前世を思い出したのでクッキーを焼きました。〔ざまぁ〕

ラララキヲ

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12>> 困惑 

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「あの……、陛下のお使いの方が何故こちらに……?」

 ルイーゼがおずおずと質問する。
 突然押しかけてきて国王の名を出したのだ、尋常じんじょうではないことは確かだろうとルイーゼは思った。
 男たちのリーダーだと思われる男が改めて周りを見渡して硬い声で話し出す。

「今からお伝えする事は他言無用に願います」

「はい」

 ルイーゼは恐れながら返事を返し、侍女たちは生唾を飲み込みながら大きく縦に首を振った。
 それを見て男は口を開く。

「……ジャスティン殿下がお倒れになりました」

「「「「え?」」」」

 その場に居た全員が息を呑んだ。 
 第一王子殿下が……倒れた……?
 言われた言葉を直ぐに受け止めることができずにルイーゼは慌てて聞き返した。

「たっ?! 倒れたとはどういうことですか?!
 ジャスティン様は無事なのですか?!」

 青い顔をしてそう必死に聞き返してきたルイーゼに男たちは何とも言えない顔をする。

「我々には分かりません。
 我々は陛下から、クッキーを作ったとされるルイーゼ様の元へ行き確認しろと指示を受けただけですので」

「か、確認……?」

「ま、まさか……」

 何かに気づいたかのように侍女サリーが青い顔をして口元を手で押さえた。

「……殿下が倒れられたのはカミラ様との茶会の席での事。その時殿下が口にした物は王宮勤めのメイドが淹れたお茶とカミラ様が持ってきた焼菓子だけでした」

 それを聞いてハンナがバンと大きな音を立ててテーブルに手を置いた。

「まさか、クッキーに毒が仕込まれていたなどと言われるのですか?!」

 そのハンナの言葉にメイドたちが更に青褪めて悲鳴じみた声を上げる。

「そんなっ?!」

「無理ですわ!!」

 女性たちから非難の視線を浴びて、男たちは視線を鋭くした。

「それを確認する為に我々が来たのです」

 その言葉は理解できる。できるが……

「でも……」

 ハンナが受け入れられずにそう零した。
 戸惑いしか見せない女性たちに鋭い視線を飛ばしながら王宮からの使者は仕事を始める為に質問を始める。

「カミラ様が王宮へ持ち込んだクッキーと同じ時に作ったクッキーはどれですか?」

 その質問にルイーゼが視線を揺らす。
 その反応に使者の男は眉間にシワを寄せた。

「……あの……」

 戸惑いながらルイーゼは口を開く。

「正直にお話し下さい」

 使者の声は更に厳しくなった。
 後ろめたい事がなければ素直に全てを話せば良いのだ。言い辛い事があるとするならばそれは……
 使者たちがそう思った時、ルイーゼが困った顔で使者たちを見ながら口を開いた。

「……食べました。
 クッキーは皆のお腹の中です……」

 少し恥ずかしげに頬を染めたルイーゼに使者たちの目は一瞬だけ点になる。そして周りの侍女たちに目を向ければ、全員が少しだけ恥ずかしそうに視線をらした。

「……ここに残っている物は?」

 まだテーブルの上に並べられているクッキーや、籠に詰められている他の焼菓子を指しながら使者は質問する。

「これはカミラが出て行った後から新しく焼いた物ですわ」

 ルイーゼは答える。
 恥ずかしいと思ったのは使者たちが来る前に皆で結構な数のクッキーを食べたからだ。どうせ誰も来ないのだからとムシャムシャポリポリと、皆でお喋りをしながら好きなだけお菓子を食べたのだが、それは淑女としてはとても恥ずかしい行為なので、ルイーゼも侍女たちも使者の男性を相手にそれを知られるのはどうしても羞恥心を感じてしまうのだった……




 
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