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突然浮上した妻の不貞行為……と言っていいのかも分からない可能性にロッチェンが青褪め唇を震わせる。
そんな父親に、アリーチェは困った様に眉尻を下げて苦笑した。
「最初の顔合わせの時からルナリアは居たではありませんか。お父様も居られましたでしょ?」
「さ、最初は、だ」
「最初はわたくしも、婚約者との顔合わせに妹が居ても気になりませんでしたわ……」
「そういえば……グリドくんとお前の初めての顔合わせの時にルナリアも同席させるべきだと言ったのもサバサだったな……
あの時はてっきり仲間外れにされるルナリアがかわいそうだからだと思っていたが……まさかそれがずっと続いていたとは…………」
ロッチェンはさすがに思うところがあるのか顎に手を当てて考えるようにアリーチェから視線を外した。
そんな父をジッと見つめながらアリーチェは続ける。
「最初の頃はグリド様も怪訝な表情をされておりましたもの。何故婚約者となる相手の妹がずっと同席しているのかと……
ですが回数を重ねると気にされなくなり、その内にわたくしよりルナリアの顔を見た時の方が嬉しそうにされるようになりましたわ……
そしてある時ルナリアが遅れた時がありましたの。
別にルナリアが常に居る必要など本来ならありませんから、妹が居ない事の方が普通の筈なのですけれど、グリド様はルナリアが居ないことを残念にされていましたわ……
あれもきっとお母様の計算だったのかもしれないと……、後で気づいたのです。
男性を落とす駆け引きというものがあると耳にしたことがありますもの」
「…………」
アリーチェの話に流石にロッチェンも何も言えなくなる。だがアリーチェの話は終わらない。
「お母様はずっとずっと、わたくしに長女だから姉だからと我慢だけを強いてきましたわ。
愛された事もなく、理由の分からぬ憎しみをぶつけられるだけ……
物心付いた頃から嫌われていたのですもの。
『生まれた事自体を疎まれている』と考える方が自然ではありませんか?
そして、その理由を考えた時に……
お母様がお父様とは違う男性に犯されてわたくしが出来てしまったからお母様はわたくしを毛嫌いしてるんだと考えれば、全ての辻褄が合うのです」
「そ、そんな…………」
ロッチェンはその可能性に全身の血の気が引くのを感じた。
そんな父を労るように、アリーチェは少しだけ微笑む。そして……
「お父様のショックはよく分かります。
けど一番ツラいのは……わたくしでもなく……
無理矢理に男に犯されて子供まで産むことになったお母様ですわ……」
アリーチェははっきりと言い切った。
それがただの憶測には到底聞こえないような声の強さで。
「あぁ、サバサ……」
突然浮上した妻の秘密にロッチェンは顔を両手で覆って下を向いた。
あり得ない、と言えないのは昔の事過ぎるからだ。実際に起こった事だとすればアリーチェの生まれる前の出来事になる。しかも事が事だけに人知れず行われた行為だろう。そんな事を昔からいる使用人に聞いても覚えてもいないどころかそもそも知ってもいないだろう。誰かが知っていればロッチェンの耳に入る。
「ですからお父様……いえ、エルカダ侯爵閣下。
わたくしをこの家より除籍してください」
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突然浮上した妻の不貞行為……と言っていいのかも分からない可能性にロッチェンが青褪め唇を震わせる。
そんな父親に、アリーチェは困った様に眉尻を下げて苦笑した。
「最初の顔合わせの時からルナリアは居たではありませんか。お父様も居られましたでしょ?」
「さ、最初は、だ」
「最初はわたくしも、婚約者との顔合わせに妹が居ても気になりませんでしたわ……」
「そういえば……グリドくんとお前の初めての顔合わせの時にルナリアも同席させるべきだと言ったのもサバサだったな……
あの時はてっきり仲間外れにされるルナリアがかわいそうだからだと思っていたが……まさかそれがずっと続いていたとは…………」
ロッチェンはさすがに思うところがあるのか顎に手を当てて考えるようにアリーチェから視線を外した。
そんな父をジッと見つめながらアリーチェは続ける。
「最初の頃はグリド様も怪訝な表情をされておりましたもの。何故婚約者となる相手の妹がずっと同席しているのかと……
ですが回数を重ねると気にされなくなり、その内にわたくしよりルナリアの顔を見た時の方が嬉しそうにされるようになりましたわ……
そしてある時ルナリアが遅れた時がありましたの。
別にルナリアが常に居る必要など本来ならありませんから、妹が居ない事の方が普通の筈なのですけれど、グリド様はルナリアが居ないことを残念にされていましたわ……
あれもきっとお母様の計算だったのかもしれないと……、後で気づいたのです。
男性を落とす駆け引きというものがあると耳にしたことがありますもの」
「…………」
アリーチェの話に流石にロッチェンも何も言えなくなる。だがアリーチェの話は終わらない。
「お母様はずっとずっと、わたくしに長女だから姉だからと我慢だけを強いてきましたわ。
愛された事もなく、理由の分からぬ憎しみをぶつけられるだけ……
物心付いた頃から嫌われていたのですもの。
『生まれた事自体を疎まれている』と考える方が自然ではありませんか?
そして、その理由を考えた時に……
お母様がお父様とは違う男性に犯されてわたくしが出来てしまったからお母様はわたくしを毛嫌いしてるんだと考えれば、全ての辻褄が合うのです」
「そ、そんな…………」
ロッチェンはその可能性に全身の血の気が引くのを感じた。
そんな父を労るように、アリーチェは少しだけ微笑む。そして……
「お父様のショックはよく分かります。
けど一番ツラいのは……わたくしでもなく……
無理矢理に男に犯されて子供まで産むことになったお母様ですわ……」
アリーチェははっきりと言い切った。
それがただの憶測には到底聞こえないような声の強さで。
「あぁ、サバサ……」
突然浮上した妻の秘密にロッチェンは顔を両手で覆って下を向いた。
あり得ない、と言えないのは昔の事過ぎるからだ。実際に起こった事だとすればアリーチェの生まれる前の出来事になる。しかも事が事だけに人知れず行われた行為だろう。そんな事を昔からいる使用人に聞いても覚えてもいないどころかそもそも知ってもいないだろう。誰かが知っていればロッチェンの耳に入る。
「ですからお父様……いえ、エルカダ侯爵閣下。
わたくしをこの家より除籍してください」
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