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精霊探し 水の精霊編
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「てことで着きました。ここが、ハリル山の洞窟の奥にある、その名も『カムイとアイリの不思議な湖』でっす!」
洞窟入り口のコントで結構な体力を使ったと思うのに、白兎(ミカエラ)はレイミリアさんの頭の上でずいぶんと元気にそう説明した。
「ま、正式には『カムイ=アイリの湖』なんだがな。…つか、反応が鈍いな?今日はおでかけか?」
僕らは今、ハリル山の洞窟を一時間かけて抜け、巨大な地底湖の前にたどりついていた。いつもなら銀鈴や青扉でちょちょっと出入りしていたから、実際に歩くとこんなにも時間がかかるなんて思ってもみなかった。
洞窟の入り口からこの地底湖まで、およそ一キロから二キロくらい距離があるらしい。らしいというのは、計測するたびにその距離が変わるからだ。原因は未だに解明されていない。でも父上と母上にこの話をすると「あ、そう。それは変だね。」としか言わなかったので、たぶんあの二人はこの原因を知っている気がする。
「アイリさん、アイリさん。おいででしたらおいでませ。」
白兎(ミカエラ)がそう言って湖に向かい大声をあげる。すると湖の真ん中あたりに、白い光がボヤっと浮かぶのが見えた。驚いて周りを見回すと、レイミリアさんにもジョジロウさんにも見えているみたいだ。二人ともものすごい顔でその場所に立ち尽くしている。
白い光は、一メートルほど湖面に浮かび上がると、スーッとこちら側へと移動してきた。そして僕らがいる砂浜に上がって、僕らの二メートルくらい前で停止した。
「久しいですね。元気にしてましたか、異端のミカエラ。」
「ふはは、余を知っているか。そうなると話は早い。白き間へと行きたい。鍵を開けてくれ。それとこの二人の人類種に祝福を与えてやって欲しい。」
白兎(ミカエラ)と白い光は、顔見知りのようだった。
「今更何をしにいくのです?以前最後に行かれた時に、もう用はないとルミネは言っていましたよ。」
父上の名前が出た。ということは、父上もこの白い光と知り合いなのか。
「あの場所自体にはもう用はない。だがあそこに入り込んでいる奴がおる。水の精霊だ。そいつに会いに行く必要があってな。なので頼む。」
「人にものを頼む容姿ではありませんね。なぜにそんなぬいぐるみに入っているのですか?」
人にものを頼む容姿というのがあるんだ…。
「この様は聞くな。けれどモノじたいは良いもんだぞ。例え作り手があの憎きオウニだとしても、品質は万全だ。中も快適だ。」
「おほほほほ。言うは易く、ですわね。」
「どういう意味だ?」
「言葉のままですわよ。何が『憎きオウニ』なんでしょうか、ということです。」
白い光の言葉に、白兎(ミカエラ)がだんだんと赤い兎に変わっていく。
「ふざけたことを言うでない!余はオウニなんて大嫌いじゃ!あんな頑固者の唐変木なぞ、金輪際顔も見たくない!」
「はいはい。わかりました。白の間がある空間への接続ですね。装置自体はオリト様に作成していただきましたが、あれから四百年以上たってますし、まだ動くでしょうか?ちょっと様子を見て参ります。その場でしばらくお待ちください。」
白い光はそう言い残すと、ふわふわっと洞窟の奥の方へ飛んで行った。後に残された僕らは互いに顔を見合わせると、思い思いのことを話しはじめた。
「あれって、やっぱり幽霊っていうの?」
「どうなんでしょう。ああいうの、苦手ですか?」
「私は平気よ。家でよくホラーとか見てるもん。」
この一年近くそんな暇はなかったろうに、レイミリアさんはいったいいつそんなものを見る時間があったんだろう。僕がそんなことを考えていると、ジョジロウさんが震えた声で言った。
