僕の彼女は小学生♡

エリザベス

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僕たちは神社に向かった。

10分ほど歩くと神社に着いた。

木々に囲まれた無人神社だ。

相変わらず誰もいない。

参道の先には社がある。

その社の裏側で春菜は乱暴されそうになっていたのだ。

「ここで私は飯島さんに助けられたんですよね」
春菜は事件現場を見ながら言う。

「うん」

「あのときは本当に怖かったんです。誰か助けてって心の中で助けを呼んでいたんです。そこに飯島さんが現れたんです。そのときの私はヒーローが現れた!とは思いませんでした。ダメだ。この子では私を助けられない。そう思ったんです」

「まあ、そう思うのは自然なことだと思うよ。そのときの僕は平均的体格の小学生だったからね」

「はい。でも飯島さんは大人の男性を撃退してしまった。ほとんど傷を負うことなく相手を追っ払ってしまった」

「相手がひ弱な男だったからね。強靭な体の男だったら負けていたと思うよ」

「でも私には強大な敵に勝利した勇者のように飯島さんのことが見えたんです。自分の倍くらいある相手を追っ払ったんですもの。幼い私には飯島さんが本当に勇者のように見えたんです」

「そうなんだ」

「はい」
春菜は笑顔で頷く。

「もし、あのとき、飯島さんが助けに来てくれなかったら私はきっとあの男に乱暴されていたと思います。そして一生消えない傷を体にも心にも刻まれていたと思います。最悪、その傷の痛みに耐えきれなくて私は自殺する道を選んでいたと思います」

そんなわけないだろうと僕は否定できなかった。乱暴されて自殺した少女の話を僕は知っていたからだ。その少女は知り合いではなかったけど、学校で何度か見かけたことがある。その少女が乱暴され、自殺したのだ。マンションの屋上から飛び降りて。

「でも飯島さんが助けてくれたおかげで私は最悪の道を選ばずにすみました。飯島さんが中二病で体を無茶苦茶鍛えていたから私は最悪の道を選ばずにすんだんです。飯島さんの中二病は1人の女の子の命を救ったんです。さらに1人の女の子に生きる希望を与えてくれたんです。この人のお嫁さんになりたいという希望を。飯島さんが中二病だったおかげでそんな素敵な希望を持つことができたんです。だから私は飯島さんが中二病だったことを心から感謝しているんです」

春菜はさらに話を続ける。

「飯島さんのお母さんだってきっと飯島さんに感謝していたと思うんです。私の病を中二病の力で治そうとしてくれてありがとうって。精一杯頑張ってくれてありがとうって。そう感謝していたと思うんです。だから飯島さんには中二病の過去を否定しないでほしいんです。ずっと良い思い出として心に記憶していてほしいんです。私が良い思い出として中二病だった頃の飯島さんを記憶しているように」

春菜は涙を流しながら笑顔で言った。

「私に息子がいて、その息子が私の病気を治すために一生懸命勉強したり、トレーニングしたり、修行したりしてくれている姿を見たら、私は嬉しいと思うと思うんです。私のために頑張ってくれてありがとうって感謝すると思うんです。だから飯島さんのお母さんだってそう思うと思うんです。私より飯島さんを愛してるお母さんなら絶対そう思うと思うんです。でも飯島さんが中二病の過去を否定していたらお母さんの思いまで否定してしまいます。それは悲しいことです。とても悲しいことです。だから飯島さんには中二病の過去を否定しないでほしいんです。良い思い出として心に留めておいてほしいんです」

母が病気になったとき僕は勇者の力を目覚めろと思った。その力があれば母の病を治すことができると思ったからだ。だから僕は馬鹿みたいに体を鍛えた。漫画の主人公が修行によって覚醒するみたいに自分が覚醒することを期待して厳しい鍛錬を続けた。でも僕は勇者に覚醒することはなかった。特別な力に目覚めることもなかった。

そして母が死んだ。僕は中二病をやめた。僕には特別な力などないことを嫌というほどに痛感したからやめたのだ。

大概の人は中二病を馬鹿する。僕はその事実を利用した。中二病をやめたのはみんなに馬鹿にされたから。だからやめたと思い込もうとした。母のことを思い出さないようにそう思い込もうとしたのだ。子供の僕が自分の心を守る自衛策としてそう思い込むことにしたのだ。

そしてそれは上手くいった。僕は本当にみんなに馬鹿にされたから中二病をやめたと思い込むようになったのだ。

でも春菜の話を聞いてそんな自分の過去を思い出した。それはツライことだった。無力で無意味な過去を思い出すことだからだ。

でも春菜はそれを無駄な過去ではないと言ってくれた。母も感謝していると言ってくれた。春菜が僕に感謝してくれたように。その言葉は僕の心に響いた。心の奥深くまで響いた。

そして僕は悟る。僕は母に失望されたと思っていたのだ、と。母は自分が病気でツライときに中二病全開で生きていた僕に失望していたのではないか。そう僕は思っていたのだ。その思いを封印するために僕は中二病の過去も封印したのだ。

春菜のおかげでそのことに気づくことができた。そして春菜は僕に感謝していると言ってくれた。心から感謝していると言ってくれた。母も感謝していると言ってくれた。それを素直に信じることができた。

春菜は母と同じように僕を愛してくれている。だから春菜の言葉を素直に信じることができたのだ。

そうなのだ。母は僕を愛してくれていたのだ。「ずっと一緒にいてあげられなくてごめんね」と泣いてくれるくらいに母は僕を愛してくれていたのだ。

そんな母が僕に失望するわけがなかったのだ。息子が中二病だからと言って失望するわけがないのだ。

母はいつだって僕の中二病話を楽しそうに聞いてくれた。ときには僕のトレーニングに付き合ってくれたこともあった。空手の大会のときいつも応援に来てくれた。ほしいと思ったトレーニング器具も買ってくれた。

いつだって母は僕のためになることをしてくれていたのだ。いつだって中二病の僕を応援してくれていたのだ。

そんな母が僕に失望するわけがないのだ。

僕は泣いていた。安堵と嬉しさの入り混じった涙だった。

僕は母に失望されていなかったという安堵と母に感謝されていたという嬉しさ。そんな2つが混じり合った涙だった。

春菜が近づいてきて僕を抱きしめてくれた。

僕は泣いた。泣き続けた。小さな春菜に抱きしめられながら。子供のように泣き続けた。
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