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27.パンの心おばちゃん知らず
しおりを挟む「ここから入れるよ」
南瓜君の案内で、私たちはこっそり購買部裏の通路へと回り込んだ。
潜入といえば、影に潜み、息を潜め、スパイ映画のような緊張感を……なんてことは一切無かった。
「――あら、いらっしゃい」
開けた瞬間、普通にみんなお馴染みの購買部おばちゃんが待っていたのである。
「え、あっ……おば……ちゃん?」
「潜入じゃ……なかったんですか?」
これじゃ開始早々ラスボスに出会ったことになるのでは?
私と七海くんが固まる横で、南瓜君が堂々と手を挙げる。
「どうも、お邪魔しまーす!」
「ああ南瓜ちゃん、いらっしゃい。……で、その後ろの子たちが例の相談に乗ってくれるお友達ね?」
えっ? 相談?
こっちが購買部に潜入して事情を探る予定だったのでは――。
「おばちゃん、相談って……?」
「心配しなくて大丈夫だ、こまり君。そもそもこの『あんぱん売れない問題』を相談してきたのは、購買部のおばちゃんだからな」
「ええっ……」
会長がもっともらしく言った。
まあ言われてみれば、確かにそんな悩みを相談するのは購買部の商品を管理してるおばちゃんだけなんだろうけどさあ。
「それなら最初から潜入なんて言わずに、おばちゃんに話を聞きに行くって言えばよかったのでは?」
私も七海君の意見に頷いた。
「潜入と言った方が様になってるからな」
「ですね」
会長が言って、二千翔君がそれに頷く。
茶番である。
===
「ほら、これが売れ残りのあんぱんよ」
そう言うと、おばちゃんは業務用の棚から今日売れ残ったあんぱんの段ボールをドン、と置いた。
思った以上に重い音だった。
目を輝かせているのは、四季先輩くらいだ。
「……え、こんなに?」
「そうなのよ。むかーしから売ってる定番商品だったのに、ここ数ヶ月さっぱり売れなくてねぇ」
おばちゃんは腕を組み、悩んだように首を捻る。
「なんでかしら?」
「なんでって、それは……」
おばちゃん、まさか原因を分かっていなかったのか。
あんなに熱狂的な状況だったのに。灯台下暗しと言えばいいのか、なんと言えばいいのか……。
つい言葉を失ってしまった私達の代わりに答えたのはみーくんだった。
「原因は、あのスペシャルデラックスゴージャスパンですよ」
「え? SDGパン?」
おばちゃんまで略称で呼んでる。長いもんね。
とまあそんな事はさておき、あんぱん不振の正体が意外だったのか、おばちゃんは目を丸くて驚いた表情を見せた。
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