Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
41 / 786

第41話

しおりを挟む
 ゾンというプレイヤーはヨシナリの見立て通り大したことはなかった。
 戦い方は弾幕を張ってのごり押し。 シンプルではあるがそれだけなので、技量という点では同ランク帯でも低いと言わざるを得ない。 それでもここまで上がってこれたのは相応に時間をかけて装備を揃えてきたからだ。 

 反面、努力などを面倒と考える傾向にあったので、時間はかかるが精神的な負荷の少ない行動を取る。
 その結果がマルチミッションで弾をばら撒くだけのプレイスタイルだった。
 できない事は他人に押し付け、簡単な事だけでポイントを稼ぐ。 あまり褒められた行動ではないが、目立った問題は起こっていないので大丈夫と判断したようだ。

 そんな経緯もあって出来上がった彼の機体が重装甲、高火力に特化させる事だった。
 彼は一方的に敵を屠る事が大好きで、負ける事は大嫌い。 そんな性格を象徴しているかのような機体はとにかく打たれ強く、並の攻撃は容易く跳ね返す。 仮に勝てなかったとしても今回のような集団戦であるなら粘っていたら味方が助けに来る。 つまりここで敵を釘付けにしておけば勝手に勝ちが転がり込んでくると彼は考えていた。

 突撃銃と追加購入したロングマガジンは長時間の弾幕を維持する事を可能としていたが無限ではない。
 ガキリと金属音と共に弾が切れて弾幕が途切れる。 敵が引っ込んだままならこのまま交換作業。
 飛び出そうとするなら予備の突撃銃で弾幕を張る。 彼の行動バリエーションは少ないが、それ故に分かり易く無駄を削ぎ落せともいえるだろう。 

 ――問題はそれが通用する相手ならだ。

 敵機は隠れていた岩陰から何かを放り投げて来た。
 手榴弾グレネード。 何の問題もないとゾンは頭部に搭載されているギミックを起動。
 バイザーが降りる。 これは閃光手榴弾からセンサーを守る為の仕掛けだ。

 視界が塞がれるのは厄介なのでそれに対する防御手段。 空中で炸裂した手榴弾は閃光を撒き散らすが若干、視界が光で埋め尽くされたがセンサー類に不具合はない。 

 ――クズが読めてんだよ。

 そんな見下した考えで更に弾幕を張ろうと――不意に敵機が岩陰から飛び出した。
 想定以上の馬鹿だったようだ。 恐らく相手はこちらが見えていないのだろうと判断したのだろう。 ゾンは内心でほくそ笑み、その希望を打ち砕くべく突撃銃を向けようとして違和感に気が付いた。

 『ほい』

 相手のそんな声が聞こえたと同時に天地が逆転。 
 ゾンの機体の片足が大きく跳ね上がり、バランスを取れずに転倒した。
 何がと原因を探ると片足にワイヤーのようなものが巻き付いているのが見える。

 恐らく閃光手榴弾で視界を塞いだ瞬間にワイヤーを巻き付け、物陰から飛び出す勢いを利用して引っ張ったのだ。 

 「く、くそ。 このクズが舐めやがって……」

 起き上がろうとするが、彼の機体は装甲を盛りに盛った状態なので機体のバランスがあまり良くなかった。 その為、一度完全に転倒してしまうとスムーズに起き上がれないのだ。

 『俺も経験あるよ。 機体が重いから一回、引っ繰り返ると中々起き上がれないんだよなぁ』

 いつの間にか敵機は彼の目の前におり、両手の突撃銃と腰にマウントされた二挺の短機関銃の合計四つの銃口が向けられていた。

 「ちょ、待て! 待てって!」

 ゾンの願いは虚しく四つの銃口からフルオートで放たれた銃弾の雨は至近距離だった事もあり彼の機体の頑丈な装甲を容易く突破し、機体に致命的な損傷を与える。
 上半身が文字通りハチの巣のような有様になったゾンの機体はそのまま沈黙。 

 画面には撃破されましたの文字。 悔しさと敗北を認められないプライドが罵詈雑言となって吐き出されるが、既に敗北しゲームから切り離された彼の声は誰にも届かなかった。


 「ふいー、楽な相手で良かったぜ」

 マルメルは念の為にと撃破した機体のコックピット部分を最後に踏み潰してそう呟いた。
 彼も以前は似たようなスタイルだったのでこの手の戦い方の強みと弱みはよく理解していたが、早々に切り替えたのはヨシナリのアドバイスがあったからだ。

 そもそも初期のソルジャータイプは対弾性能に優れている訳ではないので足を止めての撃ち合いにはあまり向いていない。 どうしてもやりたいなら重装甲と高火力のパンツァータイプでないと低ランク帯までしか通用しないだろう。 二足歩行で重装甲の機体は普通に移動する分にはその重量もあって安定しているが、それ故に完全に体勢を崩されると脆い。 

 盛った重さが邪魔をして体勢を立て直す事が難しいのだ。 
 ヨシナリとふわわと行った模擬戦の結果を思い出してマルメルは遠い目をする。 
 ヨシナリには狙撃銃で執拗に頭部を撃ち抜かれてセンサー類を潰された後、何も見えなくなった状態で嬲り殺しにされ、ふわわに至っては足の関節にダガーを突き立てられたり、目の前のゾンのように射出式のワイヤーアンカーで引っ繰り返されて動けなくされてから切り刻まれた。

