MAXコーヒーから始まる糖度MAXなこじらせ魔法使い達

琉水 魅希

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第1章 MAXコーヒーが繋いだ奇跡

第27話 帰宅…そして物語は動き出す。

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 帰りは俺が友紀さんと氷雨ちゃんを送る事になった。
 これは真理恵さんの計らいだ。
 「家近いんだし帰りはまこPさん送っていきなさいよ。つもる話もあるでしょうし。」
 積もる話って何さとは思ったけど。

 そんなわけで送迎中。

 流石に助手席に友紀さん、後部座席に氷雨ちゃんというわけにもいかないので2人とも後部座席に座っている。

 といっても氷雨ちゃんは睡魔に負けて眠ってるけど。

 ついでと言ってはなんだけど、衣装はそのまま氷雨ちゃんにプレゼントだそうだ。ウィッグも。

 まぁ流石に氷雨ちゃんちに置くのは悪いし洗濯も必要だしで、普段は友紀さんちに保管だそうで。
 
 あれ?でもそんなに広かったっけ?と思ったら隣の部屋も友紀さんちだって。
 
 二部屋借りてるとか凄いよ、身内価格で一部屋1万円とはいっても。

 片方の部屋は衣装保管部屋だそうです。

 「もうすぐ着きますよ。」

 「……」

 バックミラーを見ると氷雨ちゃんだけでなく友紀さんも寝ていた。

 「流石に心のシャッターしか切れないな。」

 着いてから起こせばいいか。

 それから5分もしないうちに駐車場に着いた。

 「着きましたよ。」
 と、何度か声を掛けるも起きる気配がない。
 う~ん仕方ない。運転席を降りて後部座席のドアを開ける。

 「着きましたよ~」
 軽く身体をゆさゆさと揺らす。

 しばらくしてゆっくり目を開けた友紀さんは…

 「ひっいやあああぁああ」

 とビックリするような大声をあげた。

 そしてその表情はものすごい恐怖に怯えた顔だった。

 今まで一度も見せた事のない表情に俺は戸惑いを覚えた。

 その声にびっくりした氷雨ちゃんが起きた。

 「だ、大丈夫?」

 「はぁはぁ…あ、ご、ごめんなさい。大丈夫です。ちょっと怖い夢を見ていたようです。」

 それにしては物凄い表情と疲労が見えるけど…

 「おねーちゃんだいじょうぶー?じぇいそんでも出てきたの?」

 「だ、大丈夫。怖い夢だったけど大丈夫。」

 「とりあえず荷物降ろしますね。」

 トランクを開けてキャリーケースを取り出す。

 荷物を引いてまずは実家の方に氷雨ちゃんを送り届ける。

 その間友紀さんは無言だった。

 ピンポーンとインターフォンを鳴らすと暫くして霙さんが出てくる。

 「あら越谷さん、帰りは貴方が送ってくれたのですね。ははーんこれはあの人の差し金ですね。」
 妹である霙もまた姉の付き合いで何度か三依達との面識はある。

 「あぁ、真理恵さんに送ってけって。朝は別だったのは気になりますけどね。現地で会うまで聞かされてませんでしたし。」

 「それはあの人の常套手段かな?驚かせたかったんだと思いますよ。帰りは送らせてポイント稼ぎじゃないかな?」
 何のポイント?と思ったがわからなかった。

 再び少しおねむな氷雨ちゃんを霙さんに返した。

 「あらあら、おねむなのね。」
 4歳児ですしね。あれだけはしゃいでいたら眠くもなりますって。

 「それでは…」

 「お姉ちゃんどうしたの?」

 「あぁ、帰りの車の中で怖い夢を見たって。起こした時大きな声でいやーって。それから大丈夫だとは言うけど元気なくて。」

 「あ、わかりました。お姉ちゃん、今日は実家の方に来て。」
 と言い氷雨ちゃんを抱く反対の手で友紀さんを引っ張っていく。

 「では荷物は俺運びます。」

 「助かります。」

 そう言って霙さんが二人を連れて行った。

 
 荷物を玄関中の脇に置き、帰ろうとすると呼び止められた。

 

