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聖霊たちの軌跡
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僕とジョジロウさんは、ジョジロウさんの足が治ってすぐ、念のためということで僕の母の元へ向かった。しかし結局、ミカエラの言うとおりだった。母はベントスを呼び出してはおらず、そもそも自分が昔つけた名前さえ覚えていなかった。
「猫ちゃんって呼んでたから。それに名前つける時も、ルミネさんがなんか難しい名前にしてって言って、一回だけしか呼んでないから。」
だそうだ。
しかたなく城に戻り、僕らは王の間へと向かう。部屋の前までついたときに、レイミリアさんとマーリンさんにバッタリと会った。
「ミラク、聞いてよ。ネ・ベルゼって泳ぎ上手なんだよ。」
レイミリアさんはそう言って黒兎のネ・ベルゼを両手でだきしめて言った。すると少し苦しそうにネ・ベルゼが言う。
「いい加減にしなさいよ!私はお湯とか水とか、そういうのにつかりたく無いんだって!」
クスッと笑ってマーリンさんが言った。
「はじめてお風呂に入った時も、そう言うからすぐ出なきゃいけなかった。これでようやく、のんびりとお風呂に入れます。ローマで過ごした時もせっかくのいいお湯が、ネ・ベルゼのせいで少しも楽しめなかったわ。」
「そんな千年以上前のこと今更よ!それよか早く私をこれから出してよ!」
そんなふうに王の間の前で大騒ぎしていると、中から父上が顔を出してきた。
「なんだか楽しそうだね。そういえば、レイミリアさん、風呂で銀の鈴使った?」
僕とジョジロウさんが二人してハッと目を合わせる。その間にレイミリアさんが父上に首を傾げて返事をしていた。
「いいえ。ネ・ベルゼが『今、銀の鈴なんか使うとアイツが来る』って言うので。」
それを聞いて父上は満足そうにうなづいてた。僕は少し困ったなって思って、銀鈴つかってミカエラを呼んじゃった事、なんて言ってごまかそうかなって考えていたら、ジョジロウさんがあっさりと父上に言ってしまう。
「それならミラクーロ坊ちゃんが呼び出して、今頃はまだ風呂に入ってると思いますよ。」
怒り狂う父上の形相を予想して、僕は小さくなって頭を抱えた。すると、
「ではちょうどよい。みんな中に入ってくれないか。ちょっとだけ内緒で話をしよう。」
と父上は言う。そして僕らは王の間に入り、おそらくはミカエラのために用意されただろう食事を囲んで話をすることになった。
◇◇◇
「このお魚すっごく美味しい!」
レイミリアさんが、ジョジロウさんがおろす魚の刺身を食べながら言った。父上からの話がはじまる前に、どうしても我慢できなくなったレイミリアさんが目の前に並んだ海鮮料理をこっそりと食べ始めてしまったため、それに気がついた父上が、そんなにお腹がすいているのならばと、ミカエラのために用意した食事を食べてもいいと言いだし、追加で調理場に料理を頼んだ。その注文に生の魚も食べたいとレイミリアさんが言い出し、城の調理人では生魚の調理になかなか手が回らないということで、ジョジロウさんがこの場で調理をすることになった。
「なるほど、これは確かに美味い。」
父上も満足した顔で魚の刺身を頬張っている。
「こいつは、生で食べても味がスカスカであんまり美味しくないんで、そういう時はこうやって昆布に巻いて少しおいとくんです。」
黒い割烹着をいつの間に用意したのか、ジョジロウさんがどこから見ても調理人といういでたちで、みんなの食事するテーブルの一角をつかって魚を三枚におろしながら言う。
「なるほどなるほど。ヨホの里から来た子だろう。なかなかいい料理人だね。」
父上の言葉にマーリンさんは少し首を傾げて、そしてコクンと頭を下げる。
「いろいろあったが、ヨホ・マノジ、ありがとう。おかげで青い扉の契約者も現れた。銀の鈴までついてきた。そしてミカエラ・アイオリアが登場し、ここまで順調にこれたよ。ネ・ベルゼまで付いてきたのはビックリしたがね。」
