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神社の出口まできた。そこで繋いでいた手を離す。
「ありがとうございます。手を繋いでくれて。すごく嬉しかったです」
春菜が本当に嬉しそうに言った。
「うん。僕も嬉しかったよ。ありがとう。僕のような春菜から見たらおっさんみたいな男と手を繋いでくれて」
僕は照れくさかったので冗談を混じえてお礼を言った。
「誠さんはおっさんではありません。私は誠さんと年の差があると思っていませんから。私にとって誠さんは素敵な彼氏であってそれ以上でもそれ以下でもないんです。だから年の差もないんです」
「すごいね。春菜は。考え方が大人だよ。僕以上にね」
「みんなが私みたいな考え方をしてくれたら堂々と誠さんとお付き合いできるんですけどね」
「そうだね」
「ああ、誠さんと人目のある場所でも堂々と手を繋いて歩きたいです」
「ごめん。僕に勇気があったらその望みを叶えてあげられるのだけど」
「気にしないでください。私の望みを叶えてあげたいと思ってくれているだけでも私は嬉しいですから」
そのとき神社に少年が入ってきた。気の強そうな顔をしている。その顔が驚きに変わる。「高梨」と少年は言った。
「前田くん」
春菜は少し驚いて言う。
「こんなところで何してるんだ?」
「お参りしてたのよ」
「そうか。この人は誰だ?」
「飯島誠さん。私の彼氏よ」
ちょっと!春菜!何言ってるの!
「彼氏?冗談だろ?」
「本当よ。誠さんは私の彼氏よ。だから私のことは諦めて」
「嘘だ。嘘に決まってる。こんなおっさんが高梨の彼氏のわけがない。俺と付き合いたくないからそんな嘘を言ってるんだろう」
春菜は前田に近づく。そして前田の頬を平手で殴った。パシンッ!という音が響く。
「私の彼氏をおっさん呼ばわりしないで」
春菜は怖い顔で睨みながら言う。
前田少年はショックを受けた顔をしている。
「嘘だ。俺は信じないぞ。こんな男が高梨の彼氏のわけない」
「キスしたわ。私、誠さんとキスしたの」
「嘘だ」
「本当よ」
「じゃあ、ここでしてみろよ」
「わかったわ」
春菜が僕を見る。その目には私の言うことを聞いて!という願いが籠もっているように見えた。何か訳ありのようだ。
「誠さん、しゃがんで目を閉じて」
「わかった」
僕はしゃがむ。
「じゃあ、キスするわね」
「ああ、してみろよ」
「誠さん、キスするね」
「ああ」
僕の唇に柔らかいものが触れた。春菜の唇だ。数秒間、春菜はキスを続けていた。
「これでわかったでしょ。誠さんは私の彼氏なの」
前田少年はさっきよりもショックを受けた顔をしている。口が開きっぱなしだ。
「こんな男のどこがいいんだ?」
「誠さんは私を救ってくれた人なの。子供の頃、この神社で私は変質者に乱暴されそうになったの。そこに誠さんが現れて、私を救ってくれたのよ」
「俺にだって高梨を救う力はある。俺には空手で全国一位の力があるんだからな」
「救う力はあるかもしれない。でも私を救ってくれたのは誠さんなの。ピンチのときに私を救ってくれたのは誠さんなの。だから私は誠さんを好きになったの。この気持ちは一生変わらないわ。たとえ前田くんが本当に勇者になったとしてもね」
はっ?・・・勇者
「俺は近い将来勇者になる男だ。俺の中には勇者の血が流れてる。だから絶対に勇者になれる。いつか異世界に召喚されて世界を救うことになる。そんな俺よりもこの男がいいというのか?」
「そうよ」
「俺は認めない。この男が高梨の彼氏なんて絶対に認めない。認めるものか」
ああ、中二病だ。完璧な中二病だ。過去の僕と同レベルくらいの中二病だ。懐かしさと恥ずかしさを感じる。同時に羨ましさも感じる。純粋に勇者になれると心から信じているこの少年のことが。
「勝負しろ。俺と勝負しろ。あんた強いんだろ。勝負くらいできるよな」
「ずっとトレーニング、サボってたんだ」
「そんなの俺には関係ない。とにかく勝負しろ。そして俺に負けた場合、高梨と別れろ。わかったな」
「いいわ。誠さんが負けたら別れてあげる」
「約束だぞ」
「ええ、約束するわ」
「誠さん、お願い。勝負して」
「・・・わかったよ」