☆☆☆

 「越谷、ちょっと良いか。」

 呼び止めたのは同級生結城篤志だった。

 結城は俺を庭に案内して軒下に腰を掛けて話始めた。

 「友紀姉さんの様子がおかしかった件、さっき霙にちらっと聞いた。そして表情も確認した。」

 「それが何かあるのか?」

 「あぁ、これはいつか本人の口から語られる事があると思うから、その時に聞いてほしい。」

 結城は神妙な顔でその後の言葉を紡いだ。
 友紀さんは過去怖い目に合っている。それは異性、つまり男性から恐怖・嫌悪を感じる程の嫌な体験をさせられたことがあると。
 先程の友紀さんはその時の恐怖の表情に近かったと。

 「だが、俺は起こしただけだぞ?」
 
 「あぁ、多分お前に対して恐怖したわけではないだろう。日中は仲良くやってたんだろ?恐らくはその時の事を夢で見ていたんだと思う。」

 だから起きた時いきなり目に入った異性…俺に対して夢がフラッシュバックしたのだろうと。

 「それは…個人の大分突っ込んだ領域だよな。俺から何か聞こうとするのは間違ってる。」

 「そうだけどな、本当にここまで心を許してるのはお前だけなんだよ。言い出すのは本人の自由だけど、それとなく支えになってやって欲しいと思ってる。嫁さんの姉さんだからな。笑っていて欲しいと思うんだよ。」

 「なぁ」

 「なんだ?」

 「俺は…惚れてるのか?確かに友紀さんに笑顔で居て貰いたいと思ってる。だけど…俺にも闇がないわけじゃない。」

 「そうだな。俺は高校時代のお前を知ってる。つまりはお互い何かを抱えてるってわけだ。2人とも話したくなったら話せば良いと俺は思う。」

 「…だからこの胸のもやもやの正体がわからない。」

 「それと、さっきの質問の答えだがな、それこそ自分の胸に聞いてみろだ。」
 まったく世話の焼ける同級生だと思われただろうか。

 「もっと言うならな、高校の時のあれは…お前悪くないだろ。お前がトラウマになる必要は全くない。」
 だとしてもそれ以来女という生き物には距離を置くことにした。
 真理恵さんのような人なら別かもしれない、最初から彼氏持ちだったしすぐ結婚したし。

 それからすると友紀さんが平気なのは…そういうことなのか?

 「心配性で勇気付けてくれる同級生を持って幸せだよ。」

 「そうか。もしかすると同じお義父さんお義母さんを持つことになるんだ。少なくとも友紀さんを泣かすようなことのないようにな。」

 「あぁ。わかってる。ってお前その前に何か言わなかったか?」

 「いいや。お前も素直になれって話だ、重く捉え過ぎ。お前は今のままで充分元気付けてると思うぞ。」

 「……とりあえず今日は帰るわ。流石に友紀さんも疲れてるだろうし。」

 「わかった。でもメールでもいいから連絡いれとけよ。」

 
☆☆☆☆☆

 「あれ?越谷さんは…?」
 「あぁ、今さっき帰った。友紀さんも疲れてるだろうし今日はもう休ませてやってくれって。」
 するとのそりのそりと友紀が玄関に歩いてきた。

 「あぁぁあ、真人さんは?どこ?……私が拒絶したから?帰っちゃった?わぁあぁあああ」
 頭をぶんぶん振り乱して泣き叫ぶ友紀。

 それを抱きとめて落ち着かせようとする霙。

 「ちがうよ。今日はもうお姉ちゃんも疲れてるだろうからって休ませてやってて言って帰ったって。」
 「ああああああぁ。わたしのせいで……」
 友紀の豹変ぶりも普通ではなかった。
 
 それからしばらく泣いていたせいで真人からのメールに気付かなかった。
 「今日はお疲れ様でした。色々あったけど今日一日楽しかったです。またどこか行きましょう。今日はゆっくり休んでください。」

