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第400話
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エネルギーウイング。
一見すると筒状の装置で縦に開く事で前方と左右にエネルギーを噴出し、爆発的な推進力を得る事が出来る。 ふわわは実を言うとこの手の推進装置はあまり得意ではなかった。
彼女の戦闘能力はリアルスキル――要は彼女自身が修めた武芸に由来するので人体の挙動を逸脱するような装備はあまり相性が良くなかったのだ。 これまではそれでも良かった。
このゲームにおける近接戦闘では彼女のスキルはしっかりと通用したからだ。
だが、ここ最近で経験したイベントに現れた敵の強さを見るとそうも言ってられなくなってきた。
今のままではどこかで頭打ちになると何となく理解できてしまっていたのだ。
だから、彼女はヨシナリに倣って練習をすることにしたのだ。 人体には備わっていないが、この仮想の世界では自らの手足たる機体に備わった「羽」を使いこなす為に。
ふわわは感覚派なので教えるのも教わるのもあまり上手ではない。
裏を返せば何かを見つけたいのであれば己の内から探し当てなければならないのだ。
彼女はヨシナリと違い、一つ一つ積み上げるタイプではないが感覚さえ掴んでしまえば、数段飛ばしで階段を上る事ができる。 無数の転移反応と複数飛んでくる錫杖の先端。
分裂しているように見えるが実際は一つ。
ならどうやってこんな攻撃を繰り出しているのか? 答えは観察していれば見えてくる。
グリゼルダは手元で錫杖を回しているだけ。 その回転が問題なのだ。
恐らく回転中に連続して転移を繰り返して攻撃を繰り返している。
つまり、同時ではなく連続なのだ。 なら順番に躱せばいい。
必要なのは刹那の見切り。 今の自分ならできるような気がする。
――心を乱さず、平常心を維持。
「来た」
後頭部を狙った一撃を首を傾けて回避。
この攻撃は錫杖ではなく、纏った力場に破壊力が凝縮されているので余裕を持って躱す必要がある。
エネルギーウイングを噴かして身を捻り、脇腹を狙った一撃を回避。
グリゼルダは同じ場所を連続して狙わずに一撃毎に離れた場所から仕掛ける。
膝を上げて一撃を回避、僅かに仰け反って胸を抉る一撃を回避、身を丸めて回転。
背中を狙った一撃を躱す。
――う、嘘だろ?
ふわわがグリゼルダの攻撃を無傷で躱し続けている姿を見てヨシナリは戦慄した。
ひらひらと奇妙な動き――恐らくは最小の動きで敵の攻撃を回避し続けているのだ。
人間技じゃない。 流石のグリゼルダもここまで躱される事は想定外だったのか、僅かに動揺しているようだ。 仕掛けるなら今しかない。
機体のスペックと戦い方に関してはそろそろ底が見えてきた。
対象の運動エネルギーを奪い取るフィールドとエネルギー系の攻撃を無効化するフィールドの二種類の恒常展開で防備を固め、転移――部分的に移動させている点を考えると空間と空間を繋ぐゲートのような物を作っているのだろう。 それを用いての攻撃。
フィールドは攻防両面で扱える事もあって錫杖に纏わせて攻撃に利用できる点も厄介だ。
何よりも危険なのはその場を動かずに好きな位置から攻撃できる点だろう。
視界にいないグロウモスにも仕掛ける事が出来ている事実から、転移は恐らくセンサー系とリンクしており、探知範囲内であれば自由に狙えると判断するべきだろう。
攻撃、防御、共に隙の無い機体と言えるだろう。 だが、無敵ではない。
見えている範囲での欠点は燃費の悪さと転移先の指定にややタイムラグがある事。
機体が大型なのはその欠点を補う為だろう。 機動性に関しては出力面ではエネルギーウイングを上回っている感じではあるが、動きが鈍重なので転移とフィールドがなければそこまで怖い相手ではない。
ほぼ、棒立ちの状況でグロウモスが撃てない所を見るとふわわに攻撃している合間にグロウモスにも仕掛けているらしく、レーダー表示を見るとグロウモスの反応が移動しているのが分かる。
傍から見ると錫杖をくるくる回しているだけなのに即死級の攻撃が次々に飛んでくるのだから理不尽だと感じてしまう。
だが、ふわわの挙動だけは想定外のはずだ。
グリゼルダの機体のエネルギー分布を見ればそろそろ息切れが来そうだろう。