「俺は駄目だ。なんかこう、背筋が寒くなって膝がガクガク揺れっちまう。声も、うまく喋れねえや。」
意外だった。元は退魔を専門に請け負う忍者だった人の言葉には思えない。
「なんじゃ、その方、霊現象は苦手か?」
レイミリアさんの頭の上から白兎(ミカエラ)がそう聞く。
「苦手も何も、あの手のは退治のしようがねえんだ。あっちが機嫌を損ねたら一方的にやられちまう。そんなの怖すぎるだろう。」
「ふむ。やるかやられるか、か。おぬしそれでは、嫁さんや子供とうまくいかんだろう。」
「何を言って?なんでそこで嫁と子供が出てくる?」
白兎(ミカエラ)とジョジロウさんは、そう言ってにらみ合いをはじめた。
「どうせ嫁や子供にも、でかい態度で自分の言いたいことばっかりを押し付けているのだろう。そういう相手でないと家族にもなれんとは、難儀じゃのう、相手が。わはは。」
「ちょっと待て。聞き捨てなんねえな。言っとくがうちのヒカリは、ああ見えて俺より強いぞ。手裏剣も剣術も体恤でさえ俺はあいつに勝てたことはねえ!」
「ほほー、意外。であればそれが理由で従っているというわけか。」
「ああん!?何を絡んできてんだこら。喧嘩なら買うぞ。洞窟から表へ出ろや。」
僕はとばっちりが来ないうちに二人から少し離れることにする。レイミリアさんがちょっとだけかわいそうな気がした。白兎(ミカエラ)はまだレイミリアさんの頭の上にいる。目の前のジョジロウさんが鬼みたいな顔で迫るものだから、レイミリアさん怖がって泣きそうな顔でいる。
一触即発。そう感じたその時、洞窟中にぐわわわあんとものすごい音が鳴り響いた。ジョジロウさんの頭に、かなり大きな銀色のタライが落ちてきた音のようだ。
「ふはは。今日の所はそれぐらいで許しておいてやろう。ねー、レイミリアたん。」
音と、目の前で起きたできごとに、目が点になっているレイミリアさん。白兎(ミカエラ)はそんなレイミリアさんの頭上であぐらをかいて座りこんでいる。ジョジロウさんはたいしてダメージもなかったようで、そのまま砂に座り込んでいた。
いったい、なんだったんだ?コント?
洞窟入り口のコントで結構な体力を使ったと思うのに、白兎(ミカエラ)はレイミリアさんの頭の上でずいぶんと元気にそう説明した。
「ま、正式には『カムイ=アイリの湖』なんだがな。…つか、反応が鈍いな?今日はおでかけか?」
僕らは今、ハリル山の洞窟を一時間かけて抜け、巨大な地底湖の前にたどりついていた。いつもなら銀鈴や青扉でちょちょっと出入りしていたから、実際に歩くとこんなにも時間がかかるなんて思ってもみなかった。
洞窟の入り口からこの地底湖まで、およそ一キロから二キロくらい距離があるらしい。らしいというのは、計測するたびにその距離が変わるからだ。原因は未だに解明されていない。でも父上と母上にこの話をすると「あ、そう。それは変だね。」としか言わなかったので、たぶんあの二人はこの原因を知っている気がする。
「アイリさん、アイリさん。おいででしたらおいでませ。」
白兎(ミカエラ)がそう言って湖に向かい大声をあげる。すると湖の真ん中あたりに、白い光がボヤっと浮かぶのが見えた。驚いて周りを見回すと、レイミリアさんにもジョジロウさんにも見えているみたいだ。二人ともものすごい顔でその場所に立ち尽くしている。
白い光は、一メートルほど湖面に浮かび上がると、スーッとこちら側へと移動してきた。そして僕らがいる砂浜に上がって、僕らの二メートルくらい前で停止した。
「久しいですね。元気にしてましたか、異端のミカエラ。」
「ふはは、余を知っているか。そうなると話は早い。白き間へと行きたい。鍵を開けてくれ。それとこの二人の人類種に祝福を与えてやって欲しい。」
白兎(ミカエラ)と白い光は、顔見知りのようだった。
「今更何をしにいくのです?以前最後に行かれた時に、もう用はないとルミネは言っていましたよ。」