 と。
 そのメールに気付くのは日が変わった翌日だった。



☆☆☆☆☆

 「うー恥ずかしい」
 「大丈夫だよお姉ちゃん、私と旦那しか聞いてないから。」

 「うーだってー」
 妹の前で取り乱して泣いたのだ。恥ずかしくないわけがない。
 
 あの後落ち着かせてて布団に寝かせたら朝まで起きてこなかった。
 風呂に入って着替えてってところで妹にばったり会って今に至る。

 「夢に…出てきた。あの時の事。あの……そしたら目が覚めていやーってなって、真人さんに対して怯えてる風になって。」

 「すぐに夢だとわかったから謝ったけど、気まずくて。気付いたら実家にいて…真人さんは帰ってて…」

 「うん。越谷さんはお姉ちゃんと氷雨を連れて帰ってきた後、旦那と少し話をしてた。」

 「一応何を話したのか聞いたけど、お姉ちゃんには人に話せない過去がある事を伝えたって、いつか話せる時がくるのを待ってやってくれって。でも話してくれなくても責めないでくれって。それだけ酷い事だしね。」

 「私もあの事は言う言わないはお姉ちゃんの自由だと思う。ただ、どちらも傷着くのは覚悟しないと、それでも乗り越えられると思うけどね。」

 「……言わないと前に進めないというなら…言う。でもまだ勇気は出ない。」

 「そこはお姉ちゃんのタイミングで良いと思う。お姉ちゃんが越谷さんの事をどう思ってるかだよ。」

 「……すき…なのかな。」

 「そこはお姉ちゃんの気持ちでしょうよ。でもそうね、端から見ると貴方たちはカップルにしか見えないよ。」
 まったく世話のかかるお姉ちゃんだこと。

 「とりあえず携帯チェックしたら?何か連絡入ってるかもよ。」

 言われて携帯を開くと昨日の夕方でメールが入ってた。
 そこには楽しかったということとゆっくり休んでと心配する内容だった。

 「っぅぅぅぅ」
 突然泣き出す姉。それに驚く妹。
 「どしたの?」

 「楽しかったって、ゆっくり休んでって。」

 「ほらみなさいな。越谷さんだってお姉ちゃんの事しか考えてないって。」

 返事のメールを打って直ぐ返信した。この場合確認してから直ぐだけれど。

 「返信遅くなってごめんなさい。あの後寝てました。このお詫びとお礼はまた今度したいです。それと、私も楽しかったです。またどこか連れて行ってください。」



☆☆☆

 「あ、返信きた。」

 翌朝朝ごはんを食べていると携帯のメール受信音が鳴った。

 「あ、やっぱり寝てたのね。疲れてたみたいだしな。結城があんなこというから余計気になってしまったけど…」
 というかお詫びとお礼って。これいたちごっこになりそうだな。

 俺はやっぱり惚れてるのだろうか。
 そうでなければこんなに気になったりもしないかもしれないか。
 でももう騙されるのも嵌められるのも嫌だ。
 もちろん友紀さんの言動にそんな打算は微塵も感じないけど。
 やっぱりどこかで恐れてる。
 だからこそ女性と関わりの少ない会社を選んだし。
 俺も大概だな……

 自分の事を話せる日はくるのか?
 いや、話さなければならないんだろうな。
 
 もう2月になるけど…まだ1ヶ月経ってないのにここまで頭の中が友紀さんでいっぱいになってるなんて。

 とりあえずは返信しよう。

 「元気でたようでよかったです。お詫びとかお礼とか気にしないでと言っても気にしちゃうんですよね。なのであまり気張り過ぎて無理しないようにしてくださいね。倒れたりしたら意味ないので。」

 メールの返事だしこんなもんだろう。

 そして何の変哲のない日常に戻る。

 あれから2週間近く。

 特に何もなく過ぎていった。

 たまにメールしあうくらいで本当に何も変わらない日常だった。

 今日は2月14日、世間ではバレンタインデーとやらで勝手に賑わっている。

 バレンティウスがどうとかお菓子屋の陰謀とかどうでも良いんだよ。

 いや、ちょっとは期待してないわけではないんだよ。

 義理でも良いからなんて思ってないんだからねっ
 
 男のツンデレは誰得だよ。

 会社の事務員からのチロルチョコくらいしかない。

 まぁ変に関わると後が怖いしこんなもんで良いとも思ってる。

 そしてこういう日に限って残業で帰りが遅くなるもんだ。

 家に帰ると22時も回っていた。

 「あれ、部屋の前に誰か…」

 部屋の扉に背中をくっつけ体育座りをして顔を埋めている友紀さんがいた。
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