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16.やはり対話しかないのか
しおりを挟むVtuber作戦もあえなく失敗し、次なる対抗手段も特に残されていない私達。花壇を荒らす野良犬。どうしよう。
「……仕方ない。やはり対話か」
会長が隠れるのをやめ、茂みから姿を現した。
いつもの落ち着いた足取りで前へと踏み出す。
いや待て。さすがに対話は無理だろう。
「待って下さい! さすがに犬と対話は無理ですよ!」
私も慌ててその後を追う。
がさり、と足音が鳴った瞬間、ぼさぼさとした野良犬の体がぴくりと反応した。
「に、睨んでますよ……」
私は思わず身を引いた。
けれど犬は、まるで逃げる気配を見せない。
じっと私達を見つめている。
睨んでるんじゃないみたい、何かを考えてる……?
「襲って来ないのかな?」
二千翔君をバリケード代わりにしつつ、私は小声できく。
「さあ、どうだろうね?」
「……ふん。きっとおとなしく保健所に行くつもりなんだろう」
みーくんが淡々とそう言って、私達をかき分けた。彼が前に出たその瞬間。
「おや」
「えっ?」
「これは……」
犬はとことこと、彼の元へと近づいて行った。
「お、おい、何故僕の方に寄ってくる!?」
犬はみーくんの足元に来ると、くんくんと匂いを嗅ぎ、ぺたりと地面に伏せてしっぽを振った。
「な、懐いた……?」
「すごい! でもなんで?」
七海君と顔を見合わせ首を傾げる。
「君はもしかして、対話が出来るのか?」
「そんなわけないだろ!」
「じゃあこっそり餌付けでもしたんだな」
「そんな事するか!」
会長と二千翔君のボケとも真面目とも取れる質問に、みーくんは迷惑そうに答えた。
「僕だって意味が分からな……おい、なんだこいつ! やめろ!」
彼の制服の袖を軽く引っ張りピョンと飛び跳ねた。
離れようと必死に抵抗するみーくんの周りを、犬が楽しそうにぴょこぴょこと付いて回る。
「離れろ! いい加減にしないと、本当に保健所送りにするぞ!!」
顔真っ赤にして叫ぶみーくん。
本気で保健所送りにするつもりじゃなかったんだなって思うと、何だか微笑ましくなってしまった。
会長がうんうんと穏やかに頷く。
「うむ、解決だな」
「どう見ても解決してないだろ! 兄様、やっぱりこんな部活やめましょう!」
兄様不在の中、みーくんの叫びが空しく響いた。
――後日、四季先輩から聞いた話だけど、みーくんは元々動物に好かれやすい体質だったらしい。
小学校の頃、犬が校内に迷い込んだ時とか、鶏小屋でウサギとニワトリが喧嘩した時とか、嫌々ながらも解決してきたんだとか。
先輩はそれを知っていて、この調査に協力させたらしい。
「生徒会目安箱・野良犬が花壇を荒らす件、完了」
夕暮れの風の中、犬は尻尾を振りながらみーくんの後を追う。
結局この野良犬は、みーくんとの対話(?)で花壇を荒らすことなく、去っていきましたとさ。
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