父上の名前が出た。ということは、父上もこの白い光と知り合いなのか。
「あの場所自体にはもう用はない。だがあそこに入り込んでいる奴がおる。水の精霊だ。そいつに会いに行く必要があってな。なので頼む。」
「人にものを頼む容姿ではありませんね。なぜにそんなぬいぐるみに入っているのですか?」
人にものを頼む容姿というのがあるんだ…。
「この様は聞くな。けれどモノじたいは良いもんだぞ。例え作り手があの憎きオウニだとしても、品質は万全だ。中も快適だ。」
「おほほほほ。言うは易く、ですわね。」
「どういう意味だ?」
「言葉のままですわよ。何が『憎きオウニ』なんでしょうか、ということです。」
白い光の言葉に、白兎(ミカエラ)がだんだんと赤い兎に変わっていく。
「ふざけたことを言うでない!余はオウニなんて大嫌いじゃ!あんな頑固者の唐変木なぞ、金輪際顔も見たくない!」
「はいはい。わかりました。白の間がある空間への接続ですね。装置自体はオリト様に作成していただきましたが、あれから四百年以上たってますし、まだ動くでしょうか?ちょっと様子を見て参ります。その場でしばらくお待ちください。」
白い光はそう言い残すと、ふわふわっと洞窟の奥の方へ飛んで行った。後に残された僕らは互いに顔を見合わせると、思い思いのことを話しはじめた。
「あれって、やっぱり幽霊っていうの?」
「どうなんでしょう。ああいうの、苦手ですか?」
「私は平気よ。家でよくホラーとか見てるもん。」
この一年近くそんな暇はなかったろうに、レイミリアさんはいったいいつそんなものを見る時間があったんだろう。僕がそんなことを考えていると、ジョジロウさんが震えた声で言った。
「俺は駄目だ。なんかこう、背筋が寒くなって膝がガクガク揺れっちまう。声も、うまく喋れねえや。」
意外だった。元は退魔を専門に請け負う忍者だった人の言葉には思えない。
「なんじゃ、その方、霊現象は苦手か?」
レイミリアさんの頭の上から白兎(ミカエラ)がそう聞く。
「苦手も何も、あの手のは退治のしようがねえんだ。あっちが機嫌を損ねたら一方的にやられちまう。そんなの怖すぎるだろう。」
「ふむ。やるかやられるか、か。おぬしそれでは、嫁さんや子供とうまくいかんだろう。」
「何を言って?なんでそこで嫁と子供が出てくる?」
白兎(ミカエラ)とジョジロウさんは、そう言ってにらみ合いをはじめた。
「どうせ嫁や子供にも、でかい態度で自分の言いたいことばっかりを押し付けているのだろう。そういう相手でないと家族にもなれんとは、難儀じゃのう、相手が。わはは。」
「ちょっと待て。聞き捨てなんねえな。言っとくがうちのヒカリは、ああ見えて俺より強いぞ。手裏剣も剣術も体恤でさえ俺はあいつに勝てたことはねえ!」
「ほほー、意外。であればそれが理由で従っているというわけか。」
「ああん!?何を絡んできてんだこら。喧嘩なら買うぞ。洞窟から表へ出ろや。」
僕はとばっちりが来ないうちに二人から少し離れることにする。レイミリアさんがちょっとだけかわいそうな気がした。白兎(ミカエラ)はまだレイミリアさんの頭の上にいる。目の前のジョジロウさんが鬼みたいな顔で迫るものだから、レイミリアさん怖がって泣きそうな顔でいる。
一触即発。そう感じたその時、洞窟中にぐわわわあんとものすごい音が鳴り響いた。ジョジロウさんの頭に、かなり大きな銀色のタライが落ちてきた音のようだ。
「ふはは。今日の所はそれぐらいで許しておいてやろう。ねー、レイミリアたん。」
音と、目の前で起きたできごとに、目が点になっているレイミリアさん。白兎(ミカエラ)はそんなレイミリアさんの頭上であぐらをかいて座りこんでいる。ジョジロウさんはたいしてダメージもなかったようで、そのまま砂に座り込んでいた。
いったい、なんだったんだ?コント?
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