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「春菜ちゃん、もう大丈夫だよ。ありがとう」
僕は抱擁を続ける春菜に言った。
「飯島さん。私は飯島さんのお役に立てたでしょうか?」
春菜が抱擁を続けながら尋ねてきた。
「ああ。僕は春菜ちゃんのおかげで救われたよ」
僕は正直に答える。
「嬉しいです。飯島さんにそう言ってもらえて。おかげで悔しさを解消することができました」
「悔しさ?」
「私、悔しかったんです。飯島さんがツライときに何もしてあげられなかったことが悔しかったんです。あの事件のあと私はすぐに転校してしまったんです。北海道に。だから飯島さんのお母さんのことは最近知ったんです。知ったとき悔しかった。飯島さんは私を救ってくれたのに私は飯島さんが一番ツライときに何もしてあげられなかったことがすごく悔しかったんです」
春菜がそんな悔しさを抱えていたなんて。
「私は少しでも早く飯島さんの彼女になりたかった理由のひとつは悔しさを解消したかったからなんです。飯島さんのお役に立って悔しさを解消したかったからなんです」
「そうだったんだ」
「はい」
「僕が中二病だった時期にしたことは無駄ではなかったんだね」
「はい。全然無駄じゃないです。誰かのために一生懸命努力することに無駄じゃないんです。それが中二病的行動でも無駄じゃないんです。価値ある行動なんです。その証拠に私は救われました。飯島さんの中二病的行動が価値ある行動だったから私は救われたんです。だから私は飯島さんのお母さんも救われていたと思うことができたんです」
「母さんも救われていたんだ」
「はい。息子が私のために頑張ってる。だから私も病気に負けずに頑張ろう。そう思うことで救われていたと思います」
「母さんは余命よりも三ヶ月も長く生きたんだ」
「飯島さんの行動にお母さんが救われていた証拠だと思います」
「母さんはいつも笑顔でいてくれたんだ」
「それもお母さんが救われていた証拠だと思います」
「僕は母さんに失望されてると思っていたんだ」
「失望するわけありません。愛する息子が自分のために頑張ってくれているのに失望するわけないじゃありませんか?私だったら絶対失望なんてしません。飯島さんのお母さんだって失望しません。もし飯島さんのお母さんが失望するような人だったら飯島さんは私を救ってくれるような人にはならなかったと思います。飯島さんのお母さんが優しい人だったから飯島さんも人助けができる優しい人になったんだと思います。そんな優しいお母さんが飯島さんに失望するわけありません」
「そうだよな」
「はい。そうです」
「母さんは優しい人だった。誰よりも優しい人だった。そんな優しい母さんが僕に失望するわけないよな」
「はい」
「僕は馬鹿だよな。そんなこともわからなかったなんて」
「そうです。飯島さんは馬鹿です。だから放っておけないんです。そばにずっといてあげたくなるんです。こうして抱きしめていてあげたくなるんです」
「春菜ちゃんのほうが大人だね」
「はい。私は大人です。小学生ですけど、中身は大人です。だから私を春菜ちゃんって子供みたいに呼ばないでください。春菜って呼んでください」
「わかったよ。春菜」
「はい。私は飯島さんのことを誠さんって呼びますね」
「いいよ」
「誠さん」
「何?」
「愛してます」
「うん。僕も春菜を愛してる」
「愛してるならキスをしてください」
「いいよ」
「ホントにしてくれるんですか?」
「してあげるよ」
「嬉しい」
「目を閉じて」
「はい」
春菜は目を閉じる。
僕はキスをする。春菜のおでこに。
「今はこれが精一杯」
「嬉しいです。この日のキスを私は一生忘れないと思います」
「うん。春菜。帰ろう。家まで送るよ」
「はい。誠さん、神社の出口まででいいので手を繋いでもらえないでしょうか?」
「いいよ」
「ありがとうございます」
僕たちは手を繋ぐ。今の僕たちを見た人たちのほとんどは年の離れた兄妹だと思うだろう。
僕はそう思う人達にこう言ってやりたいと思った。春菜は僕の彼女だ、と。
そう思えるくらいに僕は春菜のことを好きになっていた。
