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5 屋上イベントとその反省点について
しおりを挟む屋上での予定外の遭遇を経て、俺は教室に戻ってきた。
心身ともに疲れ果て、机に突っ伏していると、そこにのそのそと近づいてきた男が一人。
「おやおや。随分とお疲れのようで?」
この無駄に余裕のある爽やかな声。見なくても分かる、レンだ。
顔をあげれば、案の定、外面完璧モードのレンが、俺の机に頬杖をついて覗き込んでいた。
こいつの顔を見るだけで、若干イラっとするのはなぜだろう。
……いや、原因はわかってる。どうせお前のせいだ。
「どうだった、屋上の女神攻略イベントは。会えたんだろう?」
「うるせえ! 弟に遭遇して、弁当シェアして終わったわ!!」
思い出すだけで胃が痛い。
「ユナ先輩は風邪で休みだと。さてはお前、仕組んだな!」
「心外だな。俺はいつでも親友の恋路を応援してるさ」
その顔。百点満点のうそつきの顔だ。
「応援してるやつは、攻略イベントを強奪しない! 今朝のカレンイベントを忘れたとは言わせねえぞ」
「ふむふむ。つまり君は、俺がひったくり犯を秒で片付けたのが悪いというんだな」
「そうだよ! 空気読めよ」
「ごめんごめん。でもあれは本能的に体が動いてしまったからなあ……ほら、女性の危機って助けないと心が痛むだろ?」
「イケメンぶるんじゃなあああい!」
思わずバンッと机を叩いてしまう。
案の定、教室中の視線がこちらに集まってしまった。
俺×イケメンの痴話喧嘩、と受け取られたのか、女子達がざわざわし始める。やめろ。そんな視線で見るんじゃない。妄想は本人達のいない場所でやりなさい……じゃなかった、こっちは真面目に人生賭けてるんだよ!
「ま、応援してるとは言ったけど、手伝う気はさらさらないからな」
ほらな。こういう奴ですよーみなさーん。
「しかしいくら俺でも、他人の体調なんて操作出来るわけないのに、責任転嫁もいいとこだ」
「はいはい悪かったよ」
「俺が犯人でした」って言えば、その端正な顔に一発ぶち込もうと思ったのに。
「ふむ、ところで弟……ということは、屋上にいたのは白銀カイだな」
そう言うと、さりげなくレンが椅子を引いて、俺の前に座る。どこの彼氏ポジだよお前。
「ああ、そう言ってたな」
「うちの生徒会長の」
「そうそう、生徒会ちょ……え、あいつ、生徒会長なの?」
声が裏返った。
「知らなかったのか? 正真正銘、うちの学校の生徒会長。『恋トモ』の攻略本にも小さく載っていたと思うがな。全く、お前はハーレムを作ると言っておきながら、やる気はあるのか?」
痛恨の一撃。
この世界、俺の知ってる『恋トモ』と違いすぎる……
「相手は成績優秀、運動神経抜群、喧嘩も強い。性格は無愛想……って話だが」
レンがちらりと俺の顔色を窺う。
俺は情報過多で、思考が止まっていた。
「弁当シェアするほど仲良くなるなんて、しっかりフラグを立てて、好感度上げたじゃないか」
「俺が目指してるのはガールズハーレム。なんでそっちになるんだよ」
涙目で抗議する俺に、レンはにこやかに頷いた。
「よかったじゃないか。俺以外の男からも好かれて」
「やめろ! 誤解を生む言い方すんな。俺以外ってなんだよ、俺以外って」
「案外そっちの方向の方が向いてるんじゃないか、お前」
「やーめーてっ!」
にやにやと楽しそうにレンが笑う。
俺は机に突っ伏したまま、現実逃避するしかなかった。
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