赤い剣と銀の鈴 - たそかれの世界に暮らす聖霊の皇子は広い外の世界に憧れて眠る。

仁羽織

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賢人マーリン・ネ・ベルゼ・マルアハ

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 「よし、できました。これで船の位置がわかるはずです。」

 結局、一時間ほどかかって測量装置が完成した。僕は操舵席でそう言って、できあがった測定装置の真上に手をあてた。

 「上空へ!」

 手をあてながらそう言うと、ガラスカバーの中で地図がどんどんと動いていった。船の模型もある程度まで小さくなっていき、ある程度のサイズで位置を示すピンに変わる。やがて地図が平面から円状になり、その真ん中には船の位置を示すピンがささっていた。

 「どうでしょう。」

 僕がそう聞くと、ジョジロウさんがまず誉めてくれた。

 「たいしたもんだ。これならバッチリだ。」

 マーリンさんは、微笑んでいる。ベントスがガラスカバーにのって中をしげしげと眺めていた。レイミリアさんはまだキャビンでお尻を抑えて動けないようだ。

 「で、どっちに向かって行くんだ?」

 「そこも任せてください。」

 僕はそう答えて、今度はカバーの横に手を置いてこう言った。

 「目標、海の精霊」

 すると、ピンが刺さったところが移動しはじめる。その動きに合わせて地図の海面上にまっすぐな赤い線が引かれ、船がいるピンから、目的の場所までをつないでいった。

 「どうでしょうか、これ。」

 「いいんじゃないか、おい!これでバッチリだ。」

 ジョジロウさんがそう言う脇で、マーリンさんは感心したようにうなづいている。

 「これはどうやって海の精霊の場所を特定できているの?」

 感心しながらマーリンさんは僕にそう聞いてきた。

 「そこは、じつはベントスのおかげなんです。母が最初にベントスにあった時の話を思い出して、精霊がどういう形で存在しているのかを、ついさっき教えてもらったところなんです。そのおかげで今までなんでこんな何もないところに出てきてたのかも分かりました。」

 そうして僕はマーリンさんとジョジロウさんに、詳しい仕組みを説明した。本来、精霊は実態をもたずに霧散している。けれど一応は本体となる核みたいなところが存在していて、それはだけど目には見えない粒子の集まりで移動を繰り返している。

 その核のある場所に、これまで銀鈴は連れてきてくれていたということなんだが、僕らにその知識がなく、何も見つけられないまま移動をしてしまったり、逆に精霊も移動を繰り返しているので、それで見つからなかったということらしい。

 そこで今度は、その居場所を特定できるように、この船の現在地を特定できる測定装置に組み込んだというわけだ。まあ、銀鈴でイメージして願っただけなので中がどうなって実現できているのかは知らない。

 そこまで話すと、今度はマーリンさんが感心したように声をあげた。

 「すごいわね、モリトの技術って。中でも銀の鈴は本当に超科学の産物なのね。」

 僕はその言葉を聞いて、とても誇らしかった。

◇◇◇

 操舵室でジョジロウさんが舵をとり、船は目的の場所を目指して進んでいた。波はそれほど高くなく、風もほとんどない。クルーザーの推進力は、後方につけられた二枚のプロペラと、前方でバランスをとりながら噴き出す海水の力で得られている。プロペラはエンジンにつながっている。そして前方で噴き出している推進器も、エンジンの力で回るタービンを動力にして動いていた。

 時間にして、どれくらい進んだんだろう。今回もジョジロウさんが青い扉を使って、船内の時間は緩やかに流れている。力を使いながらもジョジロウさんの意識には、外で流れる時間の経過がリアルタイムで伝わるらしい。それでエンジンを休めるタイミングを測れるようだ。僕は、船に何かあった時にすぐ動けるよう、後部のベッドルームで少し眠ることにした。

 その間に船内のキャビンでは、レイミリアさんがマーリンさんに色々なことを聞いていた。キャビンから後部のベッドルームはすぐなので、声が聞こえてくる。

 「生まれてからの百年は、だいたいわかったわ。けどすごいわね、西暦十五年とかって、まだ人類が石器とかで戦っていた時代でしょ?」

 「私の中ではあなたの方がすごいと思ってます。あれだけしっかりと世界の歴史を教えてきたのに、もうすっかり忘れてしまったんですね。」

 大きくため息をつくマーリンさん。僕も人類史はあまり得意じゃなかったけど、石器が使われていたのがもっとずっと昔だってことは知っている。けど、巻き込まれるのは嫌だから口を挟まないことにした。

 「西暦がはじまるずっと昔、紀元前のおよそ八千年前から新石器時代というのがはじまりました。確かに石器時代の終わりは、はっきりとは断定できません。なのでレイミリアさんの言うことも間違いとは言い切れませんね。今でもまだそうした生活を続けている人々もいるみたいですから。」

 「そっか。大変だね、そういう人たちも。」

 たぶん、今一番大変な思いをしているのはレイミリアさんの相手をしているマーリンさんだ。とは、言わないでおく。

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