恐らくはふわわを仕留めて息を入れるつもりだったのだろうが想定以上に粘られたので予定が狂ったといった所か。 つまり仕掛けるには好機だ。
ヨシナリがアシンメトリーを構えた所に同期してマルメルがアノマリーと突撃銃を構え、同時に発射。 グリゼルダは防がずに後退して回避。 スタミナ切れなのは明白だった。
「っしゃぁ! 押し切れるぞ!」
「待て、深追いは――」
マルメルが押し切ろうと更に銃撃するが、グリゼルダは標的をふわわからマルメルに切り替えた。
苛立ちが混ざっているのかやや乱暴に錫杖を一突き。 錫杖の先端を注視すると映像のコマ落ちのように瞬いているのが分かる。 ヨシナリは咄嗟に警告するが、僅かに遅かった。
マルメルの周囲に転移反応。
彼にはふわわのような超人的な回避能力はないので、躱す事は困難だ。
さっきと同様に機体を沈める事で躱そうとしていたのだが、無数の突きが下から飛んで来た。
「げっ!?」
マルメルは反射的に足元に銃弾をばら撒いていくつかの攻撃は潰しはしたのだが、数発が直撃。
――いや――
完全に貰う直前に強化装甲をパージし、エネルギーウイングを噴かして回避を狙う。
だが、完全に躱す事は出来ずに機体のあちこちが爆発。 破片を撒き散らしながら水中に沈む。
「マルメル!」
反応は消えていないので死んではいないが、ステータスは中破。
撃破を免れただけでも大したものだが、これ以上の戦闘は無理だ。
「わ、悪い。 ――ってか、うわっ!? 水が入って――」
マルメルが「排水ってどうやるんだ!?」と言っている聞きながら加速。
ヨシナリの少し後ろにシニフィエが来ていた。 その手にはアノマリーが握られている。
どうやらマルメルが沈む前に回収したようだ。
「お義兄さん。 予備のマガジンあります?」
「大事に使えよ」
僅かに減速して一つを投げ渡す。 シニフィエは器用に受け取ると慣れた手付きでリロード。
どうやらマルメルが抜けた穴を埋めるつもりらしい。 いいカバーだった。
グリゼルダは次にシニフィエを狙いに行ったのだが、仕掛けるよりも早くフリーになったふわわが野太刀による一閃を見舞う。 余裕がなかったのか、グリゼルダは回避を選択。
斬撃が水面を縦に割った。
一見すると筒状の装置で縦に開く事で前方と左右にエネルギーを噴出し、爆発的な推進力を得る事が出来る。 ふわわは実を言うとこの手の推進装置はあまり得意ではなかった。
彼女の戦闘能力はリアルスキル――要は彼女自身が修めた武芸に由来するので人体の挙動を逸脱するような装備はあまり相性が良くなかったのだ。 これまではそれでも良かった。
このゲームにおける近接戦闘では彼女のスキルはしっかりと通用したからだ。
だが、ここ最近で経験したイベントに現れた敵の強さを見るとそうも言ってられなくなってきた。
今のままではどこかで頭打ちになると何となく理解できてしまっていたのだ。
だから、彼女はヨシナリに倣って練習をすることにしたのだ。 人体には備わっていないが、この仮想の世界では自らの手足たる機体に備わった「羽」を使いこなす為に。
ふわわは感覚派なので教えるのも教わるのもあまり上手ではない。
裏を返せば何かを見つけたいのであれば己の内から探し当てなければならないのだ。
彼女はヨシナリと違い、一つ一つ積み上げるタイプではないが感覚さえ掴んでしまえば、数段飛ばしで階段を上る事ができる。 無数の転移反応と複数飛んでくる錫杖の先端。
分裂しているように見えるが実際は一つ。
ならどうやってこんな攻撃を繰り出しているのか? 答えは観察していれば見えてくる。
グリゼルダは手元で錫杖を回しているだけ。 その回転が問題なのだ。
恐らく回転中に連続して転移を繰り返して攻撃を繰り返している。
つまり、同時ではなく連続なのだ。 なら順番に躱せばいい。
必要なのは刹那の見切り。 今の自分ならできるような気がする。
――心を乱さず、平常心を維持。
「来た」
後頭部を狙った一撃を首を傾けて回避。
この攻撃は錫杖ではなく、纏った力場に破壊力が凝縮されているので余裕を持って躱す必要がある。
エネルギーウイングを噴かして身を捻り、脇腹を狙った一撃を回避。
グリゼルダは同じ場所を連続して狙わずに一撃毎に離れた場所から仕掛ける。
膝を上げて一撃を回避、僅かに仰け反って胸を抉る一撃を回避、身を丸めて回転。
背中を狙った一撃を躱す。
――う、嘘だろ?
