ヤンキー女子は純情可憐R ヤンキーがデレても「ヤンデレ」と呼ぶのです。

琉水 魅希

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第6話 種田恵の1年(恵視点の回想)

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 あたしは学校ではほとんどぼっちだ。
 昔のヤンキーは数人でつるんでいたらしく、一人で寂しくブイブイ言わせてなんてことはなかった。
 しかしヤンキーだからって誰彼突っかかるわけでもないし、積極的に暴力を振るっているわけでもないし、飲酒喫煙をしているわけではない。
 だって将来丈夫な子供を産めなくなるかも知れないじゃないか。

 あたしが恐れられているのは入学早々のあの事件のせいだ。
 元々喧嘩っ早い性格だとは自分でも感じている。
 
 あの日もクラスメイトの女子が先輩女子に絡まれ、慰謝料として金を払えと詰め寄られていた。
 後で聞いた話も総合すると、その先輩女子には惚れてる男子がいて、その男子が絡んでいる女子の事良いなと言っていた事によるもの。
 勝手な嫉妬からくるものだった。
 私は傷付いた、だから慰謝料として金を払え、ほら、跳ねてみい。
 何だその小銭の音は、全部出せとなったわけだ。
 カツアゲするのに小銭って……普通札だろう。財布出せだろ、靴下の中に隠したお札やショーツやブルマ―に縫い付けたお札も全て出せ、だろう。

 脱線しかけたが、とんだ因縁を吹っかけられた彼女、「朝倉澪」を助けるべくその輪の中に入った。

 「センパイ、カツアゲの仕方間違ってますよ。ほら、アンタ靴下の中の千円札と、下着に縫い付けてある千円札と、ヘアゴムに縫い付けた千円札と……全部出しな。」
 あたしはくるっと後ろを振り返り、朝倉澪に向かっていった。
 アレ?なんかおかしくない?あたし一緒にカツアゲしてない?

 「え…ぁ…えぇ?ど、どうしてそれを」
 隠し場所が当たっていたことに、あたしも先輩達も驚いていた。
 本当にしろ嘘にしろ、このノリの良さを気にいったのは覚えている。
 もしかするとあたしが出て行かなくても彼女一人で切り抜けていたかもしれない。

 「と、まぁ飛んでみぃとか跳ねてみぃとか、そんな小銭だけせしめ取ろうなんてショボイっすね。」
 その言葉にイラっときたのかセンパイは掴みかかってきた。
 「あ、これ正当防衛ですよねパイセン?あたしよりでかいやつはぬっころす。」

 その理屈で言うとほとんどの女子がぬっころされるよ、と後ろから聞こえた気がする。

 先輩が殴りかかってきたのであっさりそれを左手で受け止める。

 「見よう見まね二重の極みっ」
 右手で昔読んだ漫画の極意を放つ。
 肋骨に当たったのか先輩はその後入院したそうだ。
 同じように周囲にいた先輩たちもフルボッコにし、あたしは見事停学。

 一応朝倉澪が事のあらましを先生に言ったみたいだが、ほぼ同時に噂が出回っていた。
 種田恵が気に入らない先輩を校舎裏に呼び出しボコボコにして病院送りにした、という噂。

 あの場を見た生徒がいたらしく、伝言ゲームのように真実や事実は捻じ曲げられ広まっていった。

 停学を受けたのも痛かった。
 そのせいで弁明する事も出来ず、ボコったのは事実のため下手に訂正できず。
 停学中の間に噂だけが広まり、あいつは危険だ近寄るなとなっていたようだ。

 元々近所でも悪ガキとして名前が知られていた先輩達だったのも拍車をかけたようだ。

 とにかく元々仲の良い友人がいたわけでもなかったが、ほぼぼっち生活が始まった。
 何人かを除いて。


 その中の一人があの時の彼女、朝倉澪だった。

 父がバッティングセンターを経営しているから、嫌な事があったらボールを打って発散すると良いよと。 
  
 1年の夏くらいからストレスが溜まるとバッティングセンターに通う日が増えていった。
 最初はろくに当たらなかったが、前に飛んだ時は嬉しかった。
 それが段々増え、ジャストミートした時の快感は他では表せなかった。

 気が付くとホームランボードに当たるくらいには上達していた。
 あの時は澪と一緒にハイタッチしたり、ぴょんこぴょんこ跳ねたりして嬉しさを共有していた記憶もある。


 ある時からバッティングセンターに通う日が段々と少なくなってきていた。
 ストレスが減ってきていたのだ。

 2学期のある日、担任のセンコーから呼び出しを受けて、出席日数と成績がよろしくない。
 このままだと進級が危ないと言われた。

 確かに停学を受け、学校に行くのが億劫になり、サボる事が増えていたとは実感している。
 他の学生のように仲良く喋る友達も極端に少ないし、テスト勉強を一緒にしようなんて事もない。
 成績が下がるのは当然の事だった。

 そこに偶然今の話を聞いてしまっていた生徒から提案を受ける。
 自分もそろそろ成績について思う所があるから、部活のない火木だけでも図書室で勉強しないかと。

 本来なら断っていたところだが自分の欲求に素直なのか、毎日と言わず火木をごり押そうとする辺りに嫌気はなかった。
 手を差し伸べて何か良からぬ事を考えるなら、毎日とか土日とかを提案する。
 少なくとも自分ならばそう思う。

 特に目標があるわけではないが、高校は卒業しておきたかったため、その提案を受けた。

 「だけど良いのか?あたしは……」

 「ん?お前はまさか足し算引き算も出来ないのか?それなら一緒にと言った言葉は撤回するが。」
 流石にこの学校の生徒、頭悪くないだろう。
 
 「あぁ、いや。噂とか。」

 「俺はそんなもん気にしないぞ。自分の眼で一部始終を目の当たりにしていたならともかく。どこでねじ曲がるかわからない噂など知らん。」

 「というより、部活に勤しんでいて自分の事しか頭が回ってなかったからな。同じクラスなのに守ったり庇ったり出来なくて悪かった。」

 「お、おう。そんな事言う……」

 「普通に見れば可愛いのにな。」
 天然爆弾が投下された瞬間だった。
 きっと本人にはそんな深い意味があって言ったわけだはないと思う。

 ただ、あたしがどこかで意識するようになったのはこの時からだと思う。


 それから図書室での勉強会が始まるわけだけど……

 なんやかんや平均点が取れるくらいにはなっていた。
 これ、最初からきちんと授業受けてたら上位にいけてたんじゃと思うくらいには手ごたえをかんじていた。

 「そりゃ、真面目に集中した結果だろ。」
 と、言っていたけど。
 真面目に集中して見ていたのは……
 あーもー
 何を回想してるんだか。

 そういや、としてクリスマスに渡したり、としてバレンタインに渡したりもしたけど。

 ありがとうとは言ってくれたけどもそれだけだった。
 一応3月に貰ったものには礼をしないとなとお返しはくれたけども。
 あれ絶対に業務的だった。

 それで久しぶりにバッティングセンターにも通うようになっていた。
 「あの朴念仁。」
 「あのヘタレ。」
 あ、これはブーメラン。

 このもやもやしたものに関するモノはまた別の機会にまとめよう。

 少なくとも、変な意識をするようになってから、あいつの前だとたまに上手く喋る事が出来なくなっていた。


 今日、久しぶりに2人で会ってどうなる事かと思ったけれど。
 お互いホームランを打って気分が良い。
 あのハイタッチは忘れられない。

 「あ、そういやこの手、まだ洗ってない。」
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