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7>> 疑惑・3
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さらに浮上してきた『妻の不倫の可能性』がロッチェンに追い打ちをかける。
「……それこそ、尚更この家に……お父様やルナリアの側にわたくしが居ることは出来ませんわ…………」
「……そん、……な…………」
サバサが不倫したかもしれない……
サバサが自ら自分以外の男に体を許したかもしれない……
その可能性に、ロッチェンは目の前が暗くなる思いだった。
そんなショックを受けている父にアリーチェは優しく声をかける。
その眼差しは、本当に、心から父親を思っている様だった……
「……大丈夫ですわお父様。
ルナリアにはグリド様が居てくれます。むしろわたくしがこのままルナリアの側に居ては、それこそルナリアの心の負担となりますわ。
あの子は優しい子ですもの。わたくしがあの子の側にいれば、あの子はずっと『姉の婚約者を寝取った女』のレッテルを貼られて生きなければならなくなりますわ。
そんなことになる前に、お父様の血を引かないわたくしを、この家から除籍してくださいませ。
わたくしの事は心配いりません。
ムルダ伯父様にお手紙を出しました。2、3日もすれば迎えに来てくださいますわ」
「なっ?! ムルダに知らせたのか?!」
ロッチェンの混乱した頭に更に混乱しそうな事を言われてつい大声を出してしまった。
ムルダとは妻サバサの兄だ。今は家を継いでイフィム伯爵当主をしている。
驚く父のそんな反応にアリーチェは不思議そうに小首を傾げた。
「えぇ、当然お知らせしましたわ?
だってわたくしを引き取って欲しいとお願いするのですもの、その理由を話さないことには理解してもらえませんもの」
「なんということを……」
手で顔を覆ってしまった父にアリーチェは不思議そうに聞き返す。
「間違ってはおりませんでしょう?
むしろわたくしがこの家に居ることが間違っているのです。
わたくしはお父様の血を引いてはおりませんが、お母様のお腹の中から生まれてきたことには間違いがありませんもの。でしたらわたくしは間違いなくイフィム伯爵家の血は引いておりますわ。
ですから少しだけイフィム伯爵家にお世話になろうと思いますの」
「ま、待ってくれ……」
決定事項のように話すアリーチェにロッチェンはついて行けない。話を整理する間も与えてくれない娘にロッチェンはそんな言葉しか返せなかった。
そんな父にアリーチェは寄り添うような優しい声をかける。
──あぁ、かわいそうなお父様……妻に裏切られていた事も知らずに今まで他の男の血を引く娘を育てていたなんて……それすらも知らずに生きていたなんて……かわいそうに……嘘吐きな妻で、汚れた妻で、他人の手垢の付いた女が貴方の妻だなんて……かわいそうに……──
そんな声が聞こえてきそうな同情に満ちているかのように思わせるアリーチェの声音に、ロッチェンの頭はただただ混乱した。
そんな父を理解しているかのようにアリーチェは優しく声を掛ける。
「こんな話を突然されて、混乱されているのはわかりますわ。
ですがお母様の為にも、伯父様が来るまでにはわたくしの除籍処分状を用意しておいて下さいませ。
お母様が、これ以上、“自分を無理矢理に犯した男”の娘の顔を見て、心を傷付けずに済むように……」
さもそれが事実かのように話すアリーチェの言葉を、ロッチェンは否定することすら出来なくなっていた。
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さらに浮上してきた『妻の不倫の可能性』がロッチェンに追い打ちをかける。
「……それこそ、尚更この家に……お父様やルナリアの側にわたくしが居ることは出来ませんわ…………」
「……そん、……な…………」
サバサが不倫したかもしれない……
サバサが自ら自分以外の男に体を許したかもしれない……
その可能性に、ロッチェンは目の前が暗くなる思いだった。
そんなショックを受けている父にアリーチェは優しく声をかける。
その眼差しは、本当に、心から父親を思っている様だった……
「……大丈夫ですわお父様。
ルナリアにはグリド様が居てくれます。むしろわたくしがこのままルナリアの側に居ては、それこそルナリアの心の負担となりますわ。
あの子は優しい子ですもの。わたくしがあの子の側にいれば、あの子はずっと『姉の婚約者を寝取った女』のレッテルを貼られて生きなければならなくなりますわ。
そんなことになる前に、お父様の血を引かないわたくしを、この家から除籍してくださいませ。
わたくしの事は心配いりません。
ムルダ伯父様にお手紙を出しました。2、3日もすれば迎えに来てくださいますわ」
「なっ?! ムルダに知らせたのか?!」
ロッチェンの混乱した頭に更に混乱しそうな事を言われてつい大声を出してしまった。
ムルダとは妻サバサの兄だ。今は家を継いでイフィム伯爵当主をしている。
驚く父のそんな反応にアリーチェは不思議そうに小首を傾げた。
「えぇ、当然お知らせしましたわ?
だってわたくしを引き取って欲しいとお願いするのですもの、その理由を話さないことには理解してもらえませんもの」
「なんということを……」
手で顔を覆ってしまった父にアリーチェは不思議そうに聞き返す。
「間違ってはおりませんでしょう?
むしろわたくしがこの家に居ることが間違っているのです。
わたくしはお父様の血を引いてはおりませんが、お母様のお腹の中から生まれてきたことには間違いがありませんもの。でしたらわたくしは間違いなくイフィム伯爵家の血は引いておりますわ。
ですから少しだけイフィム伯爵家にお世話になろうと思いますの」
「ま、待ってくれ……」
決定事項のように話すアリーチェにロッチェンはついて行けない。話を整理する間も与えてくれない娘にロッチェンはそんな言葉しか返せなかった。
そんな父にアリーチェは寄り添うような優しい声をかける。
──あぁ、かわいそうなお父様……妻に裏切られていた事も知らずに今まで他の男の血を引く娘を育てていたなんて……それすらも知らずに生きていたなんて……かわいそうに……嘘吐きな妻で、汚れた妻で、他人の手垢の付いた女が貴方の妻だなんて……かわいそうに……──
そんな声が聞こえてきそうな同情に満ちているかのように思わせるアリーチェの声音に、ロッチェンの頭はただただ混乱した。
そんな父を理解しているかのようにアリーチェは優しく声を掛ける。
「こんな話を突然されて、混乱されているのはわかりますわ。
ですがお母様の為にも、伯父様が来るまでにはわたくしの除籍処分状を用意しておいて下さいませ。
お母様が、これ以上、“自分を無理矢理に犯した男”の娘の顔を見て、心を傷付けずに済むように……」
さもそれが事実かのように話すアリーチェの言葉を、ロッチェンは否定することすら出来なくなっていた。
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