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19.増える変人。好奇心の塊。
しおりを挟む「えー……ご紹介します。デレイです」
「どうもぉ」
名前を呼ばれた色白の男は底知れない笑みと共に頭を下げた。ほんのりと青みがかった白い髪がふわりとなびく。
顔を上げると、眼鏡越しに鋭い眼光がきらりと光った。
「仲間、でいいんですよね?」
「もっちろん」
クロム様やフリードが答えるよりも早く、男は嬉々として言葉を返した。
「その証拠に『仲間に会いたい』というご要望を受けてこちらに馳せ参じたわけですしぃ」
「戦いを吹っ掛けろとは一つも言ってなかったけどな」
眉間に深い皺を刻みながら鋭くツッコミを入れたのはフリードだった。
「お前あそこでクロム様にもしものことがあったらどうするつもりだったんだよ」
その言い方から察するに、やはり私達を閉じ込めたのは、この男で間違いないようだ。男は一瞬考えるように空を仰ぎ、それからにっこりと笑って答えた。
「えっとぉーそれはご愛敬ということで。だって、ただ出会っただけじゃつまらないでしょう? 何事もインパクトが大事ですよ」
「い、インパクト?」
虫の壁が?
思い出して一瞬眩暈がした。私、あれに触っちゃったんだ。粒粒してころころした……。あの恐怖の時間をインパクトで済ませるのか、この人。
「いらないんだよ、そういうのは」
うんうん、いらない。
私はフリードの後ろで激しく首を縦に振った。
「でもでも~小生のおかげで、こうして死霊の巣からは逃れられた訳じゃあないですか」
死霊の巣? なんだそれ。
「ああ、死霊の巣っていうのはですねぇ……」
疑問を浮かべた私の表情に気付いたのか、そう言って男は白衣のポケットから手を抜いた。そしてそっと私の両手を握る。
「このように、死者が集まる場所ってことですよ」
ひんやりとした感触。彼の手はまるで死んでいるように冷たかった。
「つまりデレイさんは死者?」
「違う」
フリードは即座に否定した。そして忌々しそうに白衣の男を睨んだ。
「おい、デレイ。紛らわしいやり取りをするな。いいか一般人、コイツは死者じゃない、死者を操る術者だよ」
「フリード君はそうやってすぐネタばらしをするの、感心しませんな」
男はわざとらしく落胆したように肩を落とした。
「お前の好奇心なんて知らない。それよりも続きだ、続き」
「御意です」
その言葉と共にひやりとした感触が手を離れる。そして彼は、何事も無かったかのように話を続けた。
「森というのは、迷ったり魔物に喰われたりと死が蔓延しやすいんですよ。そして残された魂は同胞を求め新たな者を死の淵へと誘う。この辺りはそういう場所です」
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