父上が笑ってマーリンさんにそう言うと、マーリンさんがかしこまって答える。
「フィリオス様を誤って封じようとして、返り討ちにあったところを救われた魂です。その恩を返せるなら、できるかぎりをさせていただきます。」
「それはありがたい言葉だね。おじい様にも感謝しなくては。これからもっと大変なことが起きると思うけど、できればこの者達の助けになっていただきたい。伝説の賢人と呼ばれたマーリン殿がヨホであったのであれば私も大変心強いよ。」
「ヨホ・マノジで結構ですよ。どうせおじい様から譲られた緑の書でお知りになられたんでしょうけど。ルミネ様にどのをつけて呼ばれると、なんだかまた大騒ぎが起きそうな気がして足がすくむ思いですわ。」
そうしてわははと笑いあう、父上とマーリンさん。仲がよさそうで、僕なんかが会話に入っていける感じじゃない。なので僕はその隣に座っている黒兎のぬいぐるみとレイミリアさんの話に耳を傾けることにした。
「でもさ、そうするとそのラ・シルフってモリトの精霊?そもそもモリトの精霊ってのが意味わかんないんだけど。」
「あんた、本当に物知らずなのね。モリトって言ったらモリトでしょ。ハバキとモリトがあるのは知ってるの?」
「それなら前にミラクにも聞いたし、ヨホからも聞いて少しは知っているよ。」
「だったら簡単じゃない。そのモリトの精霊がラ・シルフで、ハバキの方がド・ルヴィドよ。」
「だから、そこがわかんないんだって。モリトって何よ?」
「あなたさっき知ってるって言ったじゃないの?」
「ごめんごめん、聞いたことがあるって意味で知ってる。」
「もう、話にならないわ。知らない!」
なんだか、レイミリアさんがものすごくすごい人に思えてくる。ほんと、興味ないことだと頭に少しも残さないんだな。
「さて、それでは。そろそろお腹もいっぱいになりかけたころだろう。これ以上いっぱいになると今度は眠くなってしまうかもしれない。なのでそうなる前に、私の話を聞いてくれたまえ。」
父上がそう言って席を立ち、僕らを見た。心なしかいつもより真面目な顔をしている。
「まず最初に、礼を言っておこう。君たちが連れてきてくれたネ・ベルゼ殿こそが、私が長い間待ち望んでいた『たそかれの世界』とモリトを救う最後のピースだ。」
「猫ちゃんって呼んでたから。それに名前つける時も、ルミネさんがなんか難しい名前にしてって言って、一回だけしか呼んでないから。」
だそうだ。
しかたなく城に戻り、僕らは王の間へと向かう。部屋の前までついたときに、レイミリアさんとマーリンさんにバッタリと会った。
「ミラク、聞いてよ。ネ・ベルゼって泳ぎ上手なんだよ。」
レイミリアさんはそう言って黒兎のネ・ベルゼを両手でだきしめて言った。すると少し苦しそうにネ・ベルゼが言う。
「いい加減にしなさいよ!私はお湯とか水とか、そういうのにつかりたく無いんだって!」
クスッと笑ってマーリンさんが言った。
「はじめてお風呂に入った時も、そう言うからすぐ出なきゃいけなかった。これでようやく、のんびりとお風呂に入れます。ローマで過ごした時もせっかくのいいお湯が、ネ・ベルゼのせいで少しも楽しめなかったわ。」
「そんな千年以上前のこと今更よ!それよか早く私をこれから出してよ!」
そんなふうに王の間の前で大騒ぎしていると、中から父上が顔を出してきた。
「なんだか楽しそうだね。そういえば、レイミリアさん、風呂で銀の鈴使った?」
僕とジョジロウさんが二人してハッと目を合わせる。その間にレイミリアさんが父上に首を傾げて返事をしていた。
「いいえ。ネ・ベルゼが『今、銀の鈴なんか使うとアイツが来る』って言うので。」
それを聞いて父上は満足そうにうなづいてた。僕は少し困ったなって思って、銀鈴つかってミカエラを呼んじゃった事、なんて言ってごまかそうかなって考えていたら、ジョジロウさんがあっさりと父上に言ってしまう。
「それならミラクーロ坊ちゃんが呼び出して、今頃はまだ風呂に入ってると思いますよ。」
怒り狂う父上の形相を予想して、僕は小さくなって頭を抱えた。すると、
「ではちょうどよい。みんな中に入ってくれないか。ちょっとだけ内緒で話をしよう。」
と父上は言う。そして僕らは王の間に入り、おそらくはミカエラのために用意されただろう食事を囲んで話をすることになった。
◇◇◇
「このお魚すっごく美味しい!」
レイミリアさんが、ジョジロウさんがおろす魚の刺身を食べながら言った。父上からの話がはじまる前に、どうしても我慢できなくなったレイミリアさんが目の前に並んだ海鮮料理をこっそりと食べ始めてしまったため、それに気がついた父上が、そんなにお腹がすいているのならばと、ミカエラのために用意した食事を食べてもいいと言いだし、追加で調理場に料理を頼んだ。その注文に生の魚も食べたいとレイミリアさんが言い出し、城の調理人では生魚の調理になかなか手が回らないということで、ジョジロウさんがこの場で調理をすることになった。
「なるほど、これは確かに美味い。」
父上も満足した顔で魚の刺身を頬張っている。
「こいつは、生で食べても味がスカスカであんまり美味しくないんで、そういう時はこうやって昆布に巻いて少しおいとくんです。」
黒い割烹着をいつの間に用意したのか、ジョジロウさんがどこから見ても調理人といういでたちで、みんなの食事するテーブルの一角をつかって魚を三枚におろしながら言う。
「なるほどなるほど。ヨホの里から来た子だろう。なかなかいい料理人だね。」
父上の言葉にマーリンさんは少し首を傾げて、そしてコクンと頭を下げる。
「いろいろあったが、ヨホ・マノジ、ありがとう。おかげで青い扉の契約者も現れた。銀の鈴までついてきた。そしてミカエラ・アイオリアが登場し、ここまで順調にこれたよ。ネ・ベルゼまで付いてきたのはビックリしたがね。」
父上が笑ってマーリンさんにそう言うと、マーリンさんがかしこまって答える。
「フィリオス様を誤って封じようとして、返り討ちにあったところを救われた魂です。その恩を返せるなら、できるかぎりをさせていただきます。」
「それはありがたい言葉だね。おじい様にも感謝しなくては。これからもっと大変なことが起きると思うけど、できればこの者達の助けになっていただきたい。伝説の賢人と呼ばれたマーリン殿がヨホであったのであれば私も大変心強いよ。」
「ヨホ・マノジで結構ですよ。どうせおじい様から譲られた緑の書でお知りになられたんでしょうけど。ルミネ様にどのをつけて呼ばれると、なんだかまた大騒ぎが起きそうな気がして足がすくむ思いですわ。」
そうしてわははと笑いあう、父上とマーリンさん。仲がよさそうで、僕なんかが会話に入っていける感じじゃない。なので僕はその隣に座っている黒兎のぬいぐるみとレイミリアさんの話に耳を傾けることにした。
「でもさ、そうするとそのラ・シルフってモリトの精霊?そもそもモリトの精霊ってのが意味わかんないんだけど。」
「あんた、本当に物知らずなのね。モリトって言ったらモリトでしょ。ハバキとモリトがあるのは知ってるの?」
「それなら前にミラクにも聞いたし、ヨホからも聞いて少しは知っているよ。」
「だったら簡単じゃない。そのモリトの精霊がラ・シルフで、ハバキの方がド・ルヴィドよ。」
「だから、そこがわかんないんだって。モリトって何よ?」
「あなたさっき知ってるって言ったじゃないの?」
「ごめんごめん、聞いたことがあるって意味で知ってる。」
「もう、話にならないわ。知らない!」
なんだか、レイミリアさんがものすごくすごい人に思えてくる。ほんと、興味ないことだと頭に少しも残さないんだな。
「さて、それでは。そろそろお腹もいっぱいになりかけたころだろう。これ以上いっぱいになると今度は眠くなってしまうかもしれない。なのでそうなる前に、私の話を聞いてくれたまえ。」
父上がそう言って席を立ち、僕らを見た。心なしかいつもより真面目な顔をしている。
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