[BL]わたくしと婚約者と妹とその婚約者の話

ラララキヲ

文字の大きさ
22 / 23
後日談

(22)>>■ 新しい人生

しおりを挟む
──ルジオン(カハル)視点




 母国の西の隣国へ渡って直ぐに、闇市で『色変え液』を買った。
 飲むと半年間全身の色を変える事が出来る薬だ。難点は『髪と瞳の色を別々には染められない』という事だが、俺たちはまず何よりも皆に知られている髪色を変える必要がある為に、迷うことなくその薬液を飲んだ。
 色は二人とも同じ『紺色』にした。カハル▪▪▪の金髪とセッドリー▪▪▪▪▪の赤髪から離れた色なら何色でも良かった。

「……髪と目の色が変わるだけでなんか全然違う人になった気分だ……」

 宿屋の備え付けの鏡に映った自分をまじまじと見つめてセッドリーの名前を捨てたリオン・・・が独り言の様に呟いた。

「似合ってるよ」

 リオンの後ろから鏡を覗いて笑いかける。
 二人で並んで鏡に映ると、髪も瞳も同じ色になった俺たちはパッと見、本物の兄弟に見えた。

「ルジ兄はなんか渋さが出たな……」

「そうか? 自分じゃ分からないな」

 リオンにそう言われて、前髪を弄りながら鏡をジッと見た。髪の色が金髪から紺色になると違和感が凄い。見慣れないが鏡を見る事も滅多にないので自分で気になる事は無い。
 ふと気付くとリオンが鏡の中から俺をジッと見ている視線に気付いた。俺も鏡の中のリオンをジッと見る。

「これで堂々と兄弟だって言えるな」

「……ずっと兄弟▪▪でいくのか?」

 少し不安そうになったその顔に苦笑する。

「……もっと離れた場所に着いたら止めても良いな。

 ……そしたら“恋人”と名乗ろうか?」

 鏡の中のリオンの目を見てそう告げる。
 リオンは途端に赤くなって口をへの字に曲げた。

「そっ! そこまでしなくていいよ! 俺たちは相棒▪▪だろ!!」

 恥ずかしがってるのが分かって楽しくなる。クッ、と笑いを零した俺にリオンは照れ隠しに怒った顔をしてみせる。そんな反応が可愛くて、楽しくて、俺はその可愛い顔を手を添えてその唇を奪った。

「………っ、おい!」

「一生の相棒だよな、俺たち」

 鼻先が触れ合いそうな距離で囁く。元は赤かったリオンの目は今は光を受けると青く揺らめく。その目をジッと見つめる俺の目もきっと今同じ色をしているだろう。その事が嬉しかった。

「……どっかいけって言われたって離れねぇからな……」

「言わないよ」

 照れ隠しなのかおかしな事を言うリオンに喉の奥で笑って否定しておいた。

「…………っ」

 もう一度その唇に口付ける。
 リオンの体温を感じる為にその体を抱きしめて口付けを深くした。
 背中に回されるリオンの腕に自然に口元には笑みが浮かぶ。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

優秀な婚約者が去った後の世界

月樹《つき》
BL
公爵令嬢パトリシアは婚約者である王太子ラファエル様に会った瞬間、前世の記憶を思い出した。そして、ここが前世の自分が読んでいた小説『光溢れる国であなたと…』の世界で、自分は光の聖女と王太子ラファエルの恋を邪魔する悪役令嬢パトリシアだと…。 パトリシアは前世の知識もフル活用し、幼い頃からいつでも逃げ出せるよう腕を磨き、そして準備が整ったところでこちらから婚約破棄を告げ、母国を捨てた…。 このお話は捨てられた後の王太子ラファエルのお話です。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

私は愛する人と結婚できなくなったのに、あなたが結婚できると思うの?

あんど もあ
ファンタジー
妹の画策で、第一王子との婚約を解消することになったレイア。 理由は姉への嫌がらせだとしても、妹は王子の結婚を妨害したのだ。 レイアは妹への処罰を伝える。 「あなたも婚約解消しなさい」

どうか溺れる恋をして

ユナタカ
BL
失って、後悔して。 何度1人きりの部屋で泣いていても、もう君は帰らない。

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

婚約破棄を傍観していた令息は、部外者なのにキーパーソンでした

Cleyera
BL
貴族学院の交流の場である大広間で、一人の女子生徒を囲む四人の男子生徒たち その中に第一王子が含まれていることが周囲を不安にさせ、王子の婚約者である令嬢は「その娼婦を側に置くことをおやめ下さい!」と訴える……ところを見ていた傍観者の話 :注意: 作者は素人です 傍観者視点の話 人(?)×人 安心安全の全年齢!だよ(´∀`*)

《完結》僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ

MITARASI_
BL
彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。 「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。 揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。 不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。 すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。 切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。 毎日更新

処理中です...