青い扉と銀の鈴 - 世間知らずのお嬢様と魔王討伐の生き残りと魔王の息子とが出逢った頃の物語

仁羽織

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期待と尊敬と残念さとが重なる偶然

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 「お嬢ちゃん、起きたか。あんまそんなとこで寝てると日焼けするぞ。あと、海に落ちんなよ。俺泳げないから助けに行けないぞ。」

 ジョジさんがほとんど裸の格好でそう言って通り過ぎていく。肩に長そうなロープを担いでいた。私はあわてて自分の恰好を確認してみると、いつの間にか水着を着ている。

 「ちょっと!誰よ、こんなのに着替えさせたのは!?」

 「レイミリアさんのお母さんですよ。出かける前に、次に行く先は海洋の上だって話したら、せっかく外出着に着替えさせてくれたレイミリアさんを、もう一回おうちの奥に連れていって、はいって言ってその恰好で連れてきてくれたんです。」

 「いつ?!」

 「今朝ですよ。何度起こしても起きないからって、お母さんも大変だったと思います。…けど変ですね、出るときはその上に綺麗な花柄の赤いパーカーみたいなのを羽織ってたと思ったのに。」

 「え?」

 そう言われて、周りを見回してみた。花柄のパーカーって言ったら私のお気に入りだ。

 「ああ、それならあれじゃねえか?」

 ジョジさんがロープを伸ばしながらまた戻ってきて、遠くを指さしながらそう言う。見ると水面にぷかぷかと、お気に入りのパーカーみたいな色の何かが浮いたり沈んだりしていた。

 「ちょっと!まってまって!あれ、どうしたらいいのよ!」

 そう言って周りをみたら、今度は二人とももういない。いったいなんでよ!って頭にきて、思い切ってそのまま水の中に飛び込んだ。

 海なんだろうな、これ。水、しょっぱい。

 プールで鍛えた泳ぎをつかって、なんとかパーカーのところまでたどり着く。間違いなく私のだ。しかも一番のお気に入り!なんで塩水なんかに漬けちゃったのよ…。

 その後、頑張って元いたところを目指して泳いだ。その元いたところを遠くから見ると、なんだかちょっとおかしな格好の船だとわかった。どちらかと言えばいかだだ。広がった平らな面の上に、何本も棒が突き出ている。その上の方をジョジさんが、ロープで縛ってつないでいる。そして下の方でミラクが、いつだったか砂漠で使ったテントを、揺れる中で頑張って張ろうとしているのが見えた。

 私の知識もテレビや漫画雑誌なんかの情報が元だからあれだけど、こんな船でいったいどこに向かおうって言うの?この連中!

 そうして船まで泳ぎ切って、最初に出たのがはじめのひとこと。結局のところ何にもわからないままなわけだ。それに砂の海の次が水ばっかりの海って!お風呂はどうすんのよ!またしばらく入れないの!こんなに揺れてて、眠るのだって大変じゃない!

 後になって聞いたことだが、どうやらこの筏はミラクが銀鈴で出したものらしい。大きさはたいしたものだけど、さっきから波にのるたびに揺れて今にも壊れそうで怖い。どうせならテレビで見るようなおっきなクルーザーを用意しなさいよって言ったら、それなんですかって。どうやらミラクくんは、クルーザーってものを見たことがないらしい。ロビンソン・クルーソーって本が大好きで、そこに挿絵で筏が描かれていたらしくて、それを出しちゃったって照れ笑いしていた。

 昨日寝付く前は期待と希望で胸一杯だった。だけどその最初がこれじゃあ、どうしたって残念な気持ちしか胸に浮かんでこない。ジョジさんもミラクも、他のことだと尊敬できたり期待もできたりするのに、こういうところで残念だなって。それはこの先もずっと思い続けることになる。

 この後すぐに私が銀鈴をつかって、テレビで見たような大きなクルーザーを出して見せた。中はいろいろわからないところばかりだったので、結構普通じゃないつくりになっているかもしれない。でも筏よりは数倍は快適で、それにお風呂もある。それなのにミラクは口をとがらせていじけているし、ジョジさんは外が見にくいとか、壁が多すぎると敵に気がつくまで時間がかかるだとか文句を言う。

 ほんと、残念な人たちだ。けど、それも仕方がない。
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