10 / 28
10.ホラー展開にはまずならない
しおりを挟む教室の外から聞こえる音。南瓜君の一言は、室内の緊張感を一気に増幅させた。
私も一緒に耳を澄ます。
ギシギシ。
「ひっ! き、聞こえますぅ」
八雲ちゃんが椅子から音を立てて飛び上がった。
気のせいだよと言いたいところだが、これは確かに聞こえる。
「くだらないな。どうせ顧問が遅れてやって来たんだろう」
「そ、そうですわね。きっとそうですわ……!」
「いや、申し訳ないが、顧問の先生は現在欠番だ。なにせ、即席で作った部活だからな」
「……それは、部活として成立するのかな?」
四季先輩の問いに、サラサラと会長は「顧問の募集について」と黒板に書き加えた。違う、今じゃない。
ギシ……ギシ……。
ギシギシギシ。
「あああ、来る! 来ますよ! 心霊現象!? カ、カメラ、カメラはっと……ああっバッテリーが無い!」
「兄様! 大丈夫ですよ! 相手が幽霊だろうと殺人ピエロだろうと、僕が根絶やしにします!」
「みんな……闇に落とされるのです……」
「すやー」
各々が好きなことを言っている。フリーダム。
その間にも、音がどんどん近づいてくる。私はその様子をただ黙って眺めていた。
「おや? こまり君、君は怖くないのかね?」
「いや、どうせ他の部活の人が通り過ぎるだけかなって思って」
みんなが部活動に励む今のこの学校の状況なら、そういう事もあるだろう。
だから、そんなに怖くない。
「いや、今この校舎は、うちの部の貸し切りのはずだが?」
会長がぽそりと告げた。
「えっ?」
じゃあ誰が?
……ギシギシ。
誰がの影が、すりガラスの向こうを通った。
息をのむ。
そして……ガラッ。
「君たち、早く帰りなさい」
一瞬の静寂。
その後、誰かが小さく「なんだ、先生か」と呟いた。
「下校時間は過ぎてるよ」
先生は懐中電灯を手にして、廊下からこちらを窺っていた。
時計を見ると夜の七時。うん、確かにいい時間。
「……じゃあ、帰ろっか」
最初に立ちあがったのは四季先輩だった。
みんなもそれに合わせて、ガタリと椅子から立ち上がり下校の準備を始める。
最前列でその様子を見ていた聖会長が、なんてことなくぽつりと呟いた。
「ふむ。結局、活動内容は決まらなかったな」
「もういっそ、『活動しないこと』を活動内容にするのです……」
「部活動だからな、さすがにそうはいかない」
会長は軽く笑みを浮かべながら小雨ちゃんに歩み寄ると、猫ぬいぐるみの頭をそっと撫でた。
「あと意見を言っていない者は……」
「こまり君じゃない?」
二千翔君の一言。余計なことを。
会長の視線はくるりと私の方へと向いた。私はすぐさま首を大きく横に振る。
「いえ、別に私は」
「この際だ、なんでもいいから気にせず、とりあえず言っておくといい」
善意百パーセントの会長の視線。なんて眩しいんだ。ここが真夏か。
「いえいえいえ! 滅相もない! 私が出来る意見なんて何も……」
「ほらほら、こまり君。時間、時間」
にこやかに二千翔君が腕時計を叩き合図する。
本日二度目のこのやりとり。無駄な時間をかけるなってか。
「あのねっ、二千翔君は少し黙っ……」
あ、やば。
そう思った時にはもう遅かった。
張り上げた声のせいで、みんなの視線が一斉に私に集まる。
目の前には、真面目な顔で答えを待つ会長。
逃げ場、なし。
「……分かりました。では、私の意見は――」
覚悟を決めて、私は答えを口にした。
0
あなたにおすすめの小説
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
出戻り娘と乗っ取り娘
瑞多美音
恋愛
望まれて嫁いだはずが……
「お前は誰だっ!とっとと出て行け!」
追い返され、家にUターンすると見知らぬ娘が自分になっていました。どうやら、魔法か何かを使いわたくしはすべてを乗っ取られたようです。
その断罪、三ヶ月後じゃダメですか?
荒瀬ヤヒロ
恋愛
ダメですか。
突然覚えのない罪をなすりつけられたアレクサンドルは兄と弟ともに深い溜め息を吐く。
「あと、三ヶ月だったのに…」
*「小説家になろう」にも掲載しています。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる