飾りとはいえ妻をやるのは結構嫌な気持ちになっていたのもある……
聖女じゃなくただの聖職者になって、聖女の責任から解き放たれて“個人”に戻る……
あぁ、それはいいかも知れない…………
黙って考えていた私の耳に顔を近付けてメリッサが小声で囁く。
「私ね、ずっと前からキアラが嫌いだったの」
その言葉に私も首を縦に振った。
「私も。メリッサが苦手だったよ」
「はぁ?!」
私の言葉にメリッサがオッサンのような声を出したけど、私は気にせずに言葉を続けた。
「メリッサが言うように、聖女はメリッサがやった方がいいと思う。私も自分が聖女だなんて似合わないなって思ってたから」
「アンタ……」
「国外追放なら私も普通に生きていけると思うの。国を護るとか私にはちょっと責任が重すぎるって思ってたから。
メリッサには聖女を任せちゃうけど、メリッサがやりたいんだもんね? 私もやりたい人がやればいいと思うから、譲ってあげる。
聖女、頑張ってね!」
何かを言い出しそうなメリッサの言葉を待たずに私はメリッサに聖女の力を受け渡す気持ちで力を向けた。全部は上げられないけどギリギリまでは譲る気持ちで聖女の力を使う。
その感覚が伝わったのかメリッサが口を開いた。
「キアラ……」
その瞬間。
パンッ!!!!!!!!
凄く軽い音を立ててメリッサが弾け跳んだ。
ビチャッ!!!
弾けた音の後に聞こえたのは水が飛び散る音だった。
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