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26.たぶんツッコミレベルが全然足りない
しおりを挟む茶番だ。
茶番を見せられている。
目の前で繰り広げられている荒唐無稽な会話を、イマはぽかんと口を開けて聞いていた。
――それで本当にいいのか……?
そう思った時、イマはハッと我にかえり、その開けっぱなしだった口をキュッと結んだ。
「違うだろ。何言ってるんだ! じゃあこの魔物はどうやって倒したっていうつもりだよ!? 討伐はともかく、足止めは災厄の魔導士の力ありきだろ! まだそんな危険な力が存在するって明るみになったら、大問題に……」
激しく猛抗議を入れる。
これで少しは神妙な顔になるだろう。
イマが「これでどうだ」という顔を浮かべようとした時だった。
「あーはいはい。じゃあお前がなんとかして倒したって事にしてくれ」
「あ、俺のもそういう事でよろしくー、イマ」
「こ、こいつら……」
ふざけてる。全然危機感が無い。
面倒ごとは避けたいと言わんばかりに、仕事を押し付けてくるゼルファスと、それに倣ってパスしてくるリアン。
リアンはそこまで知恵が回らないタイプだったはずなのに、この男と出会って変わってしまった。いいのか、そんな展開? いや、絶対良くない!
「リアン、いいのか!?」
もう一度だけ声を張る。
「そいつは災厄の魔導士なんだぞ!」
「いいも何も災厄の魔導士は俺が昔倒したし。この人はただのゼルファスだし」
「つーか、元が災厄の魔導士なんだっての。今はただの薬師」
「うんうん、そうだよねー」
まるでいつも繰り広げている日常漫才のようなゆるい空気で会話が進む。場違いなのは自分か? そんなはずがない。
半ば意地になってイマが声を荒げる。
「元だなんて知るか! お前はいつかきっとリアンを不幸にする!」
「は? なんだよそれ。一体どこの世界の修羅場だよ。まるで俺が、お姫様でも攫って駆け落ちする男みたいなんだけど」
「うわ。ゼルファスの解像度が高くて怖い……するの? 駆け落ち」
「うるせえ、誰がするか」
何を言っても無駄だった。
リアンへの忠告も、ゼルファスへの誹謗も。
「なんなんだよ、お前ら……」
イマの嘆くような言葉は泡のように小さくなって消えていく。
もういいだろうと背を向け過ぎ去ろうとする二人に、イマは最後の声を振り絞って呟いた。
「……いつか……いつかお前ら二人に討伐命令が出ても知らないからな」
二人は一瞬足を止める。
振り返って、そして――。
「「大丈夫、たぶん負けないから」」
かつて世界を守っていた元勇者とかつて世界を滅ぼそうとした元災厄の魔導士は、声を揃えて答えた。
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