 半端に硬かったせいでどちらにも嬲り殺しにされる結果になったのは彼にとっても苦い思い出だ。
 だが、一つ学びを得た。 半端な重装甲では転倒時の立て直しが難しく、起き上がる頃には終わってしまうと。 少なくともソルジャータイプを使っている間は機動力と火力を両立できる機体構成を意識し、自分自身を高める事を意識した方が良い。

 それを実行した事で少しは強くなったような――気がする。
 気がするのは目の前に転がっている敵機の残骸を見れば成果として存在するが――
 不意にセンサーに反応。 敵機の接近に振り返ると強敵かと思われていた敵機がボロボロになった状態でそこに居た。

 両腕は肘から先がなくなっており、頭部にはダガーが突き立ってバチバチと火花を飛ばしている。 
 それでもセンサー類は辛うじて生きているのかやや覚束ない足取りで飛び出してきたのだ。
 
 ――あーあ、可哀想に。

 マルメルは反射的に持っていた突撃銃を向けたが、獲物を横取りすると怒られそうなのですぐに下ろした。 ボロボロの敵機はゾンに助けを求めに来たらしくマルメルの足元に転がっている残骸を見て硬直。
 それが最後だった。 金属音。 敵機がゆるゆるとした動作で振り返ると足にワイヤーアンカーが突き刺さっていた。 次の瞬間、何かを巻き取る音がして敵機が森の中へと引きずり込まれるように消えていく。 姿が見えなくなった後、ぐしゃりと何かを潰す音が聞こえて静かになった。

 『あ、そっちも終わってたんだ。 おつかれ~』

 そしてふわわの機体がひょっこりと姿を現した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【なろう490万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ

海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。  衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。  絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。  ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。  大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。 はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?  小説家になろうSF(パニック)部門にて490万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。 カクヨムのSF部門においても高評価いただき90万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。  

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

異世界転移魔方陣をネットオークションで買って行ってみたら、日本に帰れなくなった件。

蛇崩 通
ファンタジー
 ネットオークションに、異世界転移魔方陣が出品されていた。  三千円で。  二枚入り。  手製のガイドブック『異世界の歩き方』付き。  ガイドブックには、異世界会話集も収録。  出品商品の説明文には、「魔力が充分にあれば、異世界に行けます」とあった。  おもしろそうなので、買ってみた。  使ってみた。  帰れなくなった。日本に。  魔力切れのようだ。  しかたがないので、異世界で魔法の勉強をすることにした。  それなのに……  気がついたら、魔王軍と戦うことに。  はたして、日本に無事戻れるのか?  <第1章の主な内容>  王立魔法学園南校で授業を受けていたら、クラスまるごと徴兵されてしまった。  魔王軍が、王都まで迫ったからだ。  同じクラスは、女生徒ばかり。  毒薔薇姫、毒蛇姫、サソリ姫など、毒はあるけど魔法はからっきしの美少女ばかり。  ベテラン騎士も兵士たちも、あっという間にアース・ドラゴンに喰われてしまった。  しかたがない。ぼくが戦うか。  <第2章の主な内容>  救援要請が来た。南城壁を守る氷姫から。彼女は、王立魔法学園北校が誇る三大魔法剣姫の一人。氷結魔法剣を持つ魔法姫騎士だ。  さっそく救援に行くと、氷姫たち守備隊は、アース・ドラゴンの大軍に包囲され、絶体絶命の窮地だった。  どう救出する?  <第3章の主な内容>  南城壁第十六砦の屋上では、三大魔法剣姫が、そろい踏みをしていた。氷結魔法剣の使い手、氷姫。火炎魔法剣の炎姫。それに、雷鳴魔法剣の雷姫だ。  そこへ、魔王の娘にして、王都侵攻魔王軍の総司令官、炎龍王女がやって来た。三名の女魔族を率いて。交渉のためだ。だが、炎龍王女の要求内容は、常軌を逸していた。  交渉は、すぐに決裂。三大魔法剣姫と魔王の娘との激しいバトルが勃発する。  驚異的な再生能力を誇る女魔族たちに、三大魔法剣姫は苦戦するが……  <第4章の主な内容>  リリーシア王女が、魔王軍に拉致された。  明日の夜明けまでに王女を奪還しなければ、王都平民区の十万人の命が失われる。  なぜなら、兵力の減少に苦しむ王国騎士団は、王都外壁の放棄と、内壁への撤退を主張していた。それを拒否し、外壁での徹底抗戦を主張していたのが、臨時副司令官のリリーシア王女だったからだ。  三大魔法剣姫とトッキロたちは、王女を救出するため、深夜、魔王軍の野営陣地に侵入するが……

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

If太平洋戦争        日本が懸命な判断をしていたら

みにみ
歴史・時代
もし、あの戦争で日本が異なる選択をしていたら? 国力の差を直視し、無謀な拡大を避け、戦略と外交で活路を開く。 真珠湾、ミッドウェー、ガダルカナル…分水嶺で下された「if」の決断。 破滅回避し、国家存続をかけたもう一つの終戦を描く架空戦記。 現在1945年夏まで執筆

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...