Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第779話

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 アマノイワトの頭部が何かに殴られたかのように僅かに傾く。
 そちらに視線をやるとヨシナリが撃破されたマルメルが落としたアノマリーを拾って銃撃していた。
 銃身がエーテルに浸食されており、威力が強化されている事が分かる。

 ヨシナリは膝立ちの狙撃姿勢で更に撃ち込む。 フルオート射撃しないのは銃の破損を防ぐ為だろう。
 斥力フィールドを貫通こそしているが、威力はかなり減衰しているのかダメージは少ない。
 
 『やるね。 良い感じに鬱陶しいよ』
 「そりゃどうも!」
 
 動かずに更に撃ち込むヨシナリを狙ってタカミムスビが尾を伸ばそうとするが、警戒心が持ち上がったのか攻めずに背後に跳んだ。 同時に銀色の何かが地面を縦に切り裂く。
 
 「尻尾は切れたと思ったんやけどなぁ」
 『いやぁ、危ない危ない』

 ふわわだ。 どうやら凍露を片付けて来たらしい。
 ヨシナリは彼女の接近を知って、自らを囮に釣ろうとしたようだが気付かれたのだ。
 だが、下がるという行動を取らせた事は大きい。 移動先に居たケイロンが背後からハルバードを力強く横薙ぎに振るう。 狙いはタカミムスビ自身ではなくその長い尾。

 絡め取って強く引っ張る。 尾がピンと張り詰め、それに引っ張られて本体が大きく仰け反った。

 ――ここだ。

 ユウヤは勝負と判断し、真っすぐに駆け出す。 
 推進装置を全開にして一息に間合いを詰めるとアケディアを起動。 
 それによりアマノイワトの武装が一部使用不能になる。 特にレーザーが使えなくなるのは大きい。

 『そう来たか。 光学兵器を封じたとしても私のアマノイワトは簡単には落ちんよ』

 執拗に撃ち込む頭部狙いの狙撃を腕で防ぎながらケイロンを振り解こうとするがハルバードを地面に突き立てて踏ん張る。 
 ハンマーに変形させて一撃。 斥力フィールドを無効化して本体に叩きこむ。
 サイズ差の所為で胴体が狙い辛い。 ならどこに叩きこむか?

 足――バランスを取る為に必要な膝だ。 
 破壊できたとしても飛行するだろうが地上戦という選択肢を奪えるだけで充分に効果はある。
 ――のだが、そう簡単な相手ではない。 

 空間情報の変動を確認。 転移の兆候だ。 
 ハンマーが触れる直前にその姿が掻き消えた。 転移に関しては移動前と移動先に兆候を観測できる。
 それを誰よりも理解しているベリアルが先回り。 

 さっきのお返しとばかりに出現したタカミムスビの頭部に向かって斬りかかる。

 『ところでなぜ私が空間歪曲ではなく斥力フィールドを採用したと思うかね?』

 タカミムスビは余裕といった様子でそんな事を訊ねるが答える余裕のある者がいない事もあって全員が無視。 つれないねといった呟きと同時にベリアルが壁にでもぶつかったように吹き飛ばされた。

 「ぐ、反発する力を壁としたか!?」
 
 ベリアルの攻撃に合わせてぶつける形でフィールドを再展開したのだ。 
 斥力フィールドは自機を中心に広がる事もあって展開の瞬間は特に強い反発する力が発生する。
 それを利用してベリアルを押し返したのだ。 

 恐らくユウヤにフィールドを無効化される事も計算の内だった。
 掌の上から出られていない事に内心で歯噛みしつつ動き続ける。 
 この戦場で足を止める事は脱落する事に等しい。 とにかく意識を散らす為に足の破壊を狙う。

 ケイロンも似た結論に至ったのか、再び尻尾を絡めとって拘束しようと試みる。
 枝分かれした尾が一斉にケイロンに襲い掛かるが、さっきと同様に絡め取って地面に突き立て――

 「ケイロンさん! おかしい!」

 ヨシナリの鋭い警告が飛ぶが僅かに遅かった。 
 絡め取った尻尾の先端から無数のニードルが現れたと同時に爆ぜる。
 重装甲機だけあって内部まで貫通はしないが至近距離だった事もあって装甲にはしっかりと食い込んでいた。 紫電が弾ける音と共に針から高圧電流が流れ機体の機能が麻痺。

 「ぐ、これは――」
 『同じ手が通用する時点で疑わないとダメじゃぁないか。 目の前の事に集中しすぎて私を倒すという欲望が薄まったよ。 それじゃあ、私には勝てない』

 ユウヤは舌打ちしながらカバーに入ろうとするが、それよりも早く地面を薙ぐような前蹴りが飛んでくる。 咄嗟にハンマーで受けるが衝撃を殺しきれずに吹き飛ばされた。
 ベリアルは斥力フィールドを当てられた後だった事もあってタイミングを逃している。

 ヨシナリが援護射撃を繰り返すがこちらは無視。 
 最後にふわわががら空きになった胴体に野太刀を横薙ぎに振るう。 
 ――が、アマノイワトの胴体が瞬時に赤熱。 

 液体金属刃は完璧にタカミムスビの胴体を捉えたが、機体に触れる前に溶けた。
 結果、ばしゃりと機体の表面を液体金属で汚すだけに終わる。

 「うそー!?」
 『君はセンスは突き抜けているが、工夫が足りない。 もっと欲望を育てたまえよ』

 四人を捌きながら尾は別の生き物のように動き、動けなくなったケイロンの機体を刺し貫く。
 コックピットとジェネレーターを串刺しにされたケイロンは爆発する事さえ許されずにその場に崩れ落ちた。 

 『さて、次はベリアル君辺りにしておこうかな?』
 「ほぅ、貴様にこの闇の王を仕留める事ができるというのか?」
 
 タカミムスビは笑うだけで応えない。 
 ベリアルは前の試合でも披露した六体分身を繰り出して包囲。
 
 『チーム、自己、友、欲張りなのは良い事だ。 仲間との絆は君に新しい視座を与えた。 動きを見れば分かるよ。 確かにそれは君を成長させたがその反面、本来の君が持つ強さも曇らせた。 本質に立ち返りたまえ。 今の君はまだ青い』

 両肩のコンテナの上部が開き、アンテナのような物が突き出すと不可視の何かが展開。
 瞬間、全ての分身が消滅し、プセウドテイ本体を覆っていたエーテルの大半が消し飛んだ。

 「なん、だと――」
 「ベリアル! 転移は使うな!」
 『読みは悪くないがまだ浅い。 できないよ』

 ヨシナリ警告は無駄に終わり、タカミムスビ腕を一閃。 
 ベリアルはまともに動けずに両断され、機体が爆散。 脱落となった。
 エーテルの弾丸が飛ぶが、タカミムスビに触れる前に霧散。

 「クソ、エーテルの物質化を阻害するのか!?」
 『プラス、転移阻害だ。 自分で使うんだからカウンターぐらい用意するに決まっているじゃないか』

 言いながら尾を操作してファランクスのように先端を並べるが、全てが切り刻まれた。
 ふわわだ。 両手に太刀と小太刀を持った状態で文字通り尻尾の防御を文字通り切り開く。
 
 『おや、次はユウヤ君のつもりだったのだけど先に片付けて欲しいのかね?』
 「へぇ、やってみぃ。 その余裕がいつまで続くか見たるわ」
 
 ユウヤはタカミムスビの意識がふわわに向いた事で勝機を探るべく、タカミムスビの死角を探す為に走り出した。
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