僕の彼女は小学生♡

エリザベス

文字の大きさ
上 下
2 / 10

しおりを挟む
「何してるんだ!やめなさい!」
僕は怒ったように言う。

こんなところを人に見られたら変な誤解されてしまう。

「私は本気なんです。本気で飯島さんが好きなんです。だからこんな恥ずかしいこともできるんです。普段なら絶対できないこともできるんです」

「わかった。わかったからスカートを下ろしてくれ」

「はい」
春菜がスカートを下ろす。

その顔は赤く染まっている。相当、恥ずかしかったようだ。

「私が飯島さんのこと、本気で好きだってことわかってもらえましたか?」

「わかったよ。春菜ちゃんの気持ちはよくわかった。でも僕は春菜ちゃんと付き合うことはできないよ」

「私が小学生だからですか?」

「うん。僕は小学生とは付き合うことはできないよ。小学生と付き合うといろいろと問題が生じるだろうからね。僕はその問題をクリアする自信はない。だから春菜ちゃんと付き合うことはできない。ごめんね」

「・・・そう言われると思ってました」

「ごめんね」

「謝らないでください。これから私のほうが酷いことを飯島さんにするんですから謝る必要はありません」

「えっ?」

「飯島さん。私とお付き合いしてくれなかったら飯島さんに無理やりパンツを見られたと言います。いろんな人に飯島さんにパンツを無理やり見られたと言います」

「・・・冗談だよね?」

「冗談ではありません。私は本気です。もし飯島さんが私とのお付き合いをOKしてくれなかった場合、パンツを無理やり見られたと言います」
彼女は真面目な顔で言った。

冗談を言っている人の顔には見えない。

「春菜ちゃんのしてることは脅しだよ」

「わかってます。できるなら私だって脅しなんて使いたくありませんでした。でも飯島さんは私が小学生という些細な理由で私との交際を断わってきました。それが許せなかった。私はこんなにも愛してるのに小学生という些細な理由で交際を断ってきたのがどうしても許せなかったんです。だから脅しを使ったんです」

「些細な理由じゃないよ。小学生と付き合うということは決して些細な問題じゃないよ」

「私にとっては些細な問題です。私はもう結婚しても十分に主婦ができると思ってます。そんな私を子供扱いするのは間違っていると思います。だから飯島さんの交際できない理由に腹が立ったんです。許せないと思ったんです」

「子供扱いをしたことは謝るよ」

「だったら私とお付き合いしてください。私を子供扱いしていないというならお付き合いすることできますよね」

彼女の言うことは正論に思える。確かに彼女のことを子供扱いしていないならお付き合いしても問題ないことになる。

でも日本社会では小学生との交際は確実に問題になる。清いお付き合いをしたとしても問題になる。僕にそんな問題を乗り越える力があるとは思えない。

「私とお付き合いできるって言ってくれないんですね」

「ごめん」

「飯島さんにパンツを見られたって言うしかないみたいですね。そうすれば飯島さんを好きになる女の子は私だけになる。犯罪者の飯島さんを好きになる女の子なんていませんからね」

僕はゾッとする。春菜の言うとおりだと思った。性犯罪者のことなど普通の女の子が好きになるわけがない。

「私は飯島さんを犯罪者になんかしたくないんです。でも飯島さんが小学生の私とお付き合いできないという些細な理由で交際を拒み続けるなら私は飯島さんを犯罪者にする道を選びます。そして将来、犯罪者の飯島さんを私が支えます」

「春菜ちゃんはどうして僕のことをそんなに好きなの?こんな冴えない僕を」

「飯島さんは私のことを救ってくれました。幼い私を変質者から守ってくれました」

「春菜ちゃんを守った?僕が?」

「はい。今から5年前です」

5年前・・・僕が小学生の頃か・・・全然記憶にない。

「この近くに神社がありますよね。無人の神社が」

「ああ、あるね」

「その神社で私は変質者に犯されそうになっていたんです。その変質者を飯島さんが撃退してくれたんです」

・・・そう言えばそんなことがあったような気がする。僕が小学生なのに中二病を発症していたときにそんなことがあった気がする。

僕にとって中二病の過去は黒歴史だ。だから記憶の奥底にその記憶を封印していた。でも春菜の話を聞いて、少しずつ黒歴史の記憶が蘇ってきた。

自分は伝説勇者の血を引いていると思い込んでいた幼い僕。いつか勇者の力に目覚めると信じていた幼い僕。いつか魔法が使えると信じていた幼い僕。いつか異世界に召喚されると信じていた幼い僕。いつ異世界に召喚されてもいいように体をアホみたいに鍛えていた幼い僕。空手や剣道などに打ち込んでいた幼い僕。

そんな幼い頃の記憶が次々と脳裏に浮かぶ。

そんな記憶の中には変質者から少女を救う記憶もあった。

確かに僕は小学生の頃、変質者から少女を救った記憶がある。

でも記憶が漠然としているため救った少女が誰かのかわからない。

「思い出してくれましたか?」

「うん。確かに僕は小学生のときに少女を救ったことがある」

武道を習っていたし、体も鍛えていた。さらに変質者が大人の割には貧弱だった。だから少女を救うことができたのだ。

「あの少女は春菜ちゃんだったんだね」

「はい。あのとき、私は怖くて動くこともできませんでした。変質者にスカートを捲られそうになったときも怖くて声も出せませんでした。そこに飯島さんが現れたんです。そしてあっという間に変質者を撃退してくれたんです。私はそのとき飯島さんのことを好きになったんです」

「そうだったんだ」

「はい。飯島さんは中二病の過去だから忘れたい過去かもしれません。でも私には永遠に忘れない過去です。ヒーローみたいに颯爽と現れて悪者を撃退した飯島さんの姿を忘れられるわけありません。私にとって飯島さんは永遠のヒーローです」

「・・・そう思ってくれるのは春菜だけだよ」

「私だけでは不満ですか?私は嬉しいです。私だけが飯島さんのことをヒーローと思えて。だから私は飯島さんのことを好きになれたんですから」春菜は嬉しそうに笑む。「私は飯島さんのことが心の底から好きです。世界中の誰よりも大好きです」

中二病だった僕をここまで評価してくれた人は春菜が初めてだった。みんな馬鹿にした。中二病の僕を馬鹿にした。自分さえも中二病の僕を馬鹿にした。それなのに春菜は中二病だった頃の僕を肯定してくれたのだ。その肯定が春菜が僕を本気で好きな証拠のように思えた。

「そんな飯島さんを私は犯罪者にはしたくありません。私の手で飯島さんのヒーロー性を汚すようなことはしたくありません。だからお試しでもいいから私とお付き合いしてほしいんです。お願いします。私に大好きな飯島さんとお付き合いするチャンスを下さい。お願いします」
春菜は深々と頭を下げる。

こんなにも僕のことを好きになってくれる女の子はこの先現れない気がする。中二病だった頃の僕すら好きなってくれる女の子にはこの先巡り会えない気がする。彼女との交際を断ったら一生後悔するような気がした。それだけじゃない。交際を断って春菜を傷つければそれも一生の後悔になる気がした。

そんな後悔したくないと思った。
しおりを挟む

処理中です...