僕は頷いた。
「ありがとうございます。手を繋いでくれて。すごく嬉しかったです」
春菜が本当に嬉しそうに言った。
「うん。僕も嬉しかったよ。ありがとう。僕のような春菜から見たらおっさんみたいな男と手を繋いでくれて」
僕は照れくさかったので冗談を混じえてお礼を言った。
「誠さんはおっさんではありません。私は誠さんと年の差があると思っていませんから。私にとって誠さんは素敵な彼氏であってそれ以上でもそれ以下でもないんです。だから年の差もないんです」
「すごいね。春菜は。考え方が大人だよ。僕以上にね」
「みんなが私みたいな考え方をしてくれたら堂々と誠さんとお付き合いできるんですけどね」
「そうだね」
「ああ、誠さんと人目のある場所でも堂々と手を繋いて歩きたいです」
「ごめん。僕に勇気があったらその望みを叶えてあげられるのだけど」
「気にしないでください。私の望みを叶えてあげたいと思ってくれているだけでも私は嬉しいですから」
そのとき神社に少年が入ってきた。気の強そうな顔をしている。その顔が驚きに変わる。「高梨」と少年は言った。
「前田くん」
春菜は少し驚いて言う。
「こんなところで何してるんだ?」
「お参りしてたのよ」
「そうか。この人は誰だ?」
「飯島誠さん。私の彼氏よ」
ちょっと!春菜!何言ってるの!
「彼氏?冗談だろ?」
「本当よ。誠さんは私の彼氏よ。だから私のことは諦めて」
「嘘だ。嘘に決まってる。こんなおっさんが高梨の彼氏のわけがない。俺と付き合いたくないからそんな嘘を言ってるんだろう」
春菜は前田に近づく。そして前田の頬を平手で殴った。パシンッ!という音が響く。
「私の彼氏をおっさん呼ばわりしないで」
春菜は怖い顔で睨みながら言う。
前田少年はショックを受けた顔をしている。
「嘘だ。俺は信じないぞ。こんな男が高梨の彼氏のわけない」
「キスしたわ。私、誠さんとキスしたの」
「嘘だ」
「本当よ」
「じゃあ、ここでしてみろよ」
「わかったわ」
春菜が僕を見る。その目には私の言うことを聞いて!という願いが籠もっているように見えた。何か訳ありのようだ。
「誠さん、しゃがんで目を閉じて」
「わかった」
僕はしゃがむ。
「じゃあ、キスするわね」
「ああ、してみろよ」
「誠さん、キスするね」
「ああ」
僕の唇に柔らかいものが触れた。春菜の唇だ。数秒間、春菜はキスを続けていた。
「これでわかったでしょ。誠さんは私の彼氏なの」
前田少年はさっきよりもショックを受けた顔をしている。口が開きっぱなしだ。
「こんな男のどこがいいんだ?」
「誠さんは私を救ってくれた人なの。子供の頃、この神社で私は変質者に乱暴されそうになったの。そこに誠さんが現れて、私を救ってくれたのよ」
「俺にだって高梨を救う力はある。俺には空手で全国一位の力があるんだからな」
「救う力はあるかもしれない。でも私を救ってくれたのは誠さんなの。ピンチのときに私を救ってくれたのは誠さんなの。だから私は誠さんを好きになったの。この気持ちは一生変わらないわ。たとえ前田くんが本当に勇者になったとしてもね」
はっ?・・・勇者
「俺は近い将来勇者になる男だ。俺の中には勇者の血が流れてる。だから絶対に勇者になれる。いつか異世界に召喚されて世界を救うことになる。そんな俺よりもこの男がいいというのか?」
「そうよ」
「俺は認めない。この男が高梨の彼氏なんて絶対に認めない。認めるものか」
ああ、中二病だ。完璧な中二病だ。過去の僕と同レベルくらいの中二病だ。懐かしさと恥ずかしさを感じる。同時に羨ましさも感じる。純粋に勇者になれると心から信じているこの少年のことが。
「勝負しろ。俺と勝負しろ。あんた強いんだろ。勝負くらいできるよな」
「ずっとトレーニング、サボってたんだ」
「そんなの俺には関係ない。とにかく勝負しろ。そして俺に負けた場合、高梨と別れろ。わかったな」
「いいわ。誠さんが負けたら別れてあげる」
「約束だぞ」
「ええ、約束するわ」
「誠さん、お願い。勝負して」
「・・・わかったよ」
僕は頷いた。
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