ふわわがグリゼルダの攻撃を無傷で躱し続けている姿を見てヨシナリは戦慄した。
ひらひらと奇妙な動き――恐らくは最小の動きで敵の攻撃を回避し続けているのだ。
人間技じゃない。 流石のグリゼルダもここまで躱される事は想定外だったのか、僅かに動揺しているようだ。 仕掛けるなら今しかない。
機体のスペックと戦い方に関してはそろそろ底が見えてきた。
対象の運動エネルギーを奪い取るフィールドとエネルギー系の攻撃を無効化するフィールドの二種類の恒常展開で防備を固め、転移――部分的に移動させている点を考えると空間と空間を繋ぐゲートのような物を作っているのだろう。 それを用いての攻撃。
フィールドは攻防両面で扱える事もあって錫杖に纏わせて攻撃に利用できる点も厄介だ。
何よりも危険なのはその場を動かずに好きな位置から攻撃できる点だろう。
視界にいないグロウモスにも仕掛ける事が出来ている事実から、転移は恐らくセンサー系とリンクしており、探知範囲内であれば自由に狙えると判断するべきだろう。
攻撃、防御、共に隙の無い機体と言えるだろう。 だが、無敵ではない。
見えている範囲での欠点は燃費の悪さと転移先の指定にややタイムラグがある事。
機体が大型なのはその欠点を補う為だろう。 機動性に関しては出力面ではエネルギーウイングを上回っている感じではあるが、動きが鈍重なので転移とフィールドがなければそこまで怖い相手ではない。
ほぼ、棒立ちの状況でグロウモスが撃てない所を見るとふわわに攻撃している合間にグロウモスにも仕掛けているらしく、レーダー表示を見るとグロウモスの反応が移動しているのが分かる。
傍から見ると錫杖をくるくる回しているだけなのに即死級の攻撃が次々に飛んでくるのだから理不尽だと感じてしまう。
だが、ふわわの挙動だけは想定外のはずだ。
グリゼルダの機体のエネルギー分布を見ればそろそろ息切れが来そうだろう。
恐らくはふわわを仕留めて息を入れるつもりだったのだろうが想定以上に粘られたので予定が狂ったといった所か。 つまり仕掛けるには好機だ。
ヨシナリがアシンメトリーを構えた所に同期してマルメルがアノマリーと突撃銃を構え、同時に発射。 グリゼルダは防がずに後退して回避。 スタミナ切れなのは明白だった。
「っしゃぁ! 押し切れるぞ!」
「待て、深追いは――」
マルメルが押し切ろうと更に銃撃するが、グリゼルダは標的をふわわからマルメルに切り替えた。
苛立ちが混ざっているのかやや乱暴に錫杖を一突き。 錫杖の先端を注視すると映像のコマ落ちのように瞬いているのが分かる。 ヨシナリは咄嗟に警告するが、僅かに遅かった。
マルメルの周囲に転移反応。
彼にはふわわのような超人的な回避能力はないので、躱す事は困難だ。
さっきと同様に機体を沈める事で躱そうとしていたのだが、無数の突きが下から飛んで来た。
「げっ!?」
マルメルは反射的に足元に銃弾をばら撒いていくつかの攻撃は潰しはしたのだが、数発が直撃。
――いや――
完全に貰う直前に強化装甲をパージし、エネルギーウイングを噴かして回避を狙う。
だが、完全に躱す事は出来ずに機体のあちこちが爆発。 破片を撒き散らしながら水中に沈む。
「マルメル!」
反応は消えていないので死んではいないが、ステータスは中破。
撃破を免れただけでも大したものだが、これ以上の戦闘は無理だ。
「わ、悪い。 ――ってか、うわっ!? 水が入って――」
マルメルが「排水ってどうやるんだ!?」と言っている聞きながら加速。
ヨシナリの少し後ろにシニフィエが来ていた。 その手にはアノマリーが握られている。
どうやらマルメルが沈む前に回収したようだ。
「お義兄さん。 予備のマガジンあります?」
「大事に使えよ」
僅かに減速して一つを投げ渡す。 シニフィエは器用に受け取ると慣れた手付きでリロード。
どうやらマルメルが抜けた穴を埋めるつもりらしい。 いいカバーだった。
グリゼルダは次にシニフィエを狙いに行ったのだが、仕掛けるよりも早くフリーになったふわわが野太刀による一閃を見舞う。 余裕がなかったのか、グリゼルダは回避を選択。
斬撃が水面を縦に割った。
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