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しおりを挟む父はわたくしに家督を押し付けるように継がせると母と一緒に別邸に閉じこもるようになりました。
そんな両親を心配したわたくしは二人に伝えました。
「生きている内に楽しまないと後で大変ですよ?」
と、本当に心配して声を掛けたのですが、母と父は一層蒼ざめた顔をして泣き出してしまいました。
そうしてわたくしや使用人たちのことを振り切って、二人で教会へと信徒として入ってしまわれました。
悪魔に頼った後で神に頼ったとして、神様は振り向いて下さるのでしょうか?
そんなことよりも、残りの人生を死後のことは忘れて遊び歩き楽しんだ方が良いと思うのですが、両親はお金を出すと言うわたくしの言葉を振り切って、教会での祈りの人生を選ばれてしまいました。
仕方なくわたくしは教会に多額の寄付をして両親を頼みました。
「神様が寛容であれば良いですね」
そう独り言ちたわたくしの頭に、
──だったら悪魔は生まれないって~──
という言葉が響いた気がしましたが、……きっと気の所為ですわね……
それから……
わたくしは驚くほどに平凡で、平穏な時間を送ることができました。
わたくしの周りには信頼できる使用人と愛する夫、そしてその夫の両親でありわたくしの義両親である、優しくてお人好しな家族が居ました。
お人好しなのに駄目なことは駄目だと泣いて怒ったりするお義母様に、わたくしは『理想の母』を見た気がしました。
そんなわたくしのお腹の中で新しい命が元気に動きます。
その温かさを撫でながらわたくしは夫に言いました。
「この子は女の子なの」
「え? 分かるのかい?」
驚く夫にわたくしは笑いました。
「えぇ、そうよ。わたくしには分かるの。
……ねぇ? この子の名前、わたくしが付けてもいいかしら?」
突然そんなことを言い出したわたくしに、夫は少しだけ目を開いて驚いた顔をした後、柔らかく笑ってわたくしの頬を撫でてくれました。
「ベアトリーチェがいいのならいいよ。
なんて付けたいんだ?」
そう問われてわたくしは幸せの中で笑いました。
「この子の名前は、“エカテリーナ”。
わたくしはこの子を、他人を思いやれる、好き嫌いなく何でも食べる子に育てるの」
そんな事を言ったわたくしに夫は笑いました。
「俺の血を引いちゃってるからな。
きっと大食いな令嬢に育っちゃうなぁ!」
そう言ってワハハと笑う夫に釣られてわたくしも笑いました。
──ねぇ、エカテリーナ
早く貴女に会いたいわ
わたくしは貴女にたくさんの世界を見せたいの……
この広い世界で、貴女にたくさんの好きなことと嫌いなことを知ってもらいたいの……
ねぇ、エカテリーナ
今度はちゃんと愛して上げるからね……──
[完]
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みんなの感想(10件)
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読んで頂きありがとうございます^^
生まれた子(元妹の魂)が『異常に甘やかされるのを嫌がる子』にならないかとかちょっと心配しちゃいますね😅「休むのも大事よ」とか言われても「甘やかさないで!」って怒ったり😅『生まれ変わりの影響』がないといいのですが😅
『2度目の人生』はまだ常識を知ってる両親と父方の祖父母に使用人がいるので大丈夫だとは思いますが🤭きっと今度は自分が『姉』の立場かもしれませんしね😁
読んで頂きありがとうございます^^
『漫画』で描くなら名前まで奪ってしまってもいいかもしれませんね。でも小説で名前まで奪うと、ただでさえややこしいのに更にどうなってるのか分からなくなりそうです😅笑
『ファイル(の中身)に別のファイルを上書き保存した』と想像していただければと😅『変わってない』のに『全然違うもの』という扱いです🤔
読んで頂きありがとうございます^^
この両親は元より『娘可愛い愛おしい』の感情よりも『娘を可愛がり大切にする自分素晴らしい素敵な親な自分☆』に酔っていたので、『そんな子供の為に頑張った自分を不幸にするなんてそれが可愛い子供だとて許せない!』という感覚になるんだと思います😱