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23.いつものことだけど。
しおりを挟む購買部前のパンをめぐる果てしなき戦いから離れた私達は、旧校舎の部室でお弁当を食べることになった。
「なんか凄いものを見てしまった……」
「同じく」
着席し、ようやく呼吸を整える。
こっちはパンも買うことすら出来なかったのに、四季先輩はというと……。
「今日も美味しいあんぱんが買えてよかったよ」
なんて言って、のほほんとあんぱんを眺めている。あの人込みに立ち向かった疲労感は一切見えない。
この先輩、ほんと強い。
「四季先輩、あの……凄かったですね」
「そう? いつも通りだけど」
「いつも通り……ですか」
あの戦場をそれで片づけるんだ。
私の知ってる購買部はああいうのじゃないけどな。
私はさっきの光景をもう一度思い浮かべた。
「……」
「どうかした?」
「……いえ」
とりあえず購買部は、朝と昼、二つの顔を持つってことにしておいた。
「では本題に移ろう」
そう言いながら、会長は澄ました顔で自分のお弁当の蓋を開けた。
「購買部のあんぱんが売れ残るって話ですね」
七海君がサンドイッチのフィルムを開けながらたずねる。
こっちは購買部で買ったものではなく、事前にコンビニ寄って買っておいたものらしい。
「そうだ」
「でも不思議ですよね」
私は横目で四季先輩の手元を確認する。
ふっくらとした丸いあんぱんは、ちょうど先輩の手でちぎられるところだった。
「あんぱんはちゃんと売れてますよね? ほら、四季先輩みたいに」
一人がこうして買っている以上、味が極端に不味いというわけでもないだろう。
じゃあ売れ残る原因はなんなのか。
「そう。確かに売れている」
会長が箸を止めて、きりっとした表情を浮かべた。あまり絵にはならない。
「けれど、四季が買う一個しか売れないのだ」
「えっ?」
「一個だけ?」
「なんで?」
私も七海君も四季先輩も、その答えは想定外だったようでまるで示し合わせたように首を傾げる。
「簡単だ。購買部には、超強力な対抗馬がいるからな」
その声は。
振り返ると、部室の扉が開いている。
立っていたのは二千翔君だった。
片手には、恐らくパン。
「このスペシャルデラックスゴージャスパンの存在が、あんぱん他、購買部で売られているパンたちを軒並み売れ残りへと追いやっている」
まるでヒーローの登場のように颯爽と現れる二千翔君。
どうでもいいけど一つ気になることがある。
「二千翔君、質問」
「何かな?」
「そのパン、どうやって入手したの……?」
スペシャルデラックスゴージャスパンを買うには、あの人込みを制しなきゃいけないっていうのに。
「簡単だよ」
そう言って、彼は不敵に笑いながらあっさりとこう告げた。
「買収しただけさ」
ですよねー。
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