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アリーチェは部屋を片付けていた。
もうこの家に居るつもりはない。
何を言われようとも出て行くと決めたのでアリーチェはメイドと一緒に自分の荷物を整理していた。
もう必要な物は鞄に詰め終わった。残りをどう片付けようかと思案していた時、アリーチェの部屋の扉がノックもなく開いた。
「アリーチェ! 何をやっているの!」
母サバサだった。
「貴女にお休みを与えた覚えはありませんよ! 早く今日の仕事に取り掛かりなさい!」
そう騒いだサバサはアリーチェの部屋を見て一瞬驚いた顔をして動きを止めた。
「お母様……」
アリーチェが衣装部屋の前で突然押しかけて来た母親を振り返って、少しだけ面倒臭そうな顔をした。それに直に気付いたサバサは怒り顔を更にムッとさせてアリーチェを睨む。
「遊んでいないで早く執務室へと行きなさい! 全く、何をやっているのかしら!」
「お母様。わたくしは次期当主を外されたのです。そんなわたくしがこれ以上この家の仕事に関わるのはおかしいですわ。わたくしの仕事は次期当主となるルナリアの仕事です。
彼女が覚える邪魔をする訳にはいきませんわ」
そう言ったアリーチェにサバサは更に目を釣り上げた。
「何を言っているの! この家の仕事は貴女の仕事でしょ!!」
「はい?」
胸を張って怒鳴る母にアリーチェは呆れた顔で聞き返してしまった。
家の仕事は『当主』の仕事だ。次期当主から降ろされたアリーチェからすれば、もう自分の手を離れたようなものだ。なのに母は何を言っているんだ、とアリーチェは思った。
しかしそんなアリーチェの反応が更にサバサの怒りを刺激したのか、サバサは顔を赤くしてアリーチェを睨んだ。
「まさか次期当主じゃなくなったからって仕事をしなくていいなんて考えていないでしょうね! 貴女は当主の仕事をする為に育ってきたのです!
その仕事をさせてあげると言っているですからちゃんとやりなさい! 当主はルナリアになりますが、あの子はその為の勉強は何一つしてこなかったのですから、それを助けるのは姉として当然でしょう!!」
母がはっきりと口にした言葉にアリーチェの心はスッと白ける。やはりこの人は……とアリーチェの視線が到底母親に向けるそれではなくなりそうになった時、控えめにその場に投げられる言葉があった。
「あ、あのう……
イフィム伯爵がいらっしゃいました……」
おどおどとしたメイドのその声から伝えられた言葉に、アリーチェはバッと母親から顔を逸して伝えに来たメイドの方を見た。
「まぁ! もういらして下さったのね!!」
そう言うとアリーチェは大きな鞄を持って小走りで部屋を出て行った。アリーチェの後をメイドが一人、もう一つの鞄を持って追いかけて行く。
その後ろ姿をポカンとした顔で見送ってしまったサバサがハッと我に返った顔をすると、
「アリーチェ! どこへ行くの!!」
と言って追いかけて行った。
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アリーチェは部屋を片付けていた。
もうこの家に居るつもりはない。
何を言われようとも出て行くと決めたのでアリーチェはメイドと一緒に自分の荷物を整理していた。
もう必要な物は鞄に詰め終わった。残りをどう片付けようかと思案していた時、アリーチェの部屋の扉がノックもなく開いた。
「アリーチェ! 何をやっているの!」
母サバサだった。
「貴女にお休みを与えた覚えはありませんよ! 早く今日の仕事に取り掛かりなさい!」
そう騒いだサバサはアリーチェの部屋を見て一瞬驚いた顔をして動きを止めた。
「お母様……」
アリーチェが衣装部屋の前で突然押しかけて来た母親を振り返って、少しだけ面倒臭そうな顔をした。それに直に気付いたサバサは怒り顔を更にムッとさせてアリーチェを睨む。
「遊んでいないで早く執務室へと行きなさい! 全く、何をやっているのかしら!」
「お母様。わたくしは次期当主を外されたのです。そんなわたくしがこれ以上この家の仕事に関わるのはおかしいですわ。わたくしの仕事は次期当主となるルナリアの仕事です。
彼女が覚える邪魔をする訳にはいきませんわ」
そう言ったアリーチェにサバサは更に目を釣り上げた。
「何を言っているの! この家の仕事は貴女の仕事でしょ!!」
「はい?」
胸を張って怒鳴る母にアリーチェは呆れた顔で聞き返してしまった。
家の仕事は『当主』の仕事だ。次期当主から降ろされたアリーチェからすれば、もう自分の手を離れたようなものだ。なのに母は何を言っているんだ、とアリーチェは思った。
しかしそんなアリーチェの反応が更にサバサの怒りを刺激したのか、サバサは顔を赤くしてアリーチェを睨んだ。
「まさか次期当主じゃなくなったからって仕事をしなくていいなんて考えていないでしょうね! 貴女は当主の仕事をする為に育ってきたのです!
その仕事をさせてあげると言っているですからちゃんとやりなさい! 当主はルナリアになりますが、あの子はその為の勉強は何一つしてこなかったのですから、それを助けるのは姉として当然でしょう!!」
母がはっきりと口にした言葉にアリーチェの心はスッと白ける。やはりこの人は……とアリーチェの視線が到底母親に向けるそれではなくなりそうになった時、控えめにその場に投げられる言葉があった。
「あ、あのう……
イフィム伯爵がいらっしゃいました……」
おどおどとしたメイドのその声から伝えられた言葉に、アリーチェはバッと母親から顔を逸して伝えに来たメイドの方を見た。
「まぁ! もういらして下さったのね!!」
そう言うとアリーチェは大きな鞄を持って小走りで部屋を出て行った。アリーチェの後をメイドが一人、もう一つの鞄を持って追いかけて行く。
その後ろ姿をポカンとした顔で見送ってしまったサバサがハッと我に返った顔をすると、
「アリーチェ! どこへ行くの!!」
と言って追いかけて行った。
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