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5>>ティナリア13歳
しおりを挟む「声が変わりましたね」
「変かな?」
「とんでもない! 素敵ですわ」
カハル様が1年近く侯爵家の領地に帰られていた会えない時間に、カハル様は声変わりされていた。
まだ少しかすむ声でも素敵な声であることがわかってとてもくすぐったい。
声変わり前の声も素敵でしたけれど、低く大人の声に近づこうとしているカハル様の声は、耳がくすぐったくなるくらいに素敵。
わたくしは嬉しくて顔が緩むのを止められなかった。
「みんなに笑われるかな?」
自分の喉元を触りながら心配げに話すカハル様に直ぐ様「そんな事はありません!」と否定する。
「みんなきっと素敵だと言いますわ! 直ぐにハル様の声にみんな馴染みますわよ」
「ティナは僕の前の声と今の声、どちらが好き?」
そんな意地悪なカハル様の質問に、わたくしは口元に手を置いて微笑み返す。
「そんなの。“ハル様の声が好き”、に決まってますわ」
「はは、ありがとう」
「ふふふ」
そんなやり取りをしながら、わたくしたちは久しぶりの再会を楽しんだ。
「……お姉様? そろそろわたくしたちもそちらに行ってもよろしいかしら?」
後ろから控えめなアリシュアの声が聞こえてきてわたくしは振り返る。アリシュアの声が聞こえたカハル様は少し驚いた顔をして声のした方を見た。
「えぇそうね。
カハル様、婚約者同士のお茶会はここまでにして、次は“家族みんな”でのお茶会にしませんか?」
わたくしの突然の提案にカハル様は驚いた顔をした後、直ぐに破顔した。
「もちろん!」
カハル様のその声で、隠れて待っていたアリシュアとセッドリー様が笑顔でやって来る。
すぐに用意された席について、メイドが用意するお茶を待たずに2人一斉にカハル様に会えなかった時の話を聞き始めた。
少し困りながらもそれに答えるカハル様と楽しそうなアリシュアとセッドリー様の様子を見て、わたくしは心から幸せを感じていた。
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