赤い剣と銀の鈴 - たそかれの世界に暮らす聖霊の皇子は広い外の世界に憧れて眠る。

仁羽織

文字の大きさ
31 / 41
精霊探し 水の精霊編

31

しおりを挟む
 「おぬし、モリトの端末だら。なんでこげなとこさ来てあそんどる?」

 気がつくと僕は真っ白な世界にいた。目の前に、宙に浮かぶ水色のクラゲがいる。

 「もうちっと考えて動かんと、またオウニさに怒られっど。だいじょぶけ?」

 クラゲが触手を一本伸ばして、僕の額に触れた。

 「ん、だいじょぶ。そしたらウチさけえれ。」

 「あなたは、ひょっとすると海の精霊様ですか?」

 僕は精一杯に頑張ってそうたずねてみた。すると、クラゲがこう答えてきた。

 「違うでな。オラ、海じゃなくて、水の精霊つだ。」

 つだ?

 「し、失礼しました。水の精霊様。僕はアイオリアに古くから住む、オニ・ハバキ・モリの一族に生まれた、ミラクーロ・フィリオス・アイオリアと言います。父の名は、デ・ルミネ・アイオリア。母は、デ・ミゼリト・アイオリア。ここへは話し合いに来ました。」

 「んだから、オラはオメにヨはネェ。この白ん間からととっとでてけれ。」

 クラゲの姿をした水の聖霊は、まるで取り付く島もない。このままじゃ機嫌が悪くなるだけだろうか?でも、ここで引くわけにはいかない。

 「お願いします。僕らは『たそかれの世界』についてもっとよく知りたいのです。そのためにオウニの居場所を探しています。教えてはいただけませんでしょうか?」

 「知らん。つかオウニはとうの昔に眠りさついたでよ。今更探しても見つかりっこねえべ。」

 それでも見つけなきゃいけないんだ。僕はそう思って話をつづけた。

 「水の精霊様、そこをなんとかご協力をお願いします。どんな些細なことでも結構です。ほんのわずかな事でも構いません。オウニがかつていた場所とか、オウニが好きだった場所だとか、そういった事でかまいません。どうかお願いします。」

 「ほで、オラ覚えとらんでよ。ぬかくさけんボレラずら。この白ん間からととっとでてけれ。」

 え?ボレラずらってどういう意味だろう?

 「へ、モチ。ブブリすくっとオラセラめ、タゴさ。この白ん間からととっとでてけれ。」

 水の精霊はそう言うと、体がどんどんと拡がっていった。水色のクラゲが視界いっぱいに大きくなる。そこから、一本の触手が僕をめがけてするするっと伸びた。その先端にはギザギザの棘のようなものが見えて、僕の肩に巻き付いてくる。

 とても強い痛みが襲ってくる。肩から背中を通じて頭の中まで響く痛みだ。僕はその痛みに耐えかねて大きく悲鳴をあげた。そうして意識がまた遠のいていくのを感じた。


 次に気がつくとそこは船の上だった。僕の顔を覗きこむように、レイミリアさんと一人だけのジョジロウさん、そして白兎(ミカエラ)の顔が見えた。

 「あ、気がついた。」

 レイミリアさんはそう言って僕の目を覗きこんできた。

 「大丈夫そうね。驚いたわよ、ジョジさんもあんたもいきなり倒れちゃうから。」

 そう言うとレイミリアさんは遠ざかっていった。次に白兎(ミカエラ)の顔が僕の目の前に広がる。

 「余も驚いたぞ。そもそも海の精霊がこんな海面あたりでいくら呼んでみたところで顔を出すはずがないのだ。それくらいモリトであればわかることであろう。頑張りすぎはよくないぞ。」

 そう言って白兎(ミカエラ)も遠ざかっていった。最後に残ったジョジロウさんが、驚いたような顔で僕に言う。

 「坊ちゃん、水色のクラゲが…。」

 その言葉に僕はガバッと起き上がった。慌てすぎておでこがジョジロウさんのあごに当たり、ジョジロウさんは後ろ側にのけぞって、僕がおでこを抑えて、そして顔をもう一度突き合わせて、同じことを叫んだ。

 「水色のクラゲ!」

 僕らは両手をつかんでその場で小躍りした。あれは夢ではなかったんだ。

 「ミカエラ!水の精霊に会えた!真っ白なところで水色のクラゲの姿をしてた!」

 僕はそう白兎(ミカエラ)に言った。すると白兎(ミカエラ)は両手を組んで、こう聞いてきた。

 「真っ白なところ?それは確かか?」

 「うん!間違いない。上も下も全部真っ白だった。足元に何の感触もなくって、ふわっと浮いている感じだった。」

 「そだそだ、そんな感じだ。あと四方も壁があるわけじゃなく、ずっと遠くまで真っ白って具合だ。それと『この白ん間からととっとでてけれ。』とか言ってたぞ。シロンマってのはたぶん白い間だろう?」

 ジョジロウさんも興奮気味にそう言って白兎(ミカエラ)を見た。ミカエラはそれを聞き、ドカッと床に座り込んで何かを考えるように言った。

 「白い…白…、となるとあそこ、か。ちっ、精霊め。面倒なところにこもってやがんな。」

 それから後も僕とジョジロウさんは興奮気味に、白兎(ミカエラ)に見たり聞いたりしたことを話しつづけた。白兎(ミカエラ)はそれらを聞きながらずーっと黙り込んでいた。


 その後も二回、同じことを繰り返し試してみることにした。洋上の舞台でケチャダンスを踊り狂い、トランス状態になってジョジロウさんが増え始め、大合唱の中でふたたび踊り狂い倒れる。でもその後は何度やっても、もう一度あの白い場所へ行くことは叶わなかった。僕らはそれで一旦は諦めて、船を残して城へ戻ることにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

レオナルド先生創世記

ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

処理中です...