星と運命に導かれし者達~ステータスオープン~

kawa.kei

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第12話 王族でなくなった結果

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 よくある『勇者様世界をお救い下さい』といった無責任な依頼かとも思ったが、想像以上に実態は酷かった。 確かにこの国には問題が多いのだろう。
 だが、この世界自体が危機的状況かと聞かれるとそうでもない。

 何故なら人間同士が争っているだけだからだ。 
 朱里が効いた限りの話ではあるが、人類絶滅の危機や世界滅亡なんて話は一切出なかった。
 国王やミュリエルの態度からもそういった焦りは感じない。 

 この世界は思っていた以上に酷い場所だった。 
 異世界人を拉致し、使えそうなら自国の戦力として運用し、そうでないなら殺して経験値に変換してしまう。 ここの連中の倫理観はどうなっているんだと言いたくなる。
 
 朱里はいやと内心で首を振る。 
 この世界にとって異世界から人を連れてくるのは家畜を出荷するのと変わらないレベルで日常化しているのだろう。 実際、ミュリエルの説明も流れるように淀みがない。

 間違いなく、何度も繰り返し行ってきた作業である事は想像に難くない。 
 散々、他人の事を家畜のように扱っておいて都合が悪ければこれかといった気持ちがなくはないが、もう言っても仕方がなく、朱里と応供にはこの右も左も分からない世界で生きて行く為には彼女の知識が必要だ。 だから、嫌悪感は可能な限り沈めてできるだけ上手くやろう。

 そんな気持ちでミュリエルと接する事にしたのだ。

 
 ――なぜ私がこんな目に。

 ミュリエルはそう思ったが、不思議な事に目の前の異世界人を恨む気持ちは思った以上に湧かなかった。 精々、今までやって来た事が跳ね返ってきたのだなといった諦めに似た感情ぐらいだ。
 それ以上に死にたくないといった気持ちが強い。 正直、自分の精神の変調に自分で驚いているぐらいだった。 

 ミュリエルはオートゥイユ王国の王女として、ゆくゆくは女王としてこの国を治める未来を約束された存在だった。 力神プーバーの強い加護によって得た高いステータス。 
 異世界人を召喚し、殺害する事で効率よく経験値を得る。 基本的にどこの国の王族もやっている食事と同列の自己強化。 殺されていく異世界人に対しても家畜と同じ感想しか抱いていなかったのだが、こうして加護を失ってみると驚くほどに自分がやって来た事がどのような意味を持つのかを意識させられる。 

 ――ステータス。

 ミュリエル・ド・オートゥイユ Lv.51
 VIT 1300(+2100)
 STR 80(+1500)
 DEF 55(+300)
 INT  530(+300)
 DEX 330(+300)
 AGI  50(+300)

 Skill
 言語理解、力神の加護、王族権威
 火炎魔法、火炎耐性、空間収納

 これがついさっきまでのミュリエルのステータス。
 レベル50を超えた者はこの世界ではかなりの力を持っている事を示す。
 加えて生まれつき持っていた力神の加護によって爆発的にステータスが上昇する事と高い成長率により、王族権威を獲得し、この国ではトップクラスの総合力を誇る。 加えて火属性の上位である火炎魔法と火炎耐性により高い火力を獲得していた。 ステータスだけで見るならこの国屈指の実力者といえるだろう。

 ――だが――

 ミュリエルは改めて現実と向き合った。

 ミュリエル Lv.51
 VIT 1300
 STR 80
 DEF 55
 INT  530
 DEX 330
 AGI  50

 Skill
 言語理解、火魔法、火耐性
 空間収納 

 力神の加護を失った事でファミリーネームも王族の資格も失ったので王族権威も消え、ステータス補正がなくなった。
 加護により引き上げられていたスキル適性もランクダウンして火炎から火に変化。
 ただ、不幸中の幸いか基礎的な能力は据え置きなので、その辺の騎士や盗賊に負ける事はないはずだ。

 最後の空間収納は戸建ての家が丸ごと入るぐらいの許容量を誇っていたのだが、こちらもランクダウンして百分の一程度になった。 お陰で中に入れていた物品の大半が消滅。
 残っているのは魔法の発動補助の為の杖が数本と装飾品が十数点、応供に渡した金銭の入った袋のみ。 空を見上げる。 日が傾いて来ていたので黄昏色をした光が視界を染めていた。
 
 ぼーっと空を眺めながらこれからの行動をぼんやりと考える。
 応供達に語った事に嘘はない。 この世界が加護を持っていない事は非常に不味いのだ。
 本当なら他の五大神を信奉している大国へ向かい加護を授かる事を狙うべきなのだが、ミュリエルの顔は知れ渡っている上、改宗はこの世界の常識に照らし合わせるなら恥ずべき裏切り行為だ。

 それを元とはいえオートゥイユの性を持った者が行うの事は許容されない。
 間違いなく何処へ行っても殺される可能性が高い。 実際、ミュリエルが逆の立場なら「加護を失いました。 新しいのを貰いに来ました」などと言われれば馬鹿にしているのか?と問い返して即座に無礼討ちだ。
 
 その為、彼女の残された選択肢は非常に少ない。
 邪神――五大神に属さない神々の加護を得るしかないのだ。
 他と比べてハードルは低いが簡単な事ではない。 だが、どんな形でも生きていきたいのならやるしかなかった。 目を閉じると思い出す。 

 邪教徒狩りと称して兵を率いて暴れまわった自分を。 
 自慢の火炎魔法で焼き尽くされる家屋、燃える人々。 

 ――ほーっほっほっほ、やはり人間は経験値が美味しいですわー! 消し炭ですわー!

 そして高笑いする自分。 新しい魔法を習得する度に遊び半分に邪教徒を焼き払っていた事を思い出し、気持ちが一気に重たくなる。 彼等はミュリエルを決して許さないだろう。
 だが、それしか選択肢がないのだ。 一先ず一晩はここで過ごし、夜が明けてから出発する。

 応供次第だが、辿り着くまでにそう時間はかからないだろう。
 方針は決まった事で思考を別にシフトする。 
 荒癇 応供。 異世界から呼び出した人間の一人、家畜の一匹のはずだったのだが、信じられない力を持った存在だ。 稀に戦闘能力が高い異世界人が現れる事があるが、応供は異常過ぎる。

 ステータスがまともに表示されないなんて事は今までになかった。
 恐らくその秘密はアレを解読するか、本人の口から聞き出す以外に知る術はないだろう。
 とはいってもステータスの数値に関しては大雑把ではあるが想像は付く。

 力神のアポストルを撃破して見せたのだ。 少なくとも平均数千はあるはず。
 
 ――本来、倒せるものではないというのに……。

 一体何者なのだろうか? 謎は深まるばかりだった。
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