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25.唐突に登場する謎の薔薇
しおりを挟むイマはつい先程の目の前で起こった出来事を脳内で反芻していた。
――あり得ない。
絶対に倒せるはずがないと見限っていた男が、いとも容易く目の前の魔物を両断する。自分や他の仲間たちには到底辿りつかない圧倒的な力の差。
それはかつての勇者リアンそのものだった。
「……じゃ、やることも終わったし帰るか」
「そーだね」
まるで一日の農作業を終えた農夫のように、帰路への旅路につこうとする二人。なんて事なく立ち去る彼らを、ついそのまま見送りそうになったところで、我に返ったイマは咄嗟に声をあげた。
「ま、待て!」
「?」
足を止め、振り返った二人の視線がイマへと集まる。
「リアン、お前戦えるようになったんだろ?」
しんとした広場の中心にイマの若々しい声が響いた。
「じゃあさ、またこっちに戻って来ないか? また前みたいに一緒に旅しよう! 今のお前なら歓迎されると思う!! やったじゃないか!」
言葉に悪意はなく、心の底からそう思っている。
ゼルファスには、そしてもちろんリアンにも、それはよく分かった。
キラキラとした期待に溢れた眼差しは、主人公復活のハッピーエンドを待ち望んでいる。リアンが駆け寄って彼の手を取れば、あとはエンドロールが流れてくる。
きっとそんな未来もここには確かにあったのだろう。
でも、そうはならなかった。
「うーん、別にいいかな」
イマを見つめ、リアンはあっさりと答えた。
「えっ?」
「だって俺がいなくても、世界は平和になってるし、それならそれでいいよ」
「は? え?」
訳がわからない。そう言わんばかりに、イマは口をぱくぱくさせた。
「じゃ、じゃあ……」
「俺はみんなの元に戻りません。勇者リアンはその辺の魔物に倒されて死んでしまいましたとさ、ちゃんちゃん」
「は……はあぁ~~??」
イマの驚嘆する声が、先程にも増して広場に響いた。
リアンの隣では、ゼルファスが彼に憐れむような視線を送っていた。
ゼルファスが言う。
「なあ、リアン。なんつーかさ、いくらなんでも偉大なる勇者様の最期がそれじゃ、今まで一緒に戦ってきた仲間たちが気の毒では?」
「うーんそれじゃあ、少年を助けるために強大な魔物の前に飛び出してやられたとか? 全身に魔力を受け、最後は自爆。氷の粒となってキラキラと降り注ぎ、そこには一輪の花が残されていましたとさ……みたいな?」
「それはそれで嘘くさい。なんだよ、最後の花の存在は」
「えー。ゼルファスはいちいち細かいなぁー。雰囲気だよ、雰囲気。その名も『リアンローズ』!」
「絶対いらないな」
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