第25文化部――活動内容、未定。

椿谷あずる

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12.活動問答①

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「何かをしているフリといっても何をすればいいのかしら。……あ、小雨さん、そちらの猫さんもお茶いかが?」
「いただく……のです」

 とりあえず始まった第25文化部の活動。
 とはいえ実態は、伍鳥羽先輩の紅茶とお菓子を楽しむだけのティータイム部と化していた。

「……寝てていいですか?」
「そう言いながら九重君、もう寝てますぅ……」

 八雲ちゃんが困り顔で彼を揺さぶった。

 予想通りまとまらない。
 四季先輩が苦笑いを浮かべながら「会長、どうする?」なんて、助け船を出していた。
 その問いに、こくり、と静かにうなずく会長。
 そして机に伏せていた三枚の紙を表にした。

「それは?」
「そんなこともあると思ってな。一応、こんなものを持参した」
「……え?」

 会長は丁寧に紙を重ねるとそれを、目の前で読み上げた。

「一つ、野良犬が花壇を荒らして困っている。一つ、図書室でいつまでもお喋りしている生徒がいて勉強の邪魔。一つ、購買部のあんぱんの売れ残りが多くて困っている――以上だ」
「……え、えっと、念のため聞くけど、それをどうするつもりかな?」

 四季先輩が尋ねる。

「解決しようと思う」
「……その紙ってどこにあったものなの?」
「生徒会の目安箱だ」

 堂々と答える聖会長。
 生徒会の案件を、あえてこの部活で解決するということに、戸惑いを見せる様子は一切無し。それでいいのか。

「それは生徒会の仕事だろ。生徒会で解決しろ」

 黙って聞いていた神楽先輩の、冷静なつっこみが入った。やっぱりそうなりますよね。

「しかしそれでは、今日の活動がなくなってしまう」
「いいんじゃないですか、それで。あ、俺このあとバイトなんで、顔出したし帰りますねー」

 言うだけ言って南瓜君、即離脱。相変わらずフットワークが軽い。

「俺は関わらんぞ。勉強でもしていた方がマシだ。生徒会の案件を解決することが、『何かをしているフリ』に該当するなら、勉強していることも、『何かしているフリ』になるはずだ」
「ふむ。まあ、いいだろう」

 会長はその意見にあっさりと納得してしまった。
 そんなわけで、当然のごとく神楽先輩は本日の活動辞退。

「わたくしも、興味がそそられませんわねぇ。余ったパンなど私が買い占めれば終わりですもの」

 財力で殴る力が凄い。
 伍鳥羽先輩はカップの紅茶を一口運び、それからにこやかに告げる。

「とりあえず様子見で結構ですわ」
「私もいい……パス……」

 伍鳥羽先輩、そして小声で小雨ちゃんも辞退。
 ついでに言うと、九重君も夢の世界なので問答無用で不参加。

 残るは――。
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