赤い剣と銀の鈴 - たそかれの世界に暮らす聖霊の皇子は広い外の世界に憧れて眠る。

仁羽織

文字の大きさ
29 / 41
精霊探し 水の精霊編

29

しおりを挟む
 「もう魚は食べ飽きたよー。さっさと見つけて終わらせて帰ろうよ。ねえ、ミラクー。」

 あれから一週間。僕らは今日もまた海にいる。お城での話し合いは結局あのまま、なんだかよくわからないで終わった。ミカエラが、自分のために用意された食事を僕らが先に食べたことが気に入らないと大騒ぎしだして、城の厨房はにわかに大忙し。ジョジロウさんまで駆り出されて、どこかの市場みたいに慌ただしくなっていった。

 僕は、料理が出てくるまでの間に、ミカエラに気がかりなことを聞いてみた。銀鈴が出てこなくなったことと、どうやったら使えるのかということをだ。浴室での言葉を思い返して、たぶん聞いてもたいした情報は出てこないだろうなと思っていたら、ミカエラは事も無げに簡単に答えを返してくれた。

 「呼び出す道具の形が、銀の鈴から白兎のぬいぐるみに変わっただけのことだ。何か願いがあればいつでも余を呼び出すがよい。」

 つまり、実質的に銀の鈴が使えなくなってしまったということらしい。なにせ使うたびに「なんでそんなことを願うのだ?」とか、「そいつは面倒な願いだな。であれば刺身の盛り合わせを十五人前ほど用意してもらおうか。」とか。とにかく面倒になった。そこを何とかしてもらいたくて頭を下げたり食事を振舞ったりいろいろなことをしたけど、結局どうにもならないまま最初の三日が過ぎた。

 僕らはとりいそぎ当初の目的通り、海の精霊を見つけてオウニへの道程を教えてもらわなきゃならない。それを知ったミカエラは、とんでもない敵対心をオウニって言葉に向ける。そのせいで更に交渉の余地がなくなってしまった。機嫌だけは食べ物で治ることもその時にわかった。ミカエラも美味しいものを食べると機嫌が直るタイプらしい。…面倒くささの度合いが道具の持ち主と道具の中身でものすっごく似ている。そうしてまた三日が過ぎた。

 で、ミカエラとレイミリアさんは似た者同士らしいことがわかったので、とりあえずレイミリアさんに銀鈴と同じように白兎のぬいぐるみ(ミカエラ)を使ってみてもらってみた。この二人、やっぱりとっても気が合うらしい。レイミリアさんが使うと問題なく銀鈴の効果が出た。ミカエラからいちいち煩いこと言われないで使えている。

 そうしてようやく七日目になって、太平洋に残してきたヨットの上に戻ってくることができた。前に僕が銀鈴で出した帆船だ。全長三十フィートで三角帆が自慢の、僕にしたら二週間ぐらいかけて船に関して色々調べて考えに考えて想像してた、最高傑作の船だ。けれど、船についてあちこち水浸しになっている様子を見たレイミリアさんに、あっという間に最初と同じ、エンジン式のクルーザーに変えられてしまった。

 「魚に飽きたなら、バーベキューやるか?イノシシ獲ってきたぞ。」

 ジョジロウさんがかなり大きなイノシシを担いで、海から上がってきた。後ろ足を持たれてぶら下がっているイノシシは、まだフゴフゴと鳴いている。着いてすぐ、船の底にある竜骨という部分に痛みがないか見に潜っていたんだけど、飛び込んだ直後にレイミリアさんが船を変えてしまったものだから、やることがなくて漁でもしてたんだろう。どうしてイノシシを獲ってこれたのかは考えたくもない。たぶん、青い扉で何かしたんだろう。もうそれでいいや。考えるのも嫌だ。

 「どこで獲ったのそれ?ってか、まだ生きてるじゃないの!そんなの食べない!とっとと元いたところにもどしてあげて!かわいそうでしょう!」

 レイミリアさんが大声を出すと、ジョジロウさんは渋々と青扉を出していた。直後に船のすぐ外に丸い空間の穴みたいなのができた。

 「しょうがねえな。んじゃ、戻すぞ。後になってやっぱり肉が食いたかったとか言うなよ。」

 そう言ってジョジロウさんが、イノシシの背中を持ってその穴に放り投げる。なんかプギー!って怒ったような声が聞こえる。穴の向こうってどうなってるんだろう?

 「はい、おしまい。閉じちゃう。」

 シュッと音がして丸い空間の穴が消えた。なんか不思議なことができるようになってる。どうやってそんなことができるようになったんだろう?なんて思いつつ、僕はもう姿形もないヨットの雄姿を思い浮かべて、また気分が下がっていくのを感じていた。


 ちなみに、マーリンさんはネ・ベルゼを持って別行動することになった。一応念のためにということで、ジョジロウさんの妹のカゲロウさんがついていっている。あっちは土の精霊探しで、二千年かけて世界中を歩いて回ったことのあるマーリンさんに居場所を探してもらえば確実だろうって。おかげでこっちは、レイミリアさんが野放しの好き勝手し放題。

 僕もう帰って寝ようかな…。でも帰るにしても、レイミリアさんにお願いしなきゃなんだよなぁ…。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

レオナルド先生創世記

ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

処理中です...