災厄の魔導士と呼ばれた男は、転生後静かに暮らしたいので失業勇者を紐にしている場合ではない!

椿谷あずる

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10.ネズミパニック!?

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「え? ネズミ退治?」

 のんびりと穀物の香りに包まれていた昼下がり。ゼルファスとリアンの元に足を運んでいたのは、一人の若い村人だった。

「実は最近、穀物の倉庫にネズミが巣を作っちまって困ってるんだ」
「だから倒してくれって? 俺たちに?」

 ネズミの倉庫荒らし。それは確かに困った問題だ。でもそのくらいなら、罠を仕掛ければ人間が処理するよりもスマートに対処出来るだろう。 

「それは俺じゃなくて、罠を……」
「いやそれが。何度か罠を仕掛けてはいるんだが、逃げられているんだ。どうやらネズミの中に知恵のある、ネズミの魔物が紛れ込んでるらしい」
「……ネズミの魔物か」

 彼の予想は恐らく当たっているだろう。
 ネズミの魔物というのは、ネズミというだけあって、魔物としての力は弱い。けれどその代わり、生き延びるための頭脳が優れている。普通のネズミを使役して、集団のボスになっていることも、大いにありえる。

「頼む。さっきの活躍を見込んで、頼むネズミ退治を手伝ってくれないか?」
「……だそうだけど、どうする?」

「やる」

 リアンは二つ返事で承諾した。
 
===

 これでまた、リアンに自信が付けばいいと、ゼルファスは思っていた……けれど。

「待て、リアン! 今はやめろ!!」
「え、どうして?」

 きらりと眩く剣先が光る。かと思えば、一瞬にして閃光が走った。
 ドゴン。
 激しい破壊音。まるで朝食での出来事を彷彿とさせる。

「ああああああっ」

 ゼルファスは頭を抱えて青ざめた。

「惜しい。あそこにちょうど集団で固まってたのに……」
「固まってたのに、じゃねえよ! あれはアイツらにお前がおちょくられてたんだ! 罠だよ、罠!」
「む。じゃあ逃げられるより早く、剣を……」
「や、め、ろ!」

 さっきからネズミ達に遊ばれている。出ては消え、出ては消えを繰り返すネズミ。その度にリアンは攻撃を繰り出すので、倉庫はめちゃくちゃだ。
 あとでゼルファスが魔法で直せるとはいえ、さすがに見逃していいでもない。
 
「チチチチ……」

 ネズミの魔物は小馬鹿にするように、部屋の片隅で指示を出している。やれるもんならやってみろ。言葉は通じなくても、まるでそう言っているかのようだった。

「あ、ゼルファス危ない」
「あん?」

 カコンッ。
 たらいがゼルファスの頭にクリティカルヒット。

「大丈夫、ゼルファス?」
「チチチチチチ」
「……こんの、いい加減にしろよ。クソネズミ」

 ゼルファスの鋭い眼光と並々ならぬ圧が場を支配する。

「何これ、冷気?」





 数秒後、ネズミは跡形もなく姿を消した。
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