だから僕は春菜と手を繋いで歩くことが純粋に嬉しかった。
僕は抱擁を続ける春菜に言った。
「飯島さん。私は飯島さんのお役に立てたでしょうか?」
春菜が抱擁を続けながら尋ねてきた。
「ああ。僕は春菜ちゃんのおかげで救われたよ」
僕は正直に答える。
「嬉しいです。飯島さんにそう言ってもらえて。おかげで悔しさを解消することができました」
「悔しさ?」
「私、悔しかったんです。飯島さんがツライときに何もしてあげられなかったことが悔しかったんです。あの事件のあと私はすぐに転校してしまったんです。北海道に。だから飯島さんのお母さんのことは最近知ったんです。知ったとき悔しかった。飯島さんは私を救ってくれたのに私は飯島さんが一番ツライときに何もしてあげられなかったことがすごく悔しかったんです」
春菜がそんな悔しさを抱えていたなんて。
「私は少しでも早く飯島さんの彼女になりたかった理由のひとつは悔しさを解消したかったからなんです。飯島さんのお役に立って悔しさを解消したかったからなんです」
「そうだったんだ」
「はい」
「僕が中二病だった時期にしたことは無駄ではなかったんだね」
「はい。全然無駄じゃないです。誰かのために一生懸命努力することに無駄じゃないんです。それが中二病的行動でも無駄じゃないんです。価値ある行動なんです。その証拠に私は救われました。飯島さんの中二病的行動が価値ある行動だったから私は救われたんです。だから私は飯島さんのお母さんも救われていたと思うことができたんです」
「母さんも救われていたんだ」
「はい。息子が私のために頑張ってる。だから私も病気に負けずに頑張ろう。そう思うことで救われていたと思います」
「母さんは余命よりも三ヶ月も長く生きたんだ」
「飯島さんの行動にお母さんが救われていた証拠だと思います」
「母さんはいつも笑顔でいてくれたんだ」
「それもお母さんが救われていた証拠だと思います」
「僕は母さんに失望されてると思っていたんだ」
「失望するわけありません。愛する息子が自分のために頑張ってくれているのに失望するわけないじゃありませんか?私だったら絶対失望なんてしません。飯島さんのお母さんだって失望しません。もし飯島さんのお母さんが失望するような人だったら飯島さんは私を救ってくれるような人にはならなかったと思います。飯島さんのお母さんが優しい人だったから飯島さんも人助けができる優しい人になったんだと思います。そんな優しいお母さんが飯島さんに失望するわけありません」
「そうだよな」
「はい。そうです」
「母さんは優しい人だった。誰よりも優しい人だった。そんな優しい母さんが僕に失望するわけないよな」
「はい」
「僕は馬鹿だよな。そんなこともわからなかったなんて」
「そうです。飯島さんは馬鹿です。だから放っておけないんです。そばにずっといてあげたくなるんです。こうして抱きしめていてあげたくなるんです」
「春菜ちゃんのほうが大人だね」
「はい。私は大人です。小学生ですけど、中身は大人です。だから私を春菜ちゃんって子供みたいに呼ばないでください。春菜って呼んでください」
「わかったよ。春菜」
「はい。私は飯島さんのことを誠さんって呼びますね」
「いいよ」
「誠さん」
「何?」
「愛してます」
「うん。僕も春菜を愛してる」
「愛してるならキスをしてください」
「いいよ」
「ホントにしてくれるんですか?」
「してあげるよ」
「嬉しい」
「目を閉じて」
「はい」
春菜は目を閉じる。
僕はキスをする。春菜のおでこに。
「今はこれが精一杯」
「嬉しいです。この日のキスを私は一生忘れないと思います」
「うん。春菜。帰ろう。家まで送るよ」
「はい。誠さん、神社の出口まででいいので手を繋いでもらえないでしょうか?」
「いいよ」
「ありがとうございます」
僕たちは手を繋ぐ。今の僕たちを見た人たちのほとんどは年の離れた兄妹だと思うだろう。
僕はそう思う人達にこう言ってやりたいと思った。春菜は僕の彼女